国家試験では学ぶ機会は少ないが、実際に働きだすと出会うことの多い急性アルコール中毒についてまとめました。
急性アルコール中毒
1.ポイント
●意識障害の原因としての急性アルコール中毒はあくまで除外診断
●血中濃度200mg/dL以下の場合は他の意識障害の原因を検索
●外傷検索は必須。特に脊椎損傷に注意!
2.疫学
1日5合を10年間以上飲酒する場合は大酒家とよばれ、日本では200万人以上いると推定される
個人差はあるが、教科書的には飲酒の適量は1日1合(またはビール瓶1本)
【論文引用】
暴言・暴力などの迷惑行為のあった16例のうち14例は男性であり、平均年齢は36.2±17.4歳と若く、血中エタノール濃度は253.9±85.3mg/dLと高い傾向にあった。急性アルコール中毒は時として重大な転帰をたどることもあり、また、医療従事者にも被害を及ぼすことのある病態である。日常的に多く遭遇する症例であり、適切な対処を院内共通の認識とする必要がある。
3.症状
★アルコール依存症らしい、3つの所見
●アルコール臭
●嘔吐
●眼球結膜充血
※これらを認めない意識障害患者では急性アルコール中毒以外の原因を考えるべき
4.原因
●多量飲酒をする飲み会があった(12月、3月はやっぱり多いです)
●背景に精神疾患があることも多い
(アルコール依存症・薬物依存症・うつ病)
5.除外診断・注意すべき合併症
低血糖・ビタミンB1欠乏・アルコール性ケトアシドーシス(AKA)・肝性脳症・頭部外傷・頸椎損傷・細菌性髄膜炎・大酒家突然死症候群
追記すると、AKAはアルコール関連で救急外来受診する患者の13%紛れているといいます。
AG開大性代謝性アシドーシスがあれば、尿ケトンが陰性であっても血中のケトン体測定を考慮します。
また、大酒家突然死症候群は平均52歳で発症し、原因は肝不全、消化管出血、ビタミンB1欠乏、AKA、交通事故、外傷が多いそうです。
6.問診・診察のポイント
●飲酒歴の聴取は必須!
大酒家は飲酒量をごまかすことも多い。同伴した家族や友人にも聞いてみること。
アルコール多飲であるかどうかでビタミン投与などの治療方針が大きく変わることも
●アルコール関連の外傷は慎重に対応!
※意識障害のため頸椎などの神経症状や麻痺を評価できない際はネックカラー固定!
~引用 「それって本当に急性アルコール中毒?」 FBグループ三銃士公開スライド
●項部正中の圧痛と麻痺を必ずチェック
転倒が疑われる場合頸椎損傷を見落としやすいので、アルコールは頸椎損傷のリスクと心得る
●うつ病の併発は?
教科書的には自殺企図をかなわず問診しカルテに記載
※書かないと責任問題になるかも…
●意識障害の評価は時間経過を意識しながら何度も評価
【論文引用】
※アルコール依存症による意識障害は、
GCSのEye scoreが低いことが外傷患者による意識障害と異なり、注意深い診察が両者の鑑別に有用な可能性が示唆された
7.検査
~引用「それって本当にアルコール中毒?」 FBグループ三銃士公開スライド
8.治療
9.引用、参考文献
●Ann Epidemiol. 2005 Sep;15(8):590-7
●【ストレス関連疾患の合併症状】うつ病の除外診断と併存疾患(解説/特集)
Author:竹内 武昭
Source: 心身医学 (0385-0307)60巻1号 Page44-49(2020.01)
●Arukoru Kenkyuto Yakubutu Ison.1993 Jun;28(3):95-119
●ERに搬入された急性アルコール中毒患者の検討(原著論文)
Author:田中 拓
Source: 日本臨床救急医学会雑誌 (1345-0581)18巻4号 Page585-590(2015.08)
●急性アルコール中毒の臨床的特徴とエタノール血中濃度の推定(原著論文)
Author:上田 剛士
Source: 洛和会病院医学雑誌 (1341-1845)25巻 Page45-49(2014.08)
● Injured patients with very high blood alcohol concentrations.
Afshar M1
Injury. 2016 Jan;47(1):83-8. doi: 10.1016/j.injury.2015.10.063. Epub 2015 Oct 31.
PMID: 26556488
●「それって本当に急性アルコール中毒?」FBグループ三銃士 公開スライド
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