今回は、
令和の研修医が臨床研修を始める前に必ず知っておくべきこと
というテーマでお話ししたいと思います。
この記事は
この四月から研修医生活を始めた研修医全員
研修医生活とはどのようなものか知りたい医学生
医師になることに興味がある高校生
に読んでいただきたい記事です。
1.臨床研修の大まかな流れ
国家試験を合格した後の医師の初期研修の期間は2年間あり、
現在はその間にいろいろな科を回って勉強していく
いわゆるスーパーローテート方式で初期研修を行います。
これまでのカリキュラムでは、内科・救急科・地域医療の3科目が必修とされており、
外科・麻酔科・小児科・産婦人科・精神科の中から2科目が選択必修となっていました。
そして2020年度より産婦人科と小児科のローテーションが必須となりました。
これはこの2つの科の基本的な知識は全ての医師が身に着けるべき知識であると厚生労働省に判断されたためでしょう。
言い換えると、
すべての研修医はこの2つの科を含めた必修科の基本的な知識を身に着ける必要がある
という事です。
この選択必修については各病院ごとに詳しいプログラムが異なるため、それぞれ確認してもらえたらと思います。
簡単にまとめると、
必ず回らなければならない科を含め、各科で2年間たくさんの経験を積む
のが医師の臨床研修です。
2.スーパーローテート方式が導入された背景
ではなぜこのスーパーローテート方式の研修が始まったのか。
その背景にはこれまでの厚生労働省によって定められた、医師臨床研修制度改定の流れがあります(こちらに興味がある方は記事の一番下にリンクがありますのでこちらを参照ください)。
簡単に言いますと、これまでは医学生の時期に実習などの経験を通じて自分が将来進む科を選択していました。
そのため多くの場合、国家試験合格後は自分が選択した科の大学医局に入局して、その科の専門としての勤務をスタートし経験や修練を積んでいくこととなります。
例えば眼科に進むと決心した場合、国家試験終了直後の研修医1年目から眼科としての勉強に専念するという事です。
このシステムはそれぞれの専門の知識や技術を早く身に着けられるという利点がある一方で、
その科以外の疾患に対する診断や治療法の知識は国家試験での勉強のみである
という点でした。
そのため例えば眼科の医師がある病院の夜間当直をしているときに、
喘息の患者さんがやってきたとしても、
その眼科の医師はこれまで臨床で診察、治療した経験がないため受け入れを断らざるを得ないという事になってしまします。
そんな臨床研修制度の欠点を改善したのが、現在行われているスーパーローテート方式です。
自分の将来進むべき診療科に関係なく、医師として身に着けるべき必要最低限の各科の知識を身に着けること
を重要視した研修システムとなりました。
●必修化の背景
地域医療との接点が少なく、専門の診療科に偏った研修が行われ、「病気を診るが、人は診ない」と評されていた。
多くの研修医について、処遇が不十分で、アルバイトをせざるを得ず、研修に専念できない状況であった。
出身大学やその関連病院での研修が中心で、研修内容や研修成果の評価が十分に行われてこなかった。
●研修の必修化
医師の臨床研修の必修化に当たっては、医師としての人格を涵養し、
プライマリ・ケアの基本的な診療能力を修得するとともに、
アルバイトせずに研修に専念できる環境を整備すること
を基本的な考え方として、制度を構築してきた。
引用~医師臨床研修制度の変遷(厚生労働省HP)
簡単にまとめると、
どの診療科の医師でもある程度の疾患は診られるようになりましょう
という事です。
どの診療科に進んでも必要な知識(特に輸液分野)についてはコチラの記事を参考に勉強してもらえると嬉しいです👇
https://dancing-doctor.com/2020/09/19/fluid-review/
3.臨床研修を始めるに必ず知っておくべきこと
ここからがすべての研修医に知っておいてもらいたい内容です。
まず大前提として、各科をローテーションしている際に実際に指導を受けるのは、
その診療科の指導医たちからです。
すなわち、その道のプロに教えを乞うわけです。
一見するとこれはとても良いことのように思えますが、ここに大きな落とし穴があります。
各診療科の指導医の知識、技術の大半はその専門科の治療や管理やその専門科にやってくる疾患の分類であって(専門家の知識・技術)、
いわゆる町医者や地域の診療所にやってくるような様々な主訴、疾患抱える患者さんを診察する様のもの(プライマリーケアの知識・技術)ではないという事です。
※ここで登場したプライマリーケアの知識・技術とは、先ほどのスーパーローテート方式の研修医が身に着けるべきもののことです。
各診療科の指導医の興味やレクチャーは専門家としての知識にフォーカスされていることが多く、研修医が身に着けるべき知識と乖離していることが多々あります。
例えば、各科の超専門的な治療、手術を毎日永遠と見学していても、研修医に必要な知識や技術は何一つ得られません。
※もちろん、各専門科の治療をみることでコンサルトした後の治療の流れが何となくわかるようになるのですべてを否定しているわけではありません。
また、指導医におすすめの参考書を聞いても、その参考書はその診療科の医師にとっておすすめの一冊であることが多く、
研修医にとっての最適な参考書であるわけではないのです。
4.研修医生活を有意義に過ごすために大切な事
最も大切なことは、
必修科を中心とした各科の基本的な知識・手技を身に着けるという研修医の本分忘れないこと
だと著者は考えます。
これを念頭に置くことで、各科で研修医にとって本当に必要な勉強、参考書は自ずと見えてきます。
各科のローテーションは1-2か月と、その診療科のすべてを知るにはあまりに短すぎます。
自分にとって本当に必要かどうか、見分ける能力を身につけましょう。
そんなこと言っても、研修医生活始まったばかりの自分には取捨選択なんてできないよ…
と迷う方々のために、著者は研修医のみなさんに是非読んでほしいとお勧めする本をレビューでまとめています。
著者自身も救急科という専門科を選択している身ではありますが、
なるべく研修医のみなさんにプライマリーケアやジェネラリストの知識を身につけてほしいという思いを込めて紹介していますので、大意はずれていないと思います。
興味がある方は参考にこちらをチェックしてみてください👇
5.まとめ
本記事をまとめると
●現在の臨床研修は、各科の基本的な知識・技術を身に着けるためにスーパーローテート方式となっている
●各科をローテーション中に指導を受けることは、必ずしも研修医がにつけるべき内容でない可能性があることを念頭に置く
●自分自身で必要な勉強や修練を取捨選択する
●参考書に迷ったら当サイトの医学書レビューをチェック(笑)
となります。
みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります!
【参考HP】
医師臨床研修制度の変遷(厚生労働省HP)
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/rinsyo/hensen/