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外傷性気胸における保存的加療の妥当性【陽圧換気症例全例で胸腔ドレーン留置は必須?】

外傷性気胸における保存的加療の妥当性
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臨床や医学の勉強をしていて感じる疑問の一つ、

外傷性気胸における保存的加療の妥当性についてまとめました。

外傷で軽微な気胸がありそうだけど、ドレナージせず全身麻酔の緊急手術に行ってもいいものか…

気胸自体は大したことなさそうだけど、酸素需要は減らず改善に乏しい…ドレナージが必要なのか…

外傷性気胸のマネジメントを悩むケースは多々あると思います。

様々な文献や、臨床医のオピニオンを集めることのできるAntaa QAを参考に一緒に学んでいきましょう。

1.外傷性血気胸の総論と治療

多発外傷患者の実に5人に1人が気胸を発症するといわれており、時に緊張性気胸に伸展すると閉塞性ショックを引き起こします1)。

そのため、外傷性血気胸は鈍的胸部外傷において最もcommon な生命を脅かす外傷であるといえるでしょう。外傷患者の死因となってしまうこともあることもあるため、適切な治療を選択することが大切です。

アメリカの外傷診療ガイドラインであるATLSでは2)、画像上軽微な気胸であったり無症候性であれば経過観察を考慮してもよいといわれています。ただし全身麻酔や陽圧換気を要する症例ではあらかじめ胸腔ドレーンの留置が必要だと述べられています。

一方で、日本の外傷初期診療ガイドラインJATECでは3)、気胸の重症度と関係なく治療は、原則胸腔ドレナージであると記載されています。特に陽圧換気時には緊張性気胸に移行することがあるため、気胸と診断された場合には人工呼吸や全身麻酔の前に胸腔ドレナージをしておくのが安全であると明記されています。

両者のガイドラインを合わせると、軽微な気胸に関する胸腔ドレーン留置については少し意見が分かれていますが、陽圧換気を要する症例であれば基本的に胸腔ドレーン留置を推奨していることがわかりますね。

ただし、実臨床で全身麻酔を行う症例であっても、すべての気胸患者さんに対して胸腔ドレーン留置を行っているかというと…少し疑問なところもあります。

2.Occult pneumothoraxについて

JATECでは上記の記載の後に、実は以下のような記載があります。

Occult pneumothorax については、陽圧換気を要する状態であっても

ドレナージすることなく治療が可能であるとする意見がある一方、

その約 20% に胸腔ドレナージが必要となったとする報告がある

3)引用

ここでいうOccult pneumothoraxとは、「Xp では確認されないが、 CT で初めて発見されうる気胸」のことを意味しており、いわゆる呼吸症状に影響を及ぼさない軽微な気胸のことです。

外傷性気胸の76% はoccult pneumothoraxだと言われている報告もあり4)、これらの症例で全身麻酔を行う際は全例胸腔ドレーン留置を行っていてはキリがありません。意外と陽圧換気をかける症例であっても保存的に経過を見ることができる例もあるのではないでしょうか?

3.陽圧換気を行うOccult pneumothorax症例に胸腔ドレーン留置は必須なのか?

ここで、陽圧換気を行うOccult pneumothorax症例に胸腔ドレーン留置は必須なのか?という疑問が生まれましたね。

これまで私が勤務してきた施設では、呼吸状態が概ね安定しているOccult pnerumothorax に関しては、全身麻酔などの手術目的に人工呼吸管理を開始する際に、予防的に胸腔ドレーンを入れないことも多々ありました。

一方で陽圧換気開始後の気胸の増悪で、緊張性気胸に進展してしまい、胸腔ドレーンを緊急で留置するという経験も2度したことがありました。

これらに関して文献をいくつか紹介します。Ismail Mahmoodらの4年分の外傷データベースを用いて後方視的に検証した研究では5)、軽微な気胸であっても緊張性気胸に進展するリスクが高い(胸腔ドレーン留置を要する)症例のリスク因子は、

ISS(外傷の重症度)が高い場合 ・気胸腔が大きい場合・肺挫傷、肋骨骨折、肺炎を合併している場合・長期の人工呼吸を要する場合・長期の入院日数となる場合などであると報告されています。

参考になりそうなリスク因子は多く存在しますが、陽圧換気の有無というのは登場していない点に着目しましょう。

そして、この疑問に関して専門医への相談が気軽にしやすい医師向けオンラインプラットフォーム(Antaa QA)に投げかけてみたところ、この疑問の解消につながる文献を教えていただくことができました。

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※今回の記事は普段よりお世話になっている、

アンター株式会社CEOの中山先生やCOOの西山様含め、

株式会社アンター様に執筆の許可をいただいている記事になります。

2017年に投稿されたSteven Pらの観察研究では6)、陽圧換気はリスク因子ではないと結論付けられています。

そして、2021年2月に発表された最新のRCTでドレーン留置群と経過観察群で比較したところ、治療失敗率や死亡率に有意差を認めないことが明らかになっています7)。

すなわち、陽圧換気の有無はOccult pneumothoraxの胸腔ドレーン留置の判断と関係がないのです。

ただ、この論文でも長期人工呼吸管理(5日以上)を要する場合には40%の患者でドレナージを要したと報告されているため、やはり長期間呼吸器管理が必要な症例ではドレナージが必要になることもあるでしょう。

それぞれの文献を参考に、Occult pneumothoraxに関するマネジメントをまとめると以下のようになります。

●多発外傷の場合や循環動態不安定な場合、肺挫傷や多発ろっ骨骨折を合併している場合は、気胸の増悪の可能性があるため積極的に胸腔ドレーン留置を行う。

●陽圧換気自体はOccult pneumothoraxの増悪のリスク因子とはならないが、長期人工呼吸管理(5日以上)を要する場合は胸腔ドレーン留置を考慮

●保存的に経過を見る場合は、いつでも緊急で胸腔ドレーン留置ができるよう準備しておく

Occult pneumothoraxのマネジメントは皆さん悩まれることも多々あると思いますので、この記事が皆さんの診療のお役に立つことができれば幸いです。

最後に、そもそも治療介入が必要な気胸の画像所見の目安はあるのかといった疑問もあるかと思いますので、参考となる具体的な数値を示しておきました8)👇

個人的にはCTで35mmというのは割と大きな気胸腔で、それよりも早く治療介入してしまいたくなるなと感じましたが…、臨床判断の参考にしていただければ幸いです。

●胸部レントゲンで胸壁から約2cm/胸部CTで胸壁から35mm以上の虚脱がある場合➡胸腔ドレーン留置

●胸部CTで胸壁からの虚脱が35mm未満の場合、約10%が保存的治療に失敗

●保存的治療を選択した場合は6時間以内に気胸腔の拡大がないか胸部レントゲンの再検が必要

4.引用文献

1)J Trauma Acute Care Surg . 2001;51(4):677-82
2)Anesthesiol Clin. 2019;37(1):13-32.
3)日本救急医学会,ほか. 外傷初期診療ガイドラインJATEC. へるす出版 2021
4)Can J Surg. 2009;52(5):173.
5)Qatar Med J. 2020 16;2020(1):10.
6)Chest. 2018;153(4):946-53.
7)Am J Surg. 2021;221(6):1252-8.
8) J Trauma Acute Care Surg. 2022 1;92(1):103-7.
この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方は今後も定期的に記事を更新していきますので

 

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