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【レビュー】『こういうことだったのか!!DIC』【ある集中治療医の選択】

DIC治療薬が多すぎて使い分けが難しい…そもそも、どうして日本にこれほどのDIC治療薬が存在するのだろうか…?

数あるDIC診断基準の使い分けはどうすればいいのだろうか…?

DIC診療について悩むことは非常に多いです。私自身、この悩みを解消しようとして様々な本を読んでみましたが、なかなかすっきりと理解することができずにいました。

救急科専攻として私自身、「DICは原疾患の治療だけでいい」とこれまで指導されてきましたが、「果たしてそれは本当なのか?」という疑問がありました。

ですが、セミクローズICUで勤務する中で、日々DIC疑いとして治療薬を投与されている他科患者さんへの治療が真に妥当なのかを知りたかったのです。

そのため、本書の魅力的なタイトルに引き寄せられ、DICを原理から理解することで、自分の納得のいく治療方法を選択することができるのではないかという思いから、本書を手に取りました。

結果、自分なりにDIC診療のスタンダードが作られてきた日本の歴史を知ることができ、非常に満足しております。

本書を読むことで、多岐にわたるDIC治療薬を、それぞれの作用機序や、「適応となるタイミングはいつなのか」などの基本的な事項から、「TATやPICを用いたDICの病型分類の考え方」などのある程度理解が必要となってくる事項まで、理解しながら読み進めることができます。

今後DIC疑い・DICと診断された患者さんに出会ったとしても、自信を持って治療方法を選択し、対応するための道しるべになること間違いなしです👇

これからご覧いただく医学書レビューは、

これまで研修医時代に100冊以上の医学書を読み

その中でもオススメの医学書のレビューを月5冊以上書いている

ある救急科専攻医のレビューです。

医学生や研修医、各分野の初学者の気持ちが痛いほどわかるので、

是非この一冊を手に取ってみたいと思っていただけるようなレビューを心がけています!

1.本書のターゲット層と読了時間

【ターゲット層】

ERやICUで、DICという言葉に振り回された経験があるすべての医師

主に専攻医以上向け

【推定読了期間】

10-12時間程度

2.本書の特徴

本書は、説明しづらい事柄を,軽妙な語り口で分かりやすく伝えることに定評のある、小尾口 邦彦 先生が執筆された、

【本書の特徴】

アンチトロンビン、プロテインCといったDIC治療薬としてこれまで登場してきた薬剤が、時代と共にどのようにエビデンスを積み上げてきたのかを、様々な文献から知ることができる

DICの診断基準や、そもそも真にDICなのかなど、DIC診療や治療のエビデンスのみでなく臨床的な感覚も学ぶことができる

のが特徴の一冊です。

本書を読むことで学べる項目は特徴的なものをピックアップすると、以下のようになります👇

【本書で学べること】

種々のDICの基本的な概念や治療方法

DIC診断基準や鑑別疾患について

DIC治療薬の歴史・海外と国内との乖離について

これらの事項はDICについて基本的で、網羅的な知識を得たいと思う先生方にとっては必須の知識となるでしょう。

一度DICについて広く学ぶ機会を持つことは、今後DICと接する機会のある医師にとって大切かと思います。

3.個人的総評

 

【評価】

必要性:

本の薄さ:

わかりやすさ:

面白さ:

継続使用度:

オススメ度:

※Amazon評価:

本書の特徴はなんと言っても、“DICについて、治療法からその仕組みまで、基礎から広く学べる”という点だと思います。

以下では、私自身の経験上ためになったと思う項目を紹介してみます。

1.DICの治療薬について

例えばアンチトロンビンやプロテインCなど、作用機序がうろ覚えであった治療薬について、“その薬剤が働く仕組み”がしっかりと基本から解説されているため、わかりやすく理解することができます。

またTFPIなど、そもそも私自身よく知らなかった治療薬についても、「なぜ注目されたのか」「どのような理論で治療薬として期待されてきたのか」など“なぜ”を基本に薬剤について学ぶことができました。

 

2.DICとは何か、数あるDICの分類や機序

例えば、“DICと鑑別すべき凝固異常の考え方”や、“ICUでの血小板減少のアプローチについて”は、これまで読んできたどの文献や参考書よりもかなりわかりやすく解説されていました。

その他、私自身の経験として「DIC治療薬のprimary endpointをDICからの離脱率としてよいか」ということはよく勉強会や上司との議論で登場していましたが、この問題についての背景知識や思考回路を身に着けることができました。

また、治療薬の開発経緯の話では、“エビデンスを積み上げていくにあたり大切な、治験がいかに手間と時間を要する壮大なプロジェクトであるのか”も知ることができて面白かったです。

 

