重症化、難治性のマイコプラズマ肺炎を意識できていますか?
また、マイコプラズマに特徴的な検査について十分理解していますか?
今回は、市中肺炎の中でも出会う頻度の高い、マイコプラズマ肺炎についてまとめました。
予後が比較的良い疾患であるだけに、合併症や重症化には注意が必要です。
1.ポイント
●市中肺炎の代表的な原因微生物のひとつ
●予後は良い傾向がある一方で、免疫応答に関連した合併症や一部の重症化に注意が必要
●治療第一選択はマクロライド系だが、耐性化に注意が必要
2.疫学
●市中において発症する呼吸器感染症の主要な病原細菌の1つで幼児期から学童期に多く見られる。
●菌の分離にはPPLO培地が用いられる。近年は迅速診断キットやPCR法が開発され、早期の初期診断が可能となった.
●比較的予後の良好な疾患であるが、合併症を伴う
重症化の頻度は3-5%と決して低くはない.
●市中肺炎の主な原因微生物のひとつ
肺炎球菌、インフルエンザ菌、モラキセラ、マイコプラズマ、クラミドフィラ、レジオネラ
●非定型肺炎は、市中肺炎の約 15%程度を占める
3.症状
緩徐に発症する微熱・乾性咳嗽・感冒症状で発症
非定型肺炎の特徴を意識した症状に注意すべし
1)60歳未満である
2)頑固な咳がある ※嗄声にも注意
3)比較的徐脈がある (近年ガイドラインからは削除) 「比較的徐脈がみられる」の項目は,レジオネラ肺炎やオウム病では感度が高いが、他の非定型肺炎では低い
4)胸部身体所見に乏しい
胸部身体所見は画像所見と密接に関連する。肺炎マイコプラズマの病変の場は線毛を有する上皮細胞
4.注意すべき合併症
●ARDS、溶血性貧血、Guillain-Barré症候群、間質性肺炎など免疫過剰反応によるものが多い
●多形紅斑、SJS(全身の10%未満)、TEN(全身の10%以上)
皮膚・粘膜や眼に,炎症,びらん,発疹が生じる。
薬剤(抗痙攣薬、抗菌薬、非ステロイド性抗炎症薬など)が原因であることが多いが、マイコプラズマや麻疹の予防接種後などでも起こりうる。
6.検査
●マイコプラズマLAMP法
発症早期でも診断可能で、感度および特異度も高い。
咽頭ぬぐい液か喀痰で検査を提出する。結果が出るのに数日かかる。
●抗体検査(PA 法または CF 法:ペア血清が望ましい)
PA 法:シングル血清 320 倍 or ペア血清で4 倍以上の抗体価上昇
CF 法:シングル血清 64 倍 or ペア血清で 4 倍以上の抗体価上昇 ※ペア血清は 2-4 週あけて採取する
8.治療
●マイコプラズマ肺炎を疑う場合
アジスロマイシン500mg/day×3日
ドキシサイクリンを使用する場合には、治療期間が14 日と長いことに注意。妊婦、小児はできれば使用を避ける。
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※近年, 小児を中心としてマクロライド耐性マイコプラズマ(MRMP)感染が増加している。MRMPによる肺炎は有熱期間が優位に長く、咳嗽等の臨床症状も遷延していたと報告されている。
マクロライド系が使えないときはドキシサイクリン 100mg×2/day(7-14 日間)
●マイコプラズマ肺炎の重症化
⇒マクロライド系抗菌薬、ミノサイクリン系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌薬にステロイド併用
※カルバペネムでカバーできない微生物のひとつ!
他には、MRSA 腸球菌 C.difficile VRE Corynebacterium クラミドフィラ リケッチア S. multophilia(第一選択はST合剤) Metallo産生GNR B.cepacia
9.引用、参考文献
IASR Vol.28 p 33-35:2007年2月号引用
Intern Med 2013;52:317-324
第114回日本内科学会講演会 超世代の内科学―GeneralityとSpecialtyの先へ―
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