人間の体温と心拍数の関係についてご存知でしょうか。
風邪をひいて熱が出た時を思い出してみてください。自分で脈を触れると脈拍(PR)が早くなっているのは誰もが経験することでしょう。
この時、PRが100-110台なら、熱のせいなのだろうと納得することが出来るでしょう。
一方もしPRが180台であったらどうでしょう?
そうなんです、体温が高いからといってここまで脈が速くなることはきっとないでしょう。体温と心拍数には相関があるんですね。
今回は体温が高い患者さんを診察しているときに、
脈が速くなっているのが果たして体温のせいなのか、それとも他の要因があるのかについてまとめたいと思います。
バイタルサインの解釈に役立つ知識だと思いますので、興味がある方は是非ご一読ください。
1.なぜ体温が上がると頻脈になるのか
●発熱に伴う交感神経の亢進で洞結節からの心拍をする命令が増えることで洞性頻脈となる
●発熱に伴う体内の酸素需要が増加することにも起因
※ここでの頻脈とは、頻脈性不整脈の話ではなく洞性頻脈について取り扱いたいと思います。
洞性頻脈は、正常では洞結節から1分間に50~100回のペースで脈を打つよう命令が出ています。
この命令が100回以上になったものを洞性頻脈といいます。
頻脈になるということは、体内の酸素需要が増加するなど全身にたくさん血液を送らなければいけない状態にあるということです。したがって、洞性頻脈を見たら、原因が何かを調べることが大切です。
例えば、交感神経やカテコラミン放出が生理的に亢進している状態、あるいは副交感神経系が抑制されている状態での正常な生理的反応であるといえます。以下のような他の要因が原因となる場合があります。
熱・血管内脱水・ショック・敗血症・貧血・低酸素・肺塞栓症
急性冠動脈虚血・痛み・不安・睡眠不足・褐色細胞腫・甲状腺機能亢進症
代償性心不全・慢性肺疾患
覚せい剤(ニコチン、カフェイン、アンフェタミン)、抗コリン剤、β遮断薬の離脱、違法薬物への暴露
ベータブロッカーなどの薬の離脱症状
引用:Sinus tachycardia: Evaluation and management Author:Munther K Homoud, MD UpToDate
すなわち、発熱に伴う交感神経の亢進で洞性頻脈となるのですね。
2.体温が1℃上がると脈拍はどれだけ増える?
体温と心拍の相関 BT が 0.55 度上がると HR は10/min上がる。
① BT-36.5=⊿BT(℃)
② HR-正常 HR 上限(60~85 回/min※年齢によって異なる )=⊿HR
③ ⊿HR=(⊿BT(℃)÷0.55)×10 回/分(摂氏では左記)
④ 6 0+ΔHR<実測 HR<85+ΔHR=FPA※
HR<60+ΔHR 又は>85+ΔHR=FPD※FPA=Fever Pulse Association(発熱と心拍数の相関が適切)
FPD=Fever Pulse Dissociation(発熱と心拍数の相関が不適切)引用:
呼吸 28 巻第 10 号 1051-1053;生命徴候の臨床的意義 宮城征四郎)
Sapira’S Art&Science of Bedside Diagnosis 118R
Clinical Physiology of Vital Signs バイタルサインの生理学的解釈法
上記が有名な発熱と頻脈についての相関を示した公式です。
洞性頻脈の患者さんが発熱を伴う場合、上記の公式が当てはまらなければ、
ただの発熱ではないとまず判断することが大切です(Fever Pulse Dissociation。比較的徐脈または比較的頻脈)
上限を超えた場合、最初に疑うべき原因は何でしょう?そう、敗血症ですね。
一方下限をおおきく超えた場合疑うべきは、比較的徐脈です。
比較的徐脈について深く学びたい方はコチラをチェック👇
3.参考ページ・医学ノート
洞性頻脈についてより深く学びたい方はコチラ👇
https://dancing-doctor.com/2020/08/24/ecg-resident/
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