救急外来で来院された患者さんのうち、どんな症状があれば中毒を疑うべきだろうか…?
トライエージで陽性だったら、急性薬物中毒だと断定していいのか…?
これらは日々ERやICUで中毒症状の患者と対応する中で感じる悩みや疑問点です。
私自身もこの悩みを解消しようとして様々な本を読み漁っていたところ、この一冊に出会いました。
本書を読むことで、中毒症状への対応の時に自信を持って治療に取り組むのに必要な知識である、“臨床中毒診療に必要なエッセンス”を学ぶことができます。
まず、本書を読むことになったきっかけですが、それは私自身の中毒症状への対応経験の少なさからくる力不足を感じたことにあります。
私は研修医や専攻医なりたての頃、「眠剤系の急性薬物中毒が来たら、まずはABCを安定させること。できたら寝かせておいて、専門の精神科の診察を待てばいいだろう」と、画一的な中毒診療を行っていました。
そんな中、時折経験するアスピリン中毒やカフェイン中毒といった、しっかりモニタリングしつつ治療介入をしなければならない症例に出会いました。
そして、画一的な中毒診療をしていた私は、とても慌てることになったのでした。
そのような経験から、“どんな薬剤の加療内服で来院された場合も、焦らず対応できる思考回路を身に着けたい”という思いがあり、本書を読んでみることにしました。
タイトルはもちろん、表紙もかわいいので手に取ってみたくなりますよね◎
今回は、中毒診療について体系的に学びたい時に自分が自信をもっておすすめする、“まず読むべき一冊”として本書を紹介させていただきます。
これからご覧いただく医学書レビューは、
これまで研修医時代に100冊以上の医学書を読み、
その中でもオススメの医学書のレビューを月5冊以上書いている
ある救急科専攻医のレビューです。
医学生や研修医、各分野の初学者の気持ちが痛いほどわかるので、
是非この一冊を手に取ってみたいと思っていただけるようなレビューを心がけています!
1.本書のターゲット層と読了時間
【ターゲット層】
・中毒診療に苦手意識を持つ救急科専攻医
・勤務する施設で中毒を経験することが少なく、中毒診療について体系的に学びたいと考えている初期研修医
【推定読了期間】
4-5時間程度
2.本書の特徴
本書は、千葉 拓世先生が執筆された本で、個人的には以下のような特徴があると感じました。
【本書の特徴】
- 中毒診療において最低限覚えておくべき項目をミニマムにまとめている
- ポイントを単なる暗記ではなく、薬物動態と病態生理に基づいて理解できる
- それぞれのルールの解説の最後には、infographic tool が作成されており、それぞれのルールを視覚的に総復習することができる
本書を読むことで学べる項目は、特徴的なものをピックアップすると、このようになります👇
【本書で学べること】
- 中毒診療の現場で実施されることが多い、尿検査・血液検査・心電図検査の立ち位置や確認事項
- 急性薬物中毒の際のチャネルイオンなどの、生理学的な機序
- 中毒診療に対する、具体的な治療方針や思考回路
これらは救急科専攻医の先生方にとっては、救急対応をしていく上で中毒症状を詳しく知っておく必要があるため、大切な事項であると思います。
中毒診療について体系的に学びたいと考えている初期研修医の方にも、中毒症状の起こる機序についての解説があることから、“中毒症状の理解“に関してとても役立つ書籍だと感じました。
中毒診療の導入としてはこちらの一冊もオススメです👇
3.個人的総評
【評価】
必要性:
本の薄さ:
わかりやすさ:
面白さ:
継続使用度:
オススメ度:
※Amazon評価:
本書の特徴はなんと言っても、薬物動態と病態生理に基づいて中毒診療を理解できるという点でしょう。
例えば、「なぜ薬物加療内服によって心電図異常をきたすのか」ということをチャネルの仕組みに遡って解説してくださっています。
そのため、「だからこの機序で働く薬が有効である」という様に拮抗薬についても理解することができ、単なる1対1対応の暗記による中毒診療から脱することができます。
また、本書を“まず読むべき一冊”としておすすめする理由は、確認するべき事項や必要な知識を、具体的に羅列しているからです。
例えば中毒診療における心電図といえばとりあえずQT延長がないかを見る、尿検査はとりあえずトライエージの所見をプレゼンしておけばいいと思ってしまいがちですが、それだけでは不十分なのです。
その他、「アルコール中毒の際に算出する浸透圧の式は、エタノールの分子量46を用いた4.6で割り算するのではなく、3.7で計算した方がより正確である」という浸透圧ギャップの項は目からうろこでした。
このように、実臨床では実際どう解釈するか、最低限覚えておくべき項目はなにかをミニマムにまとめてくれています。
その一方で、中毒診療における基本的な概念や生理学については、わかりやすく深堀りしてくれています。
覚えておくべき項目と、理解しやすい説明が組み合わさった本書だからこそ、中毒診療を学ぶ際に“初めの一冊に最適”とおすすめできるのです。
私自身、ここまで具体的な治療方針や思考回路を掲示してもらえると「中毒診療がおもしろい!」と感じることができました。
さらに、本書を読み終えた後は早く中毒症例を経験したいと思う様になりました。
これらは本書の個人的な評価ではありますが、自分は
本書は、中毒診療に日常的に従事する医師は必ず読むべき一冊である!
