今回は特定のターゲット層の方に向けた記事を書かせていただきます。
救急科志望の研修医はどのように学んでいくべきかというのが本記事のテーマです。
これは、SNS上でも実際の日々の業務で出会う研修医の先生方からもよく聞く質問なので、
恐らく一定のニーズはあるテーマなのだと思います。
【今回の記事のターゲット層】
進路として救急科を選択し、救急科専攻医として勤務することを考えている研修医の先生方
日々の救急外来診療、重症患者管理について
もっと勉強したい・あるいは悩んでいる研修医の先生方
5分程度で読める内容にまとめましたので、是非とも最後まで読んでみてください。
あなたの今後の救急科専攻医としての日々を、より良いものに変えられるよう精一杯解説するので、
僕に5分間の時間をいただけると嬉しいです。
日々の業務をこなす中で、避けて通ることのできない『重症患者管理』
特に初期研修医は経験も浅く学ぶことも多いため、重症患者管理について深く考える機会が多いかもしれません。
将来、救急科・集中治療科を志望する研修医にとってはなおさらです。
その分抱えるのは重症患者管理に関するたくさんの悩みや疑問…昔の自分もそうでしたし、今もなお悩むことばかりです。。
「この呼吸器の設定ってどういじるんだろう…?」
「この挿管患者さんはいつになったら抜管できるんだろう…?」
「まったく自尿が得られない…この患者さんに透析適応はあるんだろうか…?」
こういった悩みや疑問を解消するために、僕自身たくさんの重症患者管理に関する参考書を読んできました。
本を読むのは苦痛にはならないタイプなので、盛っているわけではなく本当に15冊くらい読んできた気がします。
その経験を通じて感じたのは、
重症患者管理の勉強において絶対に外せない名著というものはいくつか存在する!
ということです。
これまで研修医時代に100冊以上の医学書を読み、
その中でもオススメの医学書のレビューを月5冊以上書いている
とある救急科専門医が考え抜いて結論を出した、
失敗しない重症患者管理の参考書選びをご紹介します。
自分自身、まだ専攻医の立場ではありますが、
こんな未熟な立場だからこそ研修医の悩みは痛いほどわかります。
専攻医だからこその着眼点で紹介させていただければと思いますので、
もしこれから紹介する本のなかでまだ読んだことのない・または読んでみたいと思えた本については是非手に取ってみてください👇
Dr.竜馬のやさしくわかる集中治療 循環・呼吸編 改訂版
タイトル:Dr.竜馬のやさしくわかる集中治療 循環・呼吸編 改訂版
著者:田中 竜馬
出版社:羊土社
発行年月日:2020/9/18
【タイプ】会話形式⇒まとめページ
【ターゲット】初期研修医1年目(中盤ー後半)・重症患者さんの管理を日々担当している後期研修医
【推定読了時間】7-8時間程度
【作者の背景】●敗血症や肺炎、COPDなど病棟や外来でよくみる内科疾患が重症化したときの基本的なアプローチ方法を病態生理の視点から氷解していく。
●ショックや低酸素に伴う嫌気性代謝など、全身管理で必要な基本的知識をわかりやすく解説の想い
【学べること】
●重症敗血症の初期対応と、その後の全身管理
例)カテコラミンや抗菌薬、適切なタイミングで適切に変更できますか?
●DO2を意識した全身管理をするための周辺知識の学習
例)全身の酸素化にどれだけHbが重要か、意識できていますか?
●輸液反応性を意識した循環動態への介入
例)輸液するのは血圧を上げるため??⇒COを増やすためです!
参考:救急科後期研修医1年目にとって参考になったと感じた項目の一例
●BP上昇の3つの軸(交感神経・バソプレシン・RAA系)
●合成アンギオテンシンⅡ製剤について
●PEでのV/Qスキャンの適応と注意点
●ROXインデックスを用いたHFNC使用中患者の評価法(2019年提唱)
●定流量酸素投与を行われている患者さんのFiO2の解釈
【評価】
必要性:
本の薄さ:
わかりやすさ:
面白さ:
継続使用度:
オススメ度:
※Amazon評価:
個人的な見解ですが、この一冊こそ集中治療分野の初学書として最適であると思います!
本書の特徴は、研修医と上級医(コテコテの関西弁…笑)の二人が、
重症な病態の患者さんの初療から全身管理までの流れを、
面白おかしく質疑応答しながら進んでいくストーリーにあると思います。
研修医が抱きがちな集中治療領域の素朴な質問に、上級医が病態生理から論文のエビデンスベースに丁寧に解答されていきます。
重症患者さんに何が起きているか、循環や呼吸の生理学を学ぶ上では最高の一冊であると思います。
さらに、今回特筆すべきは2020年の最新の論文までを網羅した内容となっていること!
