昨今のニュースにおいて一般の方でも聞いたことのある単語、『ECMO』
一見するとかなり複雑に思えますが一つずつ学んでいくと理解できてきます。
様々な文献や成書を参考にさせていただきながら、初学者にもできるだけわかりやすくを心がけて、今回は特にVA-ECMOに焦点を当てて作成しました。
医学生・研修医の方々にもオススメのスライドなので興味があれば是非ご一読を👇
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※今回の記事は普段よりお世話になっている、
アンター株式会社COOの西山様含め、
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以下、スライドの文章まとめです。URL等参考にしていただれば幸いです◎
1. VA-ECMO のまとめ 適応・導入・管理を中心に
2. 目次 1.ECMOとは?種類と比較 2.生理学 3.適応とカニュレーション 4.合併症を踏まえた管理
3. ECMO とは? ECMOの種類と比較
4. ECMO (Extracorporeal membrane oxygenation) ●体外式膜型人工肺のこと ●体外式生命維持装置の1つ ●治療ではなく、基礎疾患の 病態を修復するものではない
5. ECMOの種類 VV-ECMO 経皮的気管切開 VA-ECMO
6. VV-ECMO 外科的気管切開 経皮的気管切開 ●静脈から脱血・静脈に送血 ●呼吸機能を補助 ●自己心の機能を維持すること が重要 VV-ECMO
7. 経皮的気管切開 経皮的気管切開 VA-ECMO ●静脈から脱血・動脈に送血 ●心機能と呼吸機能を補助 ●心機能がある程度維持 されていれば、生体への 酸素運搬は自己心とECMOの 双方で行われる VA-ECMO
8. VV vs VA ECMO 経皮的気管切開 VV-ECMO ●VVECMOでは、リサーキユレーションが起きる ●VAECMOは心臓の代行 前負荷↓ 後負荷↑ 左室仕事量↑ 冠血流↓
9. ECMOの生理学 カニューレ選択・DO2の概念
10. 生理学から見た流量 ●通常は脱血量が送血量の規定因子に ●脱血管に影響を与える因子 患者側因子:循環血漿量、血液の粘性 装置側因子:脱血管カニューレ
11. Hagen-Poiseuilleの式 ●カニューレのサイズと流量の関係性を示す式 ●カニューレの太さ・長さが関与(特に太さ!)
12. Fr 数と流量の関係 ●脱血できる血液を増やすためには… 右房近傍にできるだけ近く 内筒の大きいカニューレを挿入
13. 酸素運搬量(DO2) ●DO2は体外循環血漿量・Hb濃度・酸素飽和度 (溶存酸素)に依存
14. 安静時 DO2とVO2の関係性 ●安静時のDO2は一般に酸素消費量(VO2)の4~5倍 ●DO2/VO2比が5:1の時 混合静脈血酸素飽和度(SvO2)が80%前後となる。
15. ECMO管理中 のDO2とVO2 ●DO2の低下(心拍出量低下や貧血) ⇒酸素摂取率が上昇(酸素解離曲線の右方偏移)し VO2は一定に保たれる。さらにDO2が低下し 臨界点に達するとVO2はDO2に依存して低下する。 DO2に依存してVO2が 低下する状況では 嫌気性代謝が行われる。 人工心肺での 臨界点
16. 流量とDO2から見た臓器灌流 ●体外循環の流量低下に伴うDO2の変化 内臓血流と筋肉血流は急激に減少 脳血流や腎血流は緩やかに減少
17. VA-ECMO 適応とカニュレーション
18. VA-ECMOの適応 ●VA-ECMOはあくまで一時的なつなぎである! 次の改善策あるいは回復までのブリッジ 【適応疾患】 心肺停止・心原性ショック・心筋梗塞・肺塞栓 劇症型心筋炎・偶発性低体温・中毒
19. ECPRの有効性 ●ECPR:ECMOを用いた心肺蘇生 ●CPR時間(CPR開始からECMO開始までの時間)が 30分未満 ⇒生存退院のオッズ比は1.9 Use of Extracorporeal Membrane Oxygenation for Adults in Cardiac Arrest (E-CPR) A Meta-Analysis of Observational Studies ASAIO J . Nov-Dec 2009;55(6):581-6. Marcelo G Cardarelli
