今回は、重症外傷の患者さんの治療で経験する、
Morel Lavallée lesion (MLL)
についてまとめました。
疫学から疾患の概念、検査や治療法までまとめています。
この疾患を念頭に置いていないと、外傷後の単なる血腫として対応してしまい感染などの合併症を引き起こしてしまうことがあるので注意です。
1.ポイント
•外傷の際は MLL も念頭に置いて診察を行うべきである。
•感染が疑われる場合は、外科的ドレナージを行う方がよい。
2.疫学
•1863 年に Morel Lavalléeが初めて報告した、閉鎖性デグロービング損傷のこと
•初診時の診断率は 56% 程度
•骨盤骨折 1.7-8.3% に合併
•骨盤輪骨折の 5.0% 、寛骨臼骨折 8.3 17.6% に合併
•骨折に関係なく、自動車衝突患者の 0.7% に発生
•スポーツ関連傷害 (サッカー、レスリング でも起きる
•経過中に皮膚壊死・感染( 19 46% )を併発することが多い
•受傷から MLL 発生まで数時間から数週間と差がある
1) 2)引用
3)引用
●受傷外力の大きさによるMLL合併率
4)引用
3.症状
皮膚の可動性
皮下の波動
感覚障害
(皮膚神経損傷)
タイヤ痕
摩擦による熱傷
4.原因
剪断力によって生じることが多い
5.除外診断・注意すべき合併症
6.検査
●超音波検査
•非特異的な所見を示す→診断には適さない ✖
•簡便に病変の広がりがわかる経皮的ドレナージに有用 〇
<鑑別が必要な疾患>
・漿液腫・滑液包炎・リンパ瘤・腫瘍
●CT検査
•軟部組織の評価に適さない
•急性期病変:血腫 or 挫傷に似ている
•慢性期病変:低密度のリンパ液が混合しているため15~40HU (血腫は 75HU•嚢胞の存在は硬化療法 or 外科的切除の必要性を示唆
●MRI検査
•診断に最も有用
•MLL 病変の特徴を明らかにするのに有用
■ Mellado-Bencardino分類
8.治療
具体的治療確立した治療法はまだない。
治療のフローチャートは以下の通り
<非侵襲的なもの>
• 安静
• 圧迫
• 抗菌薬や消炎鎮痛薬の投与
<侵襲的なもの>
• 穿刺吸引
• 硬化療法(ドキシサイクリン、タルク、エタノール)
※外科的ドレナージ切開ドレナージ・デブリドマンを推奨する症例
•開放骨折
•保存療法困難
•経皮的ドレナージが奏功しない
•感染や壊死組織を伴う
※偽被膜を有する例→経皮的ドレナージで改善乏しいことが多いため、外科的治療介入を推奨
9.引用、参考文献
1)Beckmann NM, Cai C
CT incidence of Morel Lavallee lesions in
patients with pelvic fractures: a 4 year experience at a level 1 trauma center. Emerg Radiol . 2016;23(6):615 21.
2)MikicZD:Operativetreatment of the large post-traumatic subcutaneous haematomaor bursa. Injury. 1992;23(5):327–30.
3)Kelly A. Boyle,etal:Morel-LavalléeLesions.CurrentTrauma Reports 2018;4:289-298
4)高原俊介ほか:骨盤骨折に伴う
Morel Lavallée lesion の検討 骨折 2016;38:612 5
5)SreelathaDiviti,et al:Morel Lavallèe lesionsReview of Pathophysiology,ClinicalFindings,Imaging Findings and Management.Journal of Clinical and DiagnosticResearch.2017 Apr;Vol11(4):TE01 TE04
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