前作で個人的に気になった敗血症の項目がアップデートされているのはもちろん、
これまでの集中治療のエビデンスがどのように変遷してきたかのストーリーを知ることができる点が魅了です。
冒頭の読者対象にも記載した通り、本書は初期研修医はもちろん、
後期研修医などの若手医療従事者にもオススメの一冊であると思います!
参考までの後期研修医1年目の私が今回の著書を読んだうえで特に勉強になったなと思った項目はコチラ👇
●BP上昇の3つの軸(交感神経・バソプレシン・RAA系)
●合成アンギオテンシンⅡ製剤について
●PEでのV/Qスキャンの適応と注意点
●ROXインデックスを用いたHFNC使用中患者の評価法(2019年提唱)
●定流量酸素投与を行われている患者さんのFiO2の解釈
一通り循環と呼吸について理解しているよ!と思っておられる
優秀な先生方にとっても、
最新のエビデンスが網羅された内容となっているので必ず学び・復習できる項目があるのではないかと思います!
Dr.竜馬のやさしくわかる集中治療 内分泌・消化器編
タイトル:Dr.竜馬のやさしくわかる集中治療 内分泌・消化器編〜内科疾患の重症化対応に自信がつく!
著者:田中 竜馬
出版社:羊土社
発行年月日:2017/6/3
【作者の背景】
【学べること】
●DKA、HHSの初期対応と、その後の全身管理
例)DKAで介入すべき電解質異常は何でしょう?
●甲状腺機能を図る意義は?
例)背景に甲状腺疾患がなければ、測定する意義に乏しい
●消化管出血のHb正常なら、輸血は必要なし?
例)DO2との兼ね合いを慎重に話すように
【評価】
必要性:
本の薄さ:
わかりやすさ:
面白さ:
継続使用度:
オススメ度:
※Amazon評価:
一冊目と同じシリーズの、消化器・内分泌分野の一冊です!
個人的には竜馬先生の医学書はシリーズでそろえて読むことをお勧めします。
なぜなら、竜馬先生の生理学や生化学といった病態把握の根幹の部分はどの医学書でも説明されており、シリーズで読むほうがその知識がより定着するなと実感したからです👇
本書では、研修医が抱きがちな集中治療領域の素朴な質問に、上級医が病態生理から論文のエビデンスベースに丁寧に解答していきます。
患者さんに何が起きているか、病態生理を学ぶ上では最高の一冊であると思います。
呼吸や循環の生理学について丁寧に説明された本は多くありますが、血糖管理やホルモン、消化器系疾患の生理学を学ぶ上でこの一冊は欠かせません!
個人的な評価をさせていただいていますが、集中治療の生理学を学ぶ上では本書よりもわかりやすい本は他にないと思います!
おすすめの勉強法としては、
●時間に余裕がある方は、研修医と上級医の会話を含めゆっくり通読
●忙しい人はまとめページだけ読み込んでいく
●まとめページのサマリは本当に重要なエッセンスが含まれているので、
自分のノートに書き写してまとめる(Evernote)
ある程度理解している内容も多ければまとめのページを読み込んで、
実際に引用されている論文を読むと、どのような竜馬先生がどのような解釈をしているのか知ることが出来て面白いです。
重症患者管理マニュアル
【基本情報】
タイトル:重症患者管理マニュアル
著者:平岡栄治 (編集), 則末泰博 (編集), 藤谷茂樹 (編集)
発行年月日:2018/8/2
【タイプ】辞書タイプ・項目ごとに通読も可能
【ターゲット】
ICU勤務の看護師・初期研修医1年目後半以降~専攻医レベルの医師
【推定読了時間】
20-25時間
【背景・作者の想い】
●アメリカなど世界の集中治療分野も学んできたうえで、日本の現状に即した純日本ICUブックを作りたい
【学べること】
●鎮静鎮痛・循環管理を含めたICU/CCUでの具体的な重症患者管理
●それら使用法の背後にあるエビデンスや生理学的知識
●現在の治療方針に影響を与えた数々のRCTの結果
必要性:
本の薄さ:
わかりやすさ:
面白さ:
継続使用度:
オススメ度:
※Amazon評価:
ICU診療の参考書として、一冊だけオススメを教えてくださいと言われた際には間違いなく本書を推薦すると思います。
本書の特徴は何といっても臨床での治療選択が変わってきた数々の論文の紹介や、豊富なエビデンスや背景となる生理学知識が網羅されている事です。
特におすすめなのが本書の最初の項目である重症患者を体系的にアセスメントするためのカルテの書き方、評価の仕方を解説してくださっている事です。
その他項目ごとに最新のエビデンスやガイドラインに即した内容や、必要な生理学的知識もふんだんに盛り込まれております。
そのため、働いていて治療に疑問や悩みを感じるたびに本書を読むことで、こんなことまで解説していあったのか…と購入後も継続して使用できる一冊です。
また、業務中に本書を確認することも多く、勉強でも業務でも欠かすことのできない一冊であるといえます!
