このY字に切れた傷、どんなふうに縫合したらいいんだろう…
かなり傷が深い…真皮縫合したほうがいいのか、ペンローズドレーンも入れたほうがいい…?
耳介がパックリ切れていて血腫での腫れもひどいな…耳介血腫は気をつけることが多かった気がするけど、何を気をつけたらいいんだっけ…?
傷の縫合というのは、初期研修医が真っ先にマスターしたいと感じる、ニーズの高い手技です。
一方、救急医としての勤務の中で、創傷治療や縫合は教育するのが難しいもののひとつであると常々感じます。
私自身、救急科や整形外科として勤務し、救急外来で縫合の機会があれば研修医の先生方と一緒に対応することが多いのですが、そのニーズが高い割に体系だった教育方法や勉強方法がないのではないでしょうか。
傷の縫合について研修医の先生と一緒に経験しながら学んでいくのは難しいなと感じている日々の中で、このたび素敵な書籍をメジカルビュー社様より贈呈いただきました。
付録の動画も含め一通り通読しましたが改めて勉強なったこともたくさんあり、自分自身が試してみたいと思えることもたくさんありました。
本書を読むことで
今後の創傷に関する教育がとても効率的になるので、多くの時間と心の余裕が得られます!
また、初期研修医の先生方は、縫合についての基礎をあらゆる角度から学ぶことができ、自信をもって縫合ができるようになります!
今回傷の縫合に関して知っておくべき解剖の知識から基本的な手技操作、そして思考回路がすべて網羅されている最高の一冊として自分が自信をもっておすすめするのがこちらです👇
これからご覧いただく医学書レビューは、
これまで研修医時代に100冊以上の医学書を読み、
その中でもオススメの医学書のレビューを月5冊以上書いている
ある救急科専攻医のレビューです。
医学生や研修医、各分野の初学者の気持ちが痛いほどわかるので、
是非この一冊を手に取ってみたいと思っていただけるようなレビューを心がけています!
1.本書のターゲット層と読了時間
【ターゲット層】
縫合処置がうまくなりたい研修医、若手医師、外科系専攻医
【推定読了期間】
6-7時間程度
です。
2.本書の特徴
本書は、志賀 隆 先生が監修され、井上 哲也 先生が編集および執筆された
【本書の特徴】
●「ERではこうする」というセッティングのもと、実践しやすい知識やtipsが盛り沢山
●著者の自分の体験談に基づく情報を集約
が特徴の一冊です。
本書を読むことで学べる項目は特徴的なものをピックアップすると、このようになります👇
【本書で学べること】
●傷の縫合に関して知っておくべき解剖の知識から基本的な手技操作
●個別性の高いそれぞれの傷に対する処置方法と注意点
これらは縫合処置がうまくなりたい全ての先生方にとっては学んでおくべき大切な事項であると思います。
3.個人的総評
【評価】
必要性:
本の薄さ:
わかりやすさ:
面白さ:
継続使用度:
オススメ度:
※Amazon評価:
本書の特徴はなんと言っても、傷の縫合に必要なイロハを一通り学ぶことができる点でしょう。
そして、「こんな本に研修医の時に出会いたかった」それに尽きる一冊だと感じました。
傷の縫合に関して知っておくべき解剖の知識から基本的な手技操作、そして個別性の高い傷に対する対応をどのように考えるかという思考回路がすべて網羅されている一冊です。
私自身は、外科系について勉強してきた動画や書籍を、バラバラでそれぞれの良いところを自分なりに取り入れていました。
しかし、この一冊があれば救急外来での縫合で困ることがなくなる…そんな勉強の効率を上げてくれる一冊だと感じます。
もちろん本を一度読んだからと言って、すべての縫合がうまくできるようになるわけではありません。
この書籍でも掲載されていますが、ER physicianは傷の縫合について自分がここまでならできるという裁量をメタ認知しておき、どんな損傷があれば緊急で専門科を呼ばないといけないのかということを知っておくというのがポイントだと思います。
これは救急診療においてもすごく大事なポイントであり、「どのタイミングで緊急で専門科を呼ばないといけないか」を把握しておき、決して一人で治療や合併症の対応まで深追いしないというのは、とても大切なマインドだと思います。
その一方で、「自分がどこまでできるのか」という裁量を増やして行くのが救急診療の勉強のやりがいがあるところですよね。
この書籍から、こういった救急のマインドが随所に感じられ、”さすがは普段から救急外来を主戦場として活躍されている外科系の先生が執筆されている書籍”という事を痛感させられる一冊でした。
そして、ERではこうするというセッティングが徹底されているため、実践しやすい知識やtipsが盛り沢山です。
手縫いはもちろん器械縫合など、基本となるスキルがそれぞれ細かく動画も掲載されています。
まずは基本を学び、その後に個別性の高いそれぞれの傷(Y字の傷、ジグザグの傷など)をどのように縫合するか、そして傷が部分ごとに処置方法と注意点を学べる構成となっています。
例えば、耳を怪我している場合の血腫や処置方法は、どのようなことに気をつければよいのか…
また口唇が切れている場合は、どのように対処すればよいのか…
ということが実例をベースにわかりやすく、写真なども豊富に解説されています。
一方、これはどんな外科系の書籍でもぶち当たる問題だと思いますが、この書籍でも推奨されている治療法や局所麻酔の方法というものが、”どれだけエビデンスのあるものか”ということは実証しようがないというのが少し課題ではあると思います。
どのように注意を払い、どんな方法について考えるかということは、総論的な内容については教科書などである程度まとまってはいますが、具体性の高い処置の是非を検証したエビデンスが乏しいものも多いのが実情です。
経験から学ぶ外科系については、これらの方法が最良であるかは確定できることではないということを念頭に置き、どんなに優れた書籍であっても盲信してはいけないということに気をつけていただければと思います。
この点については少しだけ配慮した上で一度手にとっていただければと思いました。
これらは本書の個人的な評価であり、しかも何様だよと言われてしまうことは重々承知ではありますが、自分は
本書は傷の縫合に関して知っておくべき解剖の知識から基本的な手技操作、そして思考回路がすべて網羅されている最高の一冊である!
