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薬剤熱とCRPの相関は?【薬剤熱の比較的三原則に注目】

今回は
薬剤熱CRPの相関は?
という疑問についてまとめました。

発熱の鑑別として常に考えておかないといけないにもかかわらず、意外と忘れがちな薬剤熱…
発熱の鑑別には、炎症所見の採血所見としてCRPも参考にしたいところですが、
果たしてどれほどの相関があるのでしょうか…?

1.ポイント

●薬剤熱の特徴の覚え方として、比較的3原則が有名
・比較的徐脈
・比較的元気
・比較的CRP低値●薬剤熱でもCRP上昇、白血球数上昇(左方移動を伴う)はよくみられる

●薬剤熱において感度および特異度の高い検査値・検査所見は存在せず、薬剤中止後の解熱をもって診断確定となる

2.解説

今回の要点は上記のまとめの通りですが、以下解説をさせていただければと思います。

そもそも薬剤熱とは、薬剤により引き起こされる発熱のことであると定義されます。
薬剤熱の対応は、まず疑う事から始まります。特徴についてしっかりと把握することが大切です👇

特異的な所見がないため診断が難しく、原因と思われる薬剤の中止により解熱した場合に薬剤熱と考えますので、
薬剤熱を疑った時には、まずは不要な薬剤を中止して、解熱するかどうか経過を見るのが妥当な対応でしょう。

薬剤熱をきたしやすい薬剤について知っておくことで、より選択的に休薬する薬剤を選ぶことができます👇

鑑別のために行う検査所見では、末梢血白血球、ESR、CRPなどの炎症反応検査が上昇することもあります。
ここで、発熱の鑑別を考える上で薬剤熱の特徴として有名な、比較的三原則を再確認してみましょう。

比較的徐脈: 発熱のわりに脈拍が低い傾向があり、薬剤熱の特徴といわれます。

※比較的徐脈はレジオネラ肺炎など他の疾患でもみられるため、鑑別を知っておきましょう👇

【疑問】レジオネラ肺炎はなぜ比較的徐脈なのか?今回は、臨床や医学の勉強をしていて感じる疑問の一つ、 レジオネラ肺炎はなぜ比較的徐脈なのか?についてまとめました。 USMLEを思い出すような病態生理の勉強を久々にして面白かったので紹介させていただきます。感染症の鑑別の際にも重要となる特徴の一つですので、比較的徐脈についても少しだけ書きました!...

比較的元気: 高熱の割に全身状態が比較的良好な場合があります。
比較的CRP低値: 薬剤熱は高熱にもかかわらずCRPが低いという特徴が挙げられます3]

しかし、実際にはESRが100 mm/hr以上、CRPが10 mg/dL以上など、感染症を疑うレベルまで上昇する場合もあり1]2]
白血球数上昇(左方移動を伴う)がしばしばみられることも報告されています。

さらに、クロザピンをはじめとした一部の薬剤による発熱ではCRPが上昇するケースが複数認められています4]5]

結局は、薬剤熱において感度および特異度の高い検査値・検査所見は存在せず、薬剤中止後の解熱をもって診断確定となるというのが結論になります。
常に感染症との鑑別を考えながら診断を行っていくということですね。

薬剤熱はあくまで除外診断であると心得ましょう◎

3.引用、参考文献

(1) Drug fever: a critical appraisal of conventional concepts. An analysis of 51 episodes in two Dallas hospitals and 97 episodes reported in the English literature.
Mackowiak PA, LeMaistre CF, Schuhardt VT, et al.
Ann Intern Med. 1987 May.

(2) 医学書院 第2792号 レジデントのための日々の疑問に答える感染症入門セミナー〔 第5回 〕原因不明の発熱が持続するとき:特に薬剤熱の考えかた
大野博司

(3) A Retrospective Analysis of Drug Fever Diagnosed During Infectious Disease Consultation.
Yaita K, Sakai Y, Masunaga K, Watanabe H.
Intern Med. 2016;55(6):605-8. doi:10.2169/internalmedicine.55.5740.

(4) Patterns of C-Reactive Protein Trends During Clozapine Titration and the Onset of Clozapine-Induced Inflammation: A Case Series of Weekly and Daily C-Reactive Protein Monitoring.
Kikuchi Y, Tanifuji H, Ueno S, et al.
Front Psychiatry. 2024;15:1366621. doi:10.3389/fpsyt.2024.1366621.

(5) Increases in C-Reactive Protein May Predict Recurrence of Clozapine-Induced Fever.
Kohen I, Afzal N, Hussain S, Manu P.
Ann Pharmacother. 2009;43(1):143-6. doi:10.1345/aph.1L467.

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