ICU/CCUの薬の考え方、使い方 ver.2
【基本情報】
タイトル:研修医当直御法度 第6版
著者:寺沢 秀一 (著), 島田 耕文 (著), 林 寛之 (著)
出版社:三輪書店
発行年月日:2016/7/9
ターゲット層は、
初期研修医・ER診療に携わる後期研修医
推定読了期間は
8-10時間程度
本の薄さ:
わかりやすさ:
面白さ:
継続使用度:
オススメ度:
※Amazon評価:
ICU/CCUで頻用される薬剤の使い方を中心に、日々の臨床で培ったクリティカルケアの技術、経験をまとめられています。
新章の書きおろし、新規薬剤・文献のアップデート、新規付録「クリティカルケアで重要な薬物相互作用」の追加など、大幅な改訂作業によって旧版の倍、800ページ超の大ボリュームとなっております。
●鎮静鎮痛・循環管理を含めたICU/CCUで使用する薬剤の具体的な使い方
●それら使用法の背後にあるエビデンスや生理学的知識
●各薬剤だけでなく、患者さんに応じた薬物の相互作用を考えた管理
本書の特徴は何といっても超具体的な薬剤の使い方と、豊富なエビデンスや背景となる生理学知識が網羅されている事です。
本書のタイトルを見ると一見、基礎医学の薬理学などの内容を掲載した本に感じますが、実際には医療現場の具体的なcaseに応じた使用方法が解説されているのです。
USMLEなどで学ぶ基礎医学的な内容を実臨床生かす、いわば実臨床をベースとした一冊なのです。
そのため、働いていて治療に疑問や悩みを感じるたびに本書を読むことで、こんなことまで解説していあったのか…と購入後も継続して使用できる一冊です。
明日のアクションが変わる ICU輸液力の法則
ターゲット層は、
初期研修医・一人当直が始まり不安な専攻医
推定読了期間は
7-8時間程度
【学べる項目の一例】
●腹痛患者の手術適応についてCT所見から論理的に考えられる思考プロセス
●肺炎・無気肺・胸水を見分ける読影眼
●重症外傷患者のCT読影で重要な要素を漏らさないポイント
【評価】
必要性:
本の薄さ:
わかりやすさ:
面白さ:
継続使用度:
オススメ度:
※Amazon評価:
最後の一冊は、ICU管理でしばしば問題となる、体液バランス管理および輸液についての一冊。
今回の総評はほぼカンストしていますが、オススメ度や継続使用度には☆をいくつつけても足りないほどでした…笑
これまで断片的に理解していた循環管理における知識が見事につながっていき、頭の中で整理されていくのを感じました。
通読していて気持ちいいと思った本は本当に久しぶりです…!
特筆すべき点として、本書は輸液の参考書かと思いきや、敗血症や心不全、ARDSの循環動態を中心とした管理の内容についても言及されており、重症患者で想定される病態が網羅されていました。
特にスワンガンツカテーテルや右心不全の項目は、これまで苦手意識が強かった自分にとってはまさに目から鱗の内容ばかりでした。。感動的。。。
一方、僕自身の能力が低いからかもしれませんが、P-Vループなど個人的には一度通読するだけでは理解できていないことも多く、何度も読み込んだり臨床で出会う度に継続して読み続ける必要があるなと思いました。
あくまで個人的な評価であり、しかも何様だよと言われてしまうことは重々承知ではありますが、自分は
本書は集中治療領域の循環管理を学ぶ上でバイブルとなる一冊である!
と感じました。今後出会う初期研修医に本書を勧めたいと思います。
まとめ
いかがでしたでしょうか。最後にもう一度今回紹介した参考書を掲示しますので、
概要や評価を読んでいただいて気になったものは是非手に取っていただければと思います。
皆様のICU管理の勉強がより効率的で質の高いものとなるよう切に願っています。