本日は、臨床においても経験したり、鑑別に上げることも多いWernicke脳症についてまとめました。
時に医原性に生じてしまうかもしてない疾患であり、リスクを意識した対応が大切となります!しっかり現場の判断に使える知識やスコアリングを学んでおきましょう。
ウェルニッケ脳症(Wernicke脳症)
1.ポイント
【Wernicke脳症のまとめ】1)中心に
●ウェルニッケ脳症(WE)とコルサコフ無気力症候群(KS)は、
それぞれチアミン欠乏に起因する急性および慢性の脳疾患
●WEはアルコール依存症と関連していることが多いが、
吸収不良、食事摂取不良、代謝要求量の増加、透析患者などでも起こりうる。
●脳の正中線部に点状出血性壊死が生じ、
認知機能、眼球運動機能、歩行運動失調などの障害が生じる。
※これら3つの古典的な症状は約3分の1の患者にしか認められない。
●WEを疑った場合には診断を確定するのではなく、チアミン(ビタミンB1)を投与することが第一
●チアミン欠乏症のリスクがある患者には、他のマルチビタミンの補充とともに、チアミンの補充が推奨される
2.疫学
【リスクが高い要素】
栄養不良、アルコール、慢性下痢、上部消化管術後(ビタミンB1は十二指腸で吸収される)、偏った食事、利尿薬など
Wernickle脳症は決して珍しい疾患ではなく、一般人口で2%、アルコール中毒では12.5%といわれており、ビタミン欠乏は食生活とも関与しているのでアルコール中毒患者に限りません。
3.症状
【古典的3徴】
• 意識障害:82%
• 眼球運動障害:29%
• 体幹失調:23%
• 古典的3徴がすべて出現した:16%
• 古典的3徴なし:19%
眼球運動障害や、その他には垂直性の眼振や外眼筋の障害をきたします。
4.原因
ビタミンB1(サイアミン)の欠乏によって起こる。
ビタミンB1は水溶性ビタミンであり、肉、卵黄、緑色野菜、米の胚芽、麦などに多く含まれています。
余剰分は体内に貯蔵されず全て尿中に排泄されるため、毎日補充する必要があるのがポイントです!
5.除外診断・注意すべき合併症
Korsakoff症候群への進行に注意
Korsakoff症候群の特徴…健忘、作話、失見当識の3徴候あり
●チアミン欠乏症の人にブドウ糖液を静脈内投与すると、WEが発症することがある
非可逆的であると言われている、Korsakoff症候群への進行を防ぐように、疑った際には確定診断を待たずに早期に治療介入を行いましょう。
また、注意すべき点としては、低血糖で搬送された患者さんでチアミン欠乏のリスクが低い人へのチアミン投与を行わずにブドウ糖を投与してしまうこと。
ブドウ糖投与後は解答系の補酵素としてさらにチアミンを消費してしまうため、医原性にWernicke脳症をきたしてしまう可能性があるため注意しましょう3)
6.問診・診察のポイント
①古典的3徴をチェック
• 意識障害:82%• 眼球運動障害:29%• 体幹失調:23%
②意識障害が強く指示が入らない場合は、前庭動眼反射(人形の目現象)を確認してみる。5/5で水平性の前庭動眼反射が障害されていたとの報告あり。4)
③アルコール中毒などの疑わしい意識障害患者に対して、意識が改善してきたらCaine Criteriaを用いて詳細に評価👇
【Caine Criteria】5)
下記4項目のうち, 2項目以上あれば約85%の感度でWernicke脳症を検出できる
①栄養障害
②眼振もしくは眼球運動障害(眼筋麻痺・注視障害)
③小脳失調
④意識変容もしくは軽度の記憶障害
リスクが高そうな患者さんでは早期にこの疾患を想起して、特徴的な症状をきたしていないかチェックしてみましょう。
一方で、意識障害が強くオーダーが入りそうにない患者さんに対しては、前庭動眼反射(人形の目現象)をチェックしてみると有益な所見が取れるかもしれません。
また、意識が改善してきたアルコール中毒患者さんなどで評価しやすいスコアリングについても紹介しました。
その他、問診のポイントについては以下にまとめましたので参考にしてもらえれば幸いです👇
【問診のポイント】
病歴 →意識障害、認知症状
低栄養(酒飲み、妊婦、胃切除後など) バイタル →低血圧、低体温
身体所見 →るいそう
7.治療
●経験的にビタミンB1を経静脈的に大量にゆっくり投与することが推奨
【Up To Date】1)
500mg(30分以上かけて静注)×3回/日 連続2日間
500mg静注もしくは筋注×1回/日 連続5日間
100mg/日 経口
【Lancet】6)
500mg(30分以上かけて静注)×3回/日
連続2-‐3日間
👇
効果あり
250mg(静注もしくは筋注)×1回/日
連続3-‐5日間 もしくは 臨床症状が改善するまで
効果なし
投与中止
疑わしくは治療介入開始!症状の出現を待たず早期治療介入が必要です2)
神経内科の先生方と並診しながら、意識障害や神経症状がどこまで改善するか、チェックしていきましょう◎
ちなみに一般的には、三徴は眼球運動→意識障害→失調の順に回復すると言われています。
9.引用、参考文献
4)Kattah JC, Neurol Clin Pract. 2013 Dec;3(6):460-468.
5)CaineD,et al:J Neuro Neurosurg Psychiatry 62 : 51-60,1997
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