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【疾患】低カリウム血症のまとめ【随時更新中】

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今回は救急外来で出会うことの多い電解質異常のひとつ、低カリウム血症についてまとめました。

頻度が多いからこそ、常にリスク評価と原因検索を怠らず行いましょう。

 

低カリウム血症

 

 

1.ポイント

●低Kを見つけたら、まずバイタル・ECGをチェック!
⇒徐脈やQT延長は要注意。早急な補正を

●低Kの原因は病歴聴取で診断がつくことが多い(特に細胞内移動のパターン)

●呼吸筋疲労や呼吸不全の鑑別に低K血症を考慮すべし

●K補正は緊急度に合わせて補正方法を検討

2.疫学

●入院患者の21%、外来患者の2-3%でK≦3.5mEq/L 1)

3.症状

●一般的に2.5mEq/L未満で起きやすい

●筋症状(細胞の過分極を惹起):筋力低下、筋痙攣、呼吸筋障害による呼吸不全
※周期性四肢麻痺は運動や過食で引き起こされることが多い

●吐き気・嘔吐、イレウス

●心電図異常:U波、QT延長・T波の平坦化/陰転化
ST-T低下、異所性心室興奮(VT,VF, PVC)
QT延長や房室ブロックから徐脈傾向をしめし、致死的な不整脈へ
※心電図変化の度合いは、K値と相関しない

●腎機能異常:多尿症、腎症

●耐糖能異常:特にサイアザイド利尿薬関連糖尿病にて生じる

4.原因

●食事摂取量減少
経口摂取されている限り、臨床的に問題となるK低値をきたすことはまれ

●腎臓からの喪失
・皮質集合管へのNaの十分な流入
・管腔内の陰性荷電
・十分なアルドステロン濃度
これら全てが傷害されるとKが喪失する

●消化管からの喪失
K吸収不良や、下痢が多い

●細胞内への移動
インスリンや交感神経刺激
薬剤性が多い(利尿薬、抗精神病薬)

引用:日本心臓財団

5.除外診断・注意すべき合併症

●致死的な不整脈をきたす可能性があるので、ECGでリスク評価(経時的に何度も評価)

●肝硬変のケースでは低Kが肝性脳症を誘発しやすい
低KによるH+イオンの細胞内流入によりアルカローシスを起こし、NH4+→NH3の変換を増加させやすい。肝硬変患者の低Kも積極的に補正する。

①偽性低カリウム血症を見逃さない
白血病などによる、著明な白血球芽球の増加(WBC>2万/μL)の状態、室温で放置することにより、細胞のK取り込みが起こるとされる

②低Mg血症を見逃さない
低K血症の40-60%は、低Mg血症を合併。低Mg血症を補正しないと、低K血症が治療抵抗性となり得る。血清Mg濃度は必ずしも体内の血中濃度を反映しない→高Mgでなければ補充を検討。

Mgの補充方法
・緊急時→マグネゾール®(1A中にMg=16.2mEq, 硫酸Mg=2g) 0.5A-1Aを2-15分で投与
・循環動態が安定→ マグネゾール®1Aを5%ブドウ糖液100mlに溶かして30-60分で滴下
・低緊急時→ 経口補充or硫酸Mg4-8gを12-24時間かけて投与できればよい
注:腎機能障害がある人は高Mg血症の危険

6.治療

●リスク別に治療法は異なる。内服か静注か?補正する方法に注意

①心電図変化なし、かつK:2.5-3.5mEq/L
➡経口補充(経口補充が最も安全)
40-100mEq/dayを2-3回に分けて内服(但し下痢に注意)例:スローケー®(1錠8mEq)、塩化カリウム粉末(13.4mEq/g)など
※内服の注意点:グルコン酸カリウム®はHCO3⁻が含まれ、アルカレミアによるK低下を導きうるため、できるだけスローケー®(KCL)を使用する。

②心電図変化や筋症状あり原因除去困難、かつK:2.0-2.5mEq/L ➡末梢静脈補充
輸液濃度は40mEq/Lまで(静脈炎を起こすため)輸液速度は20mEq/hrまで
例:生食500mL+KCl 20mEqを1時間以上かけて投与

③上記②の投与速度では補正が間に合わないとき
➡中心静脈補充
輸液濃度は100-200mEq/Lまで、輸液速度は20mEq/hrまで
例:20mEq/100mLのKCl溶液を1時間かけて投与(但しICUや集中治療時に限る)

※点滴の注意点:点滴のK溶液は、Kの細胞内シフトを防ぐ意味で糖を含めないMg値が正常であっても、②・③ではMgも同時に補充する

※2-4時間毎にK濃度をチェック
K補正時は、治療効果が予測できないため、明確な治療効果が得られるまでは2-4時間毎に頻回フォロー。

安定的にK>3.0-3.5 mEq/Lを維持し、低K血症の症状が改善するまでは、K値をモニターすべき。

●心機能低下しているケースでは、低Kを積極的に補正
血清K値が低いほど心筋の興奮性は高まり、不整脈の危険性が高い。

心血管系疾患の既往のある患者やリスクのある患者は、K >4.0 mEq/L,Mg >2.0 mg/dLを維持する目的で補正する。

 

9.引用、参考文献

重症患者管理マニュアル

日本医事新報社『低K血症』

Arch Intern Med. 1990 Mar;150(3):613-7.
Am FamPhysician. 2015 Sep15;92(6):487-495.
Circulation. 2010 Nov 2;122(18 Suppl3):S729-67.

 

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