学習

小児におけるバイタルサイン評価の注意点【敗血症を疑うきっかけは?】

https://dancing-doctor.com/medical-note/

今回は、自分を含め医療従事者にとって苦手意識を持つ方も多い、

小児の敗血症診療についてまとめました。

なかでも今回は、小児の救急患者を評価する際に重要なバイタルサインの評価を中心にまとめました。

1.敗血症を疑った小児のバイタルサイン評価

●年齢毎の低血圧・頻呼吸の閾値でバイタルサインを評価

●小児特有の意識レベルの評価AVPUを知っておく

●小児用のSOFAスコアは確立されていないため、循環の評価で敗血症を評価

小児の診療において肝となるのは、年齢によって基準となるバイタルサインが異なるということです。

年齢毎の低血圧・頻呼吸の閾値3)参考に作成
年齢層 低血圧(mmHg) 頻呼吸(rpm)
1週まで 60 60
1週~1か月 65 60
1か月~1歳 70 50
2~5歳 75 30
6~12歳 85 24
13~18歳 90 20

この表を参考に小児における低血圧および頻呼吸の基準について大まかに覚えておきましょう。

初期評価においてバイタルサインの評価はもちろん重要ですが、身体所見の評価もとても重要です。

それぞれ、成人の救急診療において重要なABCDEアプローチに準じて評価を進めることで漏れが少なくなりますね。

気道:A(上気道閉塞パターン、stridor、発語、言葉、泣き声)

呼吸:B(喘鳴、努力呼吸、陥没呼吸、呻吟、鼻翼呼吸)

循環:C(循環:脈拍触知不良、皮膚色不良、末梢冷感、CRT>2sec、頻脈・低血圧、乏尿)

意識:D(AVPUまたは小児のJCSを参考に)

環境:E(末梢温と中枢温の温度差)

それぞれ、成人の初期評価と共通する点も多いですが、注意が必要なのが意識レベルの評価についてです。

小児は自分自身でコミュニケーションを取れない年齢であることも往々にしてあるため、小児の患者さんに適切な意識レベルの評価方法が必要となります。

参考(2)意識レベルの評価法
AVPU
A Alert(意識清明)
V Voice(呼びかけに反応する)
P Painful(痛み刺激に反応する)
U Unresponsive(どんな刺激にも反応しない)
乳幼児用のJCS(幼児以降は成人と同様)
Ⅰ:刺激なしで覚醒している状態
1 あやすと笑う。ただし不十分で声を出して笑わない
2 あやしても笑わないが視線は合う
3 母親と視線が合わない
Ⅱ:刺激をすると覚醒する状態(刺激をやめると眠り込む)
10 飲み物を見せると飲もうとする or 乳首をみせればほしがって吸う
20 呼びかけると開眼して目を向ける
30 呼びかけを繰り返すとかろうじて開眼する
Ⅲ:刺激をしても開眼しない状態
100 痛み刺激に対し、払いのけるような動作をする
200 痛み刺激で少し手足を動かしたり、顔をしかめる
300 痛み刺激に反応しない

なかでも、AVPUに関しては忙しい救急外来でも活用しやすい評価項目なので、これを機会に覚えておきましょう◎

2.小児における敗血症を疑う所見は循環が肝になる!

小児の敗血症及び敗血症性ショックの診断は、成人と比較すると困難な場合が多い印象があります。

年齢に応じたバイタルサイン基準そったAge-adjusted quickSOFAスコアを確認していきましょう。

一方で、小児用のSOFAスコアは様々な研究で微妙に異なる基準値が提唱されていますが、現時点ではコンセンサスを得られているものはない5)ので、

あくまでも大まかに感染症における臓器障害の可能性について評価することが大切です。(そのため、あえてAge-adjusted quickSOFAスコアは様々な表がありケイサすると判然とするため掲載していません汗)

ここで、注目すべきバイタルの所見は、PATやABCDアプローチでも登場する、循環です!

PATにおける循環

循環:Circulation(蒼白、まだら状の皮膚、末梢冷感)

ABCDアプローチにおける循環

循環:C(循環:脈拍触知不良、皮膚色不良、末梢冷感、CRT>2sec、頻脈・低血圧、乏尿)

小児における循環不全を疑う所見があれば、積極的に敗血症の可能性を念頭に各種培養検査を提出し、抗生剤加療についても迅速に行うよう心がけます。

成人よりも敗血症を疑う閾値を下げておくことが肝要です◎

9.引用、参考文献

1)2020年日本敗血症診療ガイドライン

2)日集中医誌 2014;21:67-88.「日本での小児重症敗血症診療に関する合意意見」 日本集中治療医学会小児集中治療委員会

3)小児ICUマニュアル 改訂版第7版

4)EMERGENCY MEDICAL SERVICE HP PALS Guidelines

5)感染症TODAY2020.03.23「小児敗血症の臨床」志馬 伸朗

この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方は
今後も定期的に記事を更新していきますので
LINE登録Twitterのフォローnoteの登録よろしくお願いいたします!

みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります!