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【疾患】アナフィラキシーショックのまとめ【随時更新中】

アナフィラキシーショック

 

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救急の現場で出会うことも多い、アナフィラキシーショックについてまとめました。

初療で気を付けるべきこと、治療法、入院後に注意することなど覚えることはかなり多いです。

 

 

アナフィラキシーショック

 

 

1.ポイント

●とにかくますはバイタル(ABC)をチェックしながら酸素投与

●アナフィラキシーのABCDは超重要。全身性膨疹or抗原暴露+ABCDに当てはまればすぐにアドレナリン筋注

●アナフィラキシーの原因検索の病歴はしっかり過去までさかのぼって聴取

●その皮疹は本当にアナフィラキシーなのか?アナフィラキシーの鑑別を把握するべし

●アドレナリンが効かなかった時の奥の手を知っておく

 

2.言葉の定義・疫学

●アナフィラキシー

アレルゲン等の侵入により複数臓器に全身的にアレルギー症状が惹起され、生命に危機を与え得る過敏反応

●アナフィラキシーショック

アナフィラキシーに血圧低下や意識障害を伴う場合

日本において、アナフィラキシーの既往を有する児童生徒の割合は、小学生に0.6%、中学生に0.4%、高校生に0.3%である。

3.症状

●アナフィラキシーのABCD(Dに注意)
(Dr.林のアナフィラキシーのABCD引用

A:Airway
B:Breathing
C:Circulation
D:Diarrhea

忘れやすい消化器症状に注目

 

●10%では皮疹を認めないことも大切

4.原因

食物:卵、乳製品、甲殻類、穀物
虫毒:ハチ
ワクチン:卵との交差反応
運動誘発性:特定の食事後の運動負荷

医薬品によるものとしては抗菌薬、解熱・鎮痛薬、抗腫瘍薬、局所麻酔薬、筋弛緩薬、造影剤、生物学的製剤、アレルゲン免疫療法、輸血等が挙げられる。

輸血関係のデータとして、血小板製剤は8500件に1例、血漿製剤は14000件に1例、赤血球製剤は87000件に1例と比較的多い。1)

5.注意すべき合併症

●二相性反応
成人の最大23%、小児の11%のアナフィラキシーに発生

症状が改善しても最大10時間は経過観察が必要
特に小児~思春期/食物アナフィラキシーは重篤になる場合があるので注意

6.問診・診察のポイント

●皮疹を見た時は、2-6W前まで被疑薬となりうるのでしっかりさかのぼって聴取が必要。

●診断基準と重症度分類をしっかりと意識

3)引用

 

EAACI(European Academy of Allergy and Clinical Immunology)の重症度評価👇

 

4)引用

7.鑑別診断

●アナフィラトクイド反応
造影剤やバンコマイシンなどで起こる、IgEを介さないアナフィラキシー様の反応
治療はアナフィラキシーに準じる

投与速度や量の調節、ステロイド、抗ヒスタミン薬の投与で使用可能であることが多い。
※造影剤アレルギー予防に関するMeta-analysis

●薬剤性の重症薬疹
SJS/TEN・DIHS・AGEPなど
皮疹+発熱、倦怠感、粘膜疹があるときは疑わしい

●ヒスタミン中毒
アナフィラキシーアナフィラキシーと診断して患者さんの鉱魚介類中の物を奪ってはいけない…
うまみ成分のヒスチジンが鮮度が下がることでヒスタミンに変化することで起こる

●運動誘発性アナフィラキシー
原因食物は甲殻類が多い。数時間立っていても起こることはあるので注意。

8.具体的治療

【治療方針】
①アドレナリン投与
アナフィラキシーの重症度評価におけるグレード3の症状、また、過去の重篤なアナフィラキシーの既往がある場合や症状の進行が激烈な場合はグレード2でもアドレナリンを投与

⇒わかりやすく、全身性膨疹or抗原暴露+ABCDに当てはまればすぐにアドレナリン筋注と覚える。

大腿外側広筋に筋注
投与濃度:0.1%(1mg/mL)
投与量:成人0.3-0.5mgを5-15分毎
小児の場合は0.01mg/kg(最大0.3mg)
改善がなければ5-15分おきに再投与すべし。
針は23Gでしっかり長さを確保。

+細胞外液の輸液(1-2L程度投与)も忘れずに!

②アドレナリン2回いってもだめな時…
1.グルカゴン考慮
成人:1-2mg/kg
小児:0.02-0.03mg/kg
静脈投与
アドレナリンとは違った経路でcAMPを上昇させる(β受容体と同じGTP結合蛋白に結合)

※グルカゴン単独では効果なし(脱顆粒が防げない)

2.アドレナリン静注(bolus)
エピネフリンの静注は0.1mg/mlに希釈
5分かけて0.1-0.5mgを静注(過剰投与に留意)

持続静注投与
投与速度は1mg/生食250mgを0.5~4ml/minで投与
bolusに比べ過量投与が避けられ副作用発現も少ない

気管内投与
静脈路が確保できないときに有用
0.3-0.5mgを気管内に投与

overdoseにならないよう血圧/ECGに注意しながら投与
副作用:心房細動、脳出血@アドレナリン感受性の強い患者
腎機能障害、代謝性アシドーシス

3.ステロイド点滴(サクシゾン300mg)

1-2mg 静注(5分毎に投与) 1-5mg/h持続投与
副作用:嘔気・嘔吐、高血糖に留意

アナフィラキシーの気道閉塞に対しては有効とされているが、即効性があるわけではない。

4.クロルフェニラミン(ポララミン)
ポララミン5mg+ザンタック50mgをNS50mlに溶いて投与
2.5mg~5mg静注 10~25mg/minの投与速度が目安
掻痒・蕁麻疹の対処療法として効果的
H2ブロッカーを追加することで効果が増強(ザンタック50mg)
急速投与は鎮静効果を上げるため、呼吸抑制に留意

5.β₂刺激薬の吸入
気管支攣縮には有用かもしれない。
低血圧惹起の予防のため必ずアドレナリン全身投与後に使用
発作時には薬液が細気管支まで達するよう必ずネフライザーを用いる。

※アミノフィリン5mg/kg静注は急性期に効果なし

【番外編:経口免疫療法】
経口免疫療法とは「自然経過では早期に耐性獲得が期待できない症例に対して、事前の食物経口負荷試験で症状誘発閾値を確認した後に原因食物を医師の指導のもとで経口摂取させ、閾値上昇または脱感作状態とした上で、究極的には耐性獲得を目指す治療法」6)

食物アレルギー患者に対する経口免疫療法(oral immunotherapy;OIT)は脱感作によるアナフィラキシー対策や耐性獲得を目的として行う研究段階の治療法である。
治療効果が高い症例やリスクが高い症例の事前予測、より安全な方法の開発、目標量の設定など未解決の問題が多く、現時点ではOIT を一般診療として推奨しない。7)

 

9.引用、参考文献

1)日本赤十字社の使用製剤、症状別副作用報告数より

2)Brown SG, et al. J Allegy Clin Immunol 2013; 132: 1141-9.

2)FBグループ三銃士勉強会スライド「それって本当にアナフィラキシー?」

3)日本小児アレルギー学会誌2014;28:201-10

4)J Allergy Clin Immunol 2001;108:871

6)https://www.jspaci.jp/allergy_2016/chap09.html

7)https://www.asahi.com/articles/ASM495S04M49UBQU016.html

8)Ann Allergy Asthma Immunol. 2007 Jun;98(6):519-23.
SAFE: a multidisciplinary approach to anaphylaxis education in the emergency department.
Lieberman P

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