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【研修医・看護師向け】血液培養を採取する前の消毒にクロルヘキシジンが推奨される理由

【疑問】

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今回は、臨床や医学の勉強をしていて感じる疑問の一つ、

血液培養を採取する前の消毒にクロルヘキシジンが推奨される理由

についてまとめました。

こちらの内容について今回は文献を用いて解説していきたいと思います。

1.敗血症における血液培養

敗血症における血液培養

●抗生剤投与前に2セット以上提出
 1セットあたり20-30mlを採取
 血液培養の陽性率:5-13% コンタミ率:20-56%

セットの数を増やせば感度は上昇
 1セット:約80% 2セット:約89% 3セット:約98%との報告あり

●基本は2セット提出(IEのみ3セット)

引用:日本版敗血症診療ガイドライン2020 CQ2-1

まず敗血症ガイドラインより、推奨されている血液培養の採取法をまとめました。

採取の際のポイントとして重要なのがコンタミネーションを避けるということ。

コンタミ率は20-56%との報告もあり、鼠径などの汚染が強い部位を避けるのはもちろん、採取する前に入念に皮膚表面の常在菌を消毒することが大切です。

皮膚表面の消毒薬にはアルコールやポビドンヨード、クロルヘキシジンなどを用いられることが多いですが、果たしてこれらの消毒製剤によるコンタミ率の違いはあるのでしょうか?

今回は様々なガイドラインや医学書でも引用されている有名な文献を一つ紹介させていただきます!

2.血液培養採取前の消毒について文献レビュー

ここで、実際にクロルヘキシジンを用いた消毒についてレビューした論文を紹介します。

【タイトル】

原文タイトル

The forgotten role of alcohol: a systematic review and meta-analysis of the clinical efficacy and perceived role of chlorhexidine in skin antisepsis

日本語約

皮膚消毒におけるクロルヘキシジンの臨床的有効性の系統的レビューとメタアナリシス

 

PMID: 22984485

【内容の要約】

【背景】

皮膚消毒は感染症予防のための簡単で効果的な対策である。

クロルヘキシジンの有効性は、皮膚感染予防に関する文献で盛んに議論されている。しかし,クロルヘキシジンとアルコールの併用による試験結果は,クロルヘキシジン単独に起因することが多い。

そこで本研究では,クロルヘキシジンの皮膚消毒効果とエビデンスの解釈について検討した。

【方法】

血液培養採取、血管カテーテル挿入、外科用皮膚調製のためのクロルヘキシジン化合物を調査している臨床試験および系統的文献レビューを実施した

PubMed、CINAHL、CochraneLibrary、Agency for Healthcare Research and Qualityのウェブサイト、いくつかの臨床試験登録、メーカーのウェブサイトを検索した。

図 1. 皮膚防腐の3分野における文献検索と研究選択のフロー図。(A)血液培養採取、(B)血管カテーテル挿入、(C)外科的皮膚処置。フルテキスト論文の段階での除外理由は上記参照

試験デザイン、消毒薬組成、および以下のアウトカムに関するデータを抽出した:血液培養物の汚染、カテーテルのコロニー化、カテーテル関連血流感染、手術部位の感染

クロルヘキシジン化合物の臨床効果のメタアナリシスを実施し、妥当性を検討した。

【結果】3つの適用領域すべてとすべての結果において、クロルヘキシジン-アルコールは水性の競合薬(ポピドンヨード)よりも有利であることが示されたが、アルコールと併用した競合薬よりは有利ではなかった。

 

図2. 血液培養物の汚染防止のための皮膚消毒薬のメタアナリシス。A)CHG+アルコール対水性PVI。B)CHG+アルコール対逐次アルコールとヨウ素チンキ。参考文献および略語は表1の通りである。

図3. 血管カテーテル関連感染予防のための皮膚消毒薬のメタ解析。(A) CHG水溶液とPVI水溶液の比較、カテーテルコロニー化の転帰。(B) CHG水溶液とPVI水溶液の比較、カテーテル関連血流感染の転帰。(C) CHG+アルコール対PVI水溶液、カテーテルコロニー化転帰。(D) CHGとアルコールと水性PVIとの比較、カテーテル関連血流感染の転帰。参考文献および略語は表2に示すとおりである。

図4. 手術部位の感染予防のための皮膚消毒薬のメタ解析。CHG+アルコール対水性PVI。参考文献および略語は、表3に示すとおりである。

血液培養と手術では、クロルヘキシジン単独を支持するエビデンスは得られなかった。カテーテルについては、クロルヘキシジン単独ではカテーテルのコロニー化を防ぐことができるが、血流感染を防ぐことはできないというエビデンスが得られた。

実際にクロルヘキシジンがアルコールとの併用が行われた場合に上記のような結果となると29~43%の論文で結論づけられている。帰属が曖昧な論文が一般的であった(8-35%)。

クロルヘキシジン-アルコールの代わりにクロルヘキシジンのみを推奨する根拠はないと、いくつかのレコメンデーションやエビデンスに準じたガイドラインで発表されている。

【結論】クロルヘキシジンの認知された有効性は、実際にはクロルヘキシジンとアルコールの組み合わせの有効性に関するエビデンスに基づいていることが多い。

アルコールの役割は、エビデンス評価においてしばしば見落とされてきたので、患者さんに不利益を被ることの無いようにしっかりと認識しておくことが寛容である。

 

(DeepL翻訳を使用し一部著者が意訳)

これらの論文をまとめると、以下のようになります👇

アルコール+クロルヘキシジンはアルコール+水溶性消毒薬での消毒よりもコンタミ率は低くなる

●クロルヘキシジン単体での消毒が推奨されているわけではなく、アルコール消毒との併用を行うことがより良いアウトカムにつながる

 

この論文を引用したガイドラインや医学書では、ポピドンヨードよりもクロルヘキシジンを消毒に用いるべきとの文言が多く見受けられましたが、

実際にこの論文を読んでみると本論文の主張は、消毒の際にはアルコール消毒併用の有効性を忘れないようにしておきましょうというものでした。

このように、様々なガイドラインや文献に引用されている論文を実際に読んでみると、論文の内容が意外と想定していたものとは異なることがあるので、実際にわかった気にならずに読んでみることが大切ですね!

今後血液培養の採取の際にクロルヘキシジンを用いるのはもちろん、事前にアルコールでの消毒を忘れずに行うことをより意識したいと思います。

 

3.引用文献

Maiwald M,  The forgotten role of alcohol: a systematic review and meta-analysis of the clinical efficacy and perceived role of chlorhexidine in skin antisepsis. PLoS One. 2012;7(9)
PMID: 22984485
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