今回は、僕が
くも膜下出血(SAH)の疫学や検査について、今回の症例を通じて学んだこと
について、初期研修医の目線から感じたことを中心に書いていきたいと思います。
前回の症例クイズをまだ読んでいない方はまずはこちらをