【疑問】
今回は、臨床や医学の勉強をしていて感じる疑問の一つ、
ROSC後のTTM(体温管理療法)【目的と必要性について】
についてまとめました。
心肺蘇生を懸命に取り組んで、ROSCした後ホッと一息付きのではなく、
その後の神経学的予後を考慮した管理をスムーズに行えるよう理解を深めましょう◎
BLSやACLSのポイントについて改めて勉強したい方はこちらを参考にしていただければ幸いです👇
1.体温管理療法(TTM)とは?
●TTM
神経学的予後の改善を目指してOHCA蘇生後に患者の体温を管理する治療法
まず整理しておかなければならないのは、TTMの目的についてです。
TTMは神経学的予後の改善を目的に導入される治療法です。
広義では、低酸素や外傷、出血などで損傷を受けた脳に対して、脳保護作用や頭蓋内圧低下を目的として行います。
TTMを行うことで得られるメリットの一つは、体温を1℃下げることにより、脳代謝を6-7 %減少させることができるです!脳酸素消費量とATP消費を軽減させる事ができます。
また、頭部外傷後の脳圧管理目的で施行されることもありますね。
TTMはそれぞれその管理目標の体温によって以下の表のように分類されます👇
【目標体温による分類】 | |
34-36℃ | 平温療法 |
32-34℃ | Mild hypothermia |
28-31℃ | Moderate hypothermia |
ROSC後に体温管理を行うことで、非施行群に比較して有意に転帰が改善するという報告があります1)
管理する目標体温については、低体温による合併症を考慮した上で思考されますが、JRC 蘇生ガイドライン 2020 オンライン版2)では、
深部体温32-36度に少なくとも24時間保つことが推奨されています。
ACLSの治療プロトコールなど心肺蘇生に関して多くの提言を発表しているAHA(アメリカ心臓協会)のガイドライン3)も同様の内容を推奨してました。
なぜここまで蘇生後の管理でTTMが推奨されているかというと、心停止蘇生後の神経学的予後は非常に悪い傾向があるからなのです。
院外心停止症例の神経学的予後について検証した論文4)では、
発症1ヶ月後に高次脳機能が保たれた症例の割合は
●目撃なし院外心停止(OHCA)…2.8%
●目撃あり院外心停止(OHCA)…4.3%
と報告されています。みなさんが想像しているよりもかなり低い数字だったのではないでしょうか…?
心停止蘇生後はホット一息安心するのではなく、いかに早期にTTMを行えるかが大切なので常に意識しながら日々診療に当たりましょう◎
2.追加解説”ROSC”とは?
追加解説として、ROSCについても少しだけ説明させていただきます!
そもそも、ここまで登場してきた略語”ROSC”を皆さんしっかりと理解できていますでしょうか…?
そもそもROSCが何という言葉の略語か知っていますか?
ROSCとはROSC(Return of Spontaneous Circulation)の略のことです!
心停止状態から脈を触れるようになること
を意味しており、自発的に自己心拍による循環が再開することと理解しておけばよいかと思います!
そして、意外と誤解しがちなのがROSCの判断です。ROSCと判断できるタイミングは
2分おきのリズムチェックの際に脈が触れること
です!
間違っても心電図波形がsinusに見えたからといって蘇生を中断してはいけません!(PEAの可能性もあります)
最後によくある間違いとしては、体動を認めたらROSCと判断することです。
体動がある!と勘違いして蘇生を中断したらAsysだったという経験をしたことがある医療従事者は多いのではないでしょうか…?
心停止の蘇生は胸骨圧迫の中断時間を最小にするというのが何よりも大切です。
あせってROSCと判断するよりは、確実なタイミングで確認するように心がけましょう!
TTMなど蘇生後の集中治療管理について深く学びたい方はこちらの本がおすすめです👇
4.引用文献
2)「JRC 蘇生ガイドライン 2020 オンライン版」一般社団法人 日本蘇生協議会(JRC)
3)2020アメリカ心臓協会 CPRおよびECCのガイドライン
4)Kitamura T et al. Circulation2012;126:2834-43.
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