と感じました。
4.おすすめの使い方・読み進め方
【本書のおすすめの読み方・活用方法】
●これまで悩んだ診療を思い出しながらまず通読!
●学んだ知識を元に、フォローアップで経過を観察する!
●その後は経験した症例の前後で読み直して復習!
個人的におすすめの使い方をご紹介します。
著者個人の意見としては、まず本書を通読することで、傷の縫合に関して知識武装をすることです。
本書でも述べられているように、傷の縫合について最も効果的な勉強法は、実際に傷の経過を追うことだと思います。これには私も全面的に同意です。
例えば、傷の経過の中には「どのタイミングでドレーンを抜くのか」「どのタイミングで合併症が発生するのか」また「感染の兆候があった場合は、どのタイミングで再度ドレナージを行うのか」など、考えるべきことは多岐に渡ります。
一方で、初期研修医の間はそのような経験がなかなかできないかもしれません。
そのため、まずはこの本を通じて方法の知識を学んでおき、縫合のチャンスを逃さないようにすることが大切だと思います。
知識を持っておくことで、「縫合してみる?」と上級医に言われたら自信を持って手を挙げられるようになりましょう。
その上で、もし患者さんをフォローアップする機会があれば、上級医の先生に自分をコールしてもらったり、その傷の状態を写真で撮って送ってほしいとお願いするのはとても良いことだと思います。
私自身、初期研修時代には幸いにも救急外来で創部のフォローアップをさせてもらうことができる環境でした。
今でも、自分で縫合した後には、後日自分でできる限りフォローアップを行うことを続けています。
顔面挫創など専門的なフォローアップが必要なものについては、隣で外来をしている同期の形成外科の友人に、処置のタイミングで呼んでもらったり、経過の写真を見せてもらいつつ適宜アドバイスを受けています。
このように、自分の行動をフィードバックできる機会を持続的に持つことが何よりの学びになると思いますので、この本をベースに学んだ上でぜひ自分でフィードバックを行う経験をしてもらいたいと思います。
そのあとは実際の症例を通じてインプットとアウトプットをたくさん経験していきましょう。
5.まとめ
【本書のまとめ】
本書は外科系の縫合に関して知っておくべき解剖の知識から基本的な手技操作、そして思考回路がすべて網羅されている最高の一冊である!
まとめると、本書は傷の縫合について、わかりやすく学ぶことができる研修医、若手医師、外科系専攻医には本当におすすめの一冊です。
この一冊を通じて学ぶことで、
今後の創傷に関する教育がとても効率的になるので、多くの時間と心の余裕が得られます!
今後の学びや業務をより良いものにしたい方には是非手にとっていただきたい一冊です◎
以下に要点や基本事項をまとめましたので、
購入する際には是非参考にしていただければ幸いです👇
【基本情報】
タイトル:キズの治療はリズムとテンポ! ER創傷の基本手技
監修:志賀 隆
編著:井上 哲也
出版社:メジカルビュー社
発行年月日:2024年4月
ターゲット層は、
縫合処置がうまくなりたい研修医、若手医師、外科系専攻医
推定読了期間は
6-7時間程度
【本書の特徴】
●「ERではこうする」というセッティングのもと、実践しやすい知識やtipsが盛り沢山
●著者の自分の体験談に基づく情報を集約
【本書で学べること】
●傷の縫合に関して知っておくべき解剖の知識から基本的な手技操作
●個別性の高いそれぞれの傷に対する処置方法と注意点
【評価】
必要性:
本の薄さ:
わかりやすさ:
面白さ:
継続使用度:
オススメ度:
※Amazon評価:
【本書のおすすめの読み方・活用方法】
●これまで悩んだ診療を思い出しながらまず通読!
●学んだ知識を元に、フォローアップで経過を観察する!
●その後は経験した症例の前後で読み直して復習!
【本書のまとめ】
傷の縫合に関して知っておくべき解剖の知識から基本的な手技操作、そして思考回路がすべて網羅されている最高の一冊である!
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