20. VA-ECMOの導入 ●ACS症例の場合IABPの使用を考慮 ●IABPの役割 ①冠動脈の灌流圧の維持 ②左室後負荷の軽減効果 ●PCPS導入中の目標血圧 IABP挿入時:Augmentation圧 90mmHg以上 通常時:MAP 60mmHg以上
21. カテーテルの選択は? ●可能な限り太いものを使う! ※大腿A遠位の阻血には注意が必要
22. カテーテルの選択は? ●当院ではテルモシリーズのカテーテル ラジフォーカスガイドワイヤーを使用している
23. カニュレーション手順 ●可能な限り手術室で透視下で行うのが好ましい 以下はやむ負えずブラインドで実施する場合の手順 ①患者の両側鼠径部から大腿まで露出させる ②エコーで大腿動静脈の位置を同定する ③両側鼠径部を中心に広範囲に消毒する ④右大腿静脈と左大腿動脈より4Fr or 5Frの ショートシースを挿入し血ガスをチェックする
24. カニュレーション時の注意点 ●穿刺はできる限りエコーガイドで ●エコーにて大動脈と下大静脈にガイドワイヤーが あることを確認 ●血管確保が困難な場合、カットダウンなど 別の方法を検討
25. カニュレーション手順 ⑤シースにガイドワイヤーを挿入し、エコーで大動脈と 下大静脈にガイドワイヤーがあることを確認して シースを抜去。 ダイレーションを行い、カニューレを挿入し ペアンでクランプする。 ※ダイレーションのたびに、ガイドワイヤーの 抵抗確認。抵抗がある場合は、径の細い ダイレーターに変更 ※カニューレの挿入は一人で行うのは難しいので、 助手を準備しておく
26. カニュレーション手順 ⑥ヘパリン加生食でカニューレ内を満たしながらPCPSの 回路と接続。三方活栓にロック付きシリンジをつけ、 ペアンをデクランプしair抜きを行う。 ⑦PCPSを作動させる。Flowが取れている事を確認。 ※接続の前に必ず脱血側と送血側を声出し しながら確認(周りのスタッフと一緒に)
27. YOUTUBE ECMO Implantation in Cardiogenic Shock
VA-ECMOのカニュレーション 百聞は一見に如かず…
28. VA-ECMO 合併症を踏まえた管理
29. VA-ECMOの合併症 これらを回避する管理が大切 血栓 経皮的気管切開 出血 感染
30. VA-ECMOの合併症 これらを回避する管理が大切 経皮的気管切開 感染 ●血栓形成による合併症発生率は16% ●圧モニターの急な変化は 血栓の存在を疑う ⇒緊急時用にプライミングされた 新しい回路を準備する ●人の目による回路内血栓の観察も 大切である ●APR・抗Xa値を参考にして ヘパリン投与量調整(ACTも参考に) Sklar MC, Sy E, Lequier L, et al. Anticoagulation Practices during Venovenous Extracorporeal Membrane Oxygenation for Respiratory Failure. A Systematic Review. Ann Am Thorac Soc 2016; 13:2242. 血栓
31. VA-ECMOの合併症 これらを回避する管理が大切 経皮的気管切開 出血 感染 ●30~50%の確率で発生 ●手術部位の出血(19.0%) カニュレーション部位の出血(17.1%) が多い ●抗凝固薬の使用や血小板機能の低下による 【管理】 ECMO使用中の血小板数は5万以上 ECMO作動中は12 mg/dL以上 ※前述のCESARトライアルの管理プロトコールでは、 Hb>14g/dlとより高い基準が設定されており、 ELSOガイドラインでもそれに近い基準(Ht>40%)に Sklar MC, Sy E, Lequier L, et al. Anticoagulation Practices during Venovenous Extracorporeal Membrane Oxygenation for Respiratory Failure. A Systematic Review. Ann Am Thorac Soc 2016; 13:2242. Brodie D1, Bacchetta M. Extracorporeal membrane oxygenation for ARDS in adults. N Engl J Med. 2011 Nov 17;365(20):1905-14.