と感じました。
4.おすすめの使い方・読み進め方
【本書のおすすめの読み方・活用方法】
- 導入編の“実践ルール”2つを読む
- 診療編・治療編・原因物質編などその他の“実践ルール”を確認
- その後は経験した症例の前後で読み直して復習!
個人的におすすめの使い方をご紹介します。
著者個人の意見としては、
まずは、導入の2つの実践ルールを読んで中毒診療の全体像をつかみましょう。
これら2つのルールに登場する中毒診療の内容の中でも特に気になるものから順に読み進めていくと、飽きずに読み進めることができるかと思います。
本書はその後、診療編、治療編、原因物質編と進んでいきます。
ここからは実臨床で経験したことのある状況や、疑問に思ったことのある項目を少しずつ読んでいくと、理解が進みやすいのではないでしょうか。
もちろん、本書全体でも4-5時間で通読することができるので、時間があるときは一気に読み進めるのもオススメです。
一度読み終えた後は、infographic toolなどのコラムを参考に、実臨床で症例を経験するたびにインプットとアウトプットを繰り返すことで復習をしましょう。
何度も復習をすることで、実践で使える自分の知識として身についていくと思います。
5.まとめ
【本書のまとめ】
本書は中毒診療を学ぶ救急専攻医・研修医にとって必須の参考書の一つである!
本書は中毒診療に日常的に従事する医師は必ず読むべき一冊である!
まとめると、本書は中毒診療について、“中毒症状を引き起こす機序から現場で必要な知識まで一通り“を学ぶことができ、中毒診療を体系的に学ぶには本当におすすめの一冊です。
この一冊を通じて学ぶことで、今後中毒症状の患者さんに出会ったとしても自信を持って対応することができるようになるでしょう。
以下に要点や基本事項をまとめましたので、購入する際には是非参考にしていただければ幸いです👇
【基本情報】
タイトル:急性中毒診療実践ルール16 当直・ER・ICUで役立つハーバード式クリニカルパール
著者:千葉 拓世
出版社:MEDICAL VIEW社
発行年月日:2022/2/21
【ターゲット層】
・中毒診療に苦手意識を持つ救急科専攻医
・勤務する施設で中毒を経験することが少なく、中毒診療について体系的に学びたいと考えている初期研修医
【本書の種類】
通読系・目次系
【推定読了期間】
4-5時間程度
【本書の特徴】
- 最低限覚えておくべき項目はなにかをミニマムにまとめている
- 単なる暗記ではなく、薬物動態と病態生理に基づいて理解できる
- それぞれのルールの解説の最後には、infographic tool が作成されており、それぞれのルールを視覚的に総復習することができる
【本書で学べること】
- 中毒診療の現場で実施されることが多い、尿検査・血液検査・心電図検査の立ち位置や確認事項
- 急性薬物中毒の際のチャネルイオンなどの、生理学的な機序
- 中毒診療に対する、具体的な治療方針や思考回路
【評価】
必要性:
本の薄さ:
わかりやすさ:
面白さ:
継続使用度:
オススメ度:
※Amazon評価:
【本書のおすすめの読み方・活用方法】
- 導入編の“実践ルール”2つを読む
- 診療編・治療編・原因物質編などその他の“実践ルール”を確認
- その後は経験した症例の前後で読み直して復習!
【本書のまとめ】
本書は中毒診療を学ぶ救急専攻医・研修医にとって必須の参考書の一つである!
本書は中毒診療に日常的に従事する医師は必ず読むべき一冊である!
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