【疑問】
今回は、臨床や医学の勉強をしていて感じる疑問の一つ、
胆石と急性胆嚢炎の疫学について
有病率や、死亡率についてまとめました。
救急外来で出会うことも多い急性胆道系感染症なので、
疫学についてしっかりと把握しておくことは重要です◎
1.胆石ができやすい人とは?
そもそも急性胆嚢炎は、胆囊に生じた急性の炎症性疾患のことです。
原因の90%以上は胆嚢結石(胆石)といわれており、その他の原因としては、胆囊の血行障害、化学的な傷害、細菌感染、アレルギー反応などがあります
日本人の胆石保有率は1000万人を超えるといわれ、そのうち1-3%以上は急性胆嚢炎または胆管炎を引き起こすと報告されています1)。
ここで、国家試験でもよく学ぶ胆石ができやすい人について復習です。
胆石形成に関連する因子は5Fで暗記
forty(40歳代)
female(女性)
fatty(肥満)
fair(白人)
fertile(多産)
5F(forty(40歳代)、female(女性)、fatty(肥満)、fair(白人)、fertile(多産))は胆石形成に関連する因子といわれていますが、これらが必ずしもすべての胆嚢炎・胆管炎に関連するかは定かではないといわれています。
これらの因子の中でも肥満は胆嚢炎のリスクを上げるといわれています。
その他関連する因子としては薬剤があり、ホルモン療法は胆嚢炎のリスクを上げること、スタチンは胆嚢摘出術のリスクを減らすことが報告されています。
しかし、これらの特徴を認めて胆嚢炎や胆管炎の可能性が高いと判断された場合でも、救急外来であれば想起しなければならない疾患がいくつかあります。
救急外来でのマネージメントを合わせた鑑別疾患についてはこちらの記事で学ぶことができます👇
胆石と胆嚢炎の相関について
上記のような胆石のある患者のうち、年間1-4%が胆石疝痛を起こし、そのうち20%が急性胆嚢炎を発症します。
また、もう一つ重要な点としては、
胆石のある患者のうち、胆石疝痛の既往がある方が胆嚢炎を引き起こす可能性が高いといわれていること2)
です。
救急外来での病歴聴取においてポイントとなる胆石疝痛の既往については、このように胆嚢炎の発症率と相関があるため重要なのですね!
3.胆嚢炎の死亡率
最後に、胆嚢炎の死亡率についてですが、一般的には0~10%とする報告が多いです。
近年の文献報告は概ね1%未満であり、治療成績が良くなっていることが垣間見えます。
胆嚢炎の手術について興味がある方はコチラ👇
一方で胆管炎死亡率が2.5-11%といわれており、胆管炎の方が重症化しやすい傾向があるのでより注意が必要です。
もちろん、胆嚢炎も胆囊の血行障害により壊疽性胆嚢炎に進展すると、胆嚢周囲膿瘍などの重篤な合併症を来すので治療介入や診断が遅れないようにしましょう。
4.引用文献
2)Am J Surg. 1993 Apr;165(4):399-404.
Natural history of asymptomatic and symptomatic gallstones. SOFriedman GD
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