32. VA-ECMOの合併症 これらを回避する管理が大切 経皮的気管切開 感染 ●敗血症合併率は25%に達する ●監視培養や予防的抗菌薬投与を行う 有効性については現段階では不明 ●予防的抗菌薬投与はGPCを ターゲットとすることが多い。 ●ECMOにおいてはCRBSIの時の ような回路交換が困難 基本的には感染症に対しては 回路交換せず、抗菌薬投与継続 感染
33. VA-ECMOの回路 ●回路はできる限りシンプルに! ●カニューレ以外の構成要素 チューブ・血液ポンプ・人工肺・熱交換器
34. 構成要素 チューブ ●ほかの構成要素に結合される 血液の色調や血栓の評価のためチューブは透明に ●プライミングボリュームを減らすよう可能な限り短く
35. 構成要素 血液ポンプ ●近年は遠心ポンプが用いられる。 ●高速で回転する羽根車(インペラー)による 流体渦を発生させて駆動
36. 構成要素 血液ポンプ ポンプ流量と回転数についての注意事項 ●前負荷に依存し後負荷に影響を受けやすい ●回転数のみが血流の決定因子ではない! ●回路内の閉塞、閉塞性ショックでポンプの前負荷↓
37. 構成要素 人工肺 ●膜型人工肺で、安全で効率よくガス交換が行われる ●人工肺でのO2移動は以下の3つで規定される ①膜の表面積 ②スウィープガス中のO2の割合 ③血液が膜と接触している時間
38. ※ガス交換膜の血漿リーク ●長期の使用により徐々に膜の疎水性は失われ、 血漿リークを起こす。 ⇒ガス交換能が著しく低下し、 人工肺の交換が必要に
39. 構成要素 熱交換器 ●患者の体温管理に不可欠 ●ROSC後のTTM・高体温によるO2の消費低下 CO2の産生低下に寄与する
40. ECMO回路のモニタリング項目 圧モニタリング ●ポンプ前、人工肺前、人工肺後でモニタリング -60mmHgでの管理が理想的 陰圧が強すぎると溶血や遊離Hbの放出を増加 1 2 3
41. ECMO回路のモニタリング項目 動脈血液ガス分析(ABG)・採血所見(L/D) ●pO2・pCO2で人工肺の機能を経時的に評価 ●APTT等でヘパリンの調節、溶血が起きていないか
42. ABGの評価の際注意すべき点① mixing point ●大腿動脈からの逆行送血では、自己心の拍出量と ECMOの送血流量のバランスで、両者の混合する 位置(mixing point)が異なる 脳へ流れる血液を常に意識しておく!
43. ABGの評価の際注意すべき点② ABGは右橈骨動脈で評価 ●ABG右橈骨動脈の評価は、送血管から最も遠位 のから採取 ●自己心からの酸素化が不十分な血液が 脳や冠動脈に流れているかもしれない ●mixing pointを意識する 脳へ流れる血液を常に意識しておく!
44. ECMO回路のモニタリング項目 血流量 ●血流量は1.5L/min未満にはならないよう避ける ●血流の停滞や血栓の発生につながる
45. ECMO回路のモニタリング項目 血流量 ●血流量は1.5L/min未満にはならないよう避ける ●血流の停滞や血栓の発生につながる 低流量アラームの原因 ①ポンプ前負荷の低下 脱血不良。大量出血や炎症による血管漏出? ②ポンプ後負荷の上昇 患者の高血圧、送血ラインのキンク、人工肺での血栓? ③ポンプ機能不全 ポンプヘッドに混入した空気がそのまま トラップされている?
46. スタッフによる観察も大切です ●送血・脱血の血液の色 ●血栓形成はペンライトでのチューブや 人工肺を定期的にチェックすることで見つかることも ●全ての接続部を確実に評価
47. VA-ECMO 適切な離脱時期は?
48. VA-ECMOの離脱 ●一定の確立された基準は存在しない… ●SAVE-Jガイドライン 『流量を1.0L/minまで減量し、心機能、循環不全の 指標に問題がなければon-offテストで評価し離脱する』
49. ON-OFF Test ●一時的に血流量を止めて、循環状態を確認する行為 ●回路が凝固してしまう可能性あり。 抗凝固剤の追加投与によりAPRの延長を確認をしてから 血流量を止めると安全。 ●血流量は、送血側をクランプして流量を0L/minに ※回転数を0rpmにしただけでは、逆流することも
50. 参考文献・資料 ●INTENSIVIST Vol.5 No.2 2013 (特集:ECMO) 2013/4/17 讃井將満 ●ECMO実践ハンドブック〜世界標準の成人ECMO管理 2020/2/10 Alain Vuylsteke ●SAVE-J ガイドライン ●ELSO Guideline ver1.3 ●東京医科大学八王子医療センター 救急救命センター HP
●ECMO管理を含めた重症患者管理について学びたい方はコチラ👇