3.日本と海外のDIC治療の乖離

例えば、“DVT予防に対するヘパリンの使用感覚の違い”など、臨床感覚の違いについても学ぶことができます。

そして日本のDIC治療薬の開発の過程が、どれくらい海外のスタンダードとは異なる成長を遂げていったのかを知ることができるのです。

個人的には、大河ドラマを見ているかの如く壮大で、様々な登場人物の思惑が交差したストーリーでとても面白かったです…笑

 

一方で、あくまで個人的な印象ではありますが気になった点としては、これまでの、“そういうことだったのかシリーズ”と同じ感覚で手に取ると、かなりとっつきにくく感じるかもしれないということです。

今までの経験で、ある程度のDIC疾患についての知識や、DIC治療薬を使用されている患者さんの臨床経過を知っている前提で無ければ、かなり理解が難しいかと思いました。

特に、論文の批判的吟味や統計学的知識を持っていることが前提で進むため、論文の読み方についての理解が不十分な先生方にとっては(私を含めてですが…)少し難しく感じることと。

(もちろん、統計学や論文の批判的吟味に必要な知識を解説してくださっているページが後半にまとまっているので、そこへ先に目を通していただければと思います。)

これらは本書の個人的な評価であり、しかも何様だよと言われてしまうことは重々承知ではありますが、自分は

本書は“DICについて、根拠を持ち理解して治療をおこなうための知識を身に着けるための第一歩となる一冊”である!

と感じました。

4.おすすめの使い方・読み進め方

個人的におすすめの使い方をご紹介します。

著者個人の意見としては、

まず、本書では統計学や論文の批判的吟味に必要な知識があることが前提となっているため、そこに不安がある方はまずはp194から読んで、最低限の統計知識をおさらいしてから本書に取り掛かることをおすすめします。

まず総論的にDICを学びたい場合は、p126の診断基準について以降を先にざっと読んでみると良いです。

というのも、初めから読み進めていこうとすると、アンチトロンビンやプロテインCといった、DICにおける治療薬(いわゆる各論)が展開されていくことになるからです。

その後先生方が臨床において、

・アンチトロンビンが使用されている事例など、DIC治療薬が用いられている症例を経験した時や、

・患者さんの凝固異常で悩んでいる時

に何度も、本書を辞書のように参照して復習することにより、DICについての理解がだんだんと深まってゆくかと思います。

現に、私自身、血小板減少の症例を経験した際に改めてこの書籍を読むと理解が深まったという経験がありました。

まとめると、

①まずはDICの総論を学ぶ

②次に、実際にDICに出会った際に、その症例を復習する

という様に学んでいくことがおすすめです。

実際の症例を通じて、インプットとアウトプットをたくさん経験していきましょう。

【本書のおすすめの読み方・活用方法】

・まずはDICの総論を学ぶ

・実際にDICに出会った際に、本書でその症例を参照する

・その後は経験した症例の前後で読み直して復習!

5.まとめ

【本書のまとめ】

本書は“ERやICUで、DICという言葉に振り回された経験があるすべての医師(主に専攻医以上)”にとって必須の参考書の一つである!  

本書はDICについて、根拠を持ち理解して治療をおこなうための第一歩となる一冊である!

まとめると、本書はDICについて基礎から仕組みまで幅広く学ぶことができる、本当におすすめの一冊です。

この一冊を通じて学ぶことで、

今後DIC疑い・DICと診断された患者さんに出会ったとしても、自信を持って治療方法を選択し、対応することができます!

今後の業務をより良いものにしたい方には是非手にとっていただきたい一冊です◎

 

以下に要点や基本事項をまとめましたので、

購入する際には是非参考にしていただければ幸いです👇

 

【基本情報】

タイトル:こういうことだったのか!! DIC ある集中治療医の解釈

著者:小尾口 邦彦

出版社:中外医学社

発行年月日:2022/02/17

【ターゲット層

ERやICUで、DICという言葉に振り回された経験があるすべての医師

主に専攻医以上向け

【本書の種類】

通読系・目次系

【推定読了期間

10−12時間程度

【本書の特徴】

  • アンチトロンビン、プロテインCといったDIC治療薬としてこれまで登場してきた薬剤が、時代と共にどのようにエビデンスを積み上げてきたのかを、様々な文献から知ることができる
  • DICの診断基準や、そもそも真にDICなのかなど、DIC診療や治療のエビデンスのみでなく臨床的な感覚も学ぶことができる

【本書で学べること】

  • 種々のDICの基本的な概念や治療方法
  • DIC診断基準や鑑別疾患について
  • DIC治療薬の歴史・海外と国内との乖離について

【評価】

必要性:

本の薄さ:

わかりやすさ:

面白さ:

継続使用度:

オススメ度:

※Amazon評価:

【本書のおすすめの読み方・活用方法】

  • まずはDICの総論を学ぶ
  • 実際にDICに出会った際に、本書でその症例を参照する
  • その後は経験した症例の前後で読み直して復習!

【本書のまとめ】

本書はDICについて、根拠を持ち理解して治療をおこなうための第一歩となる一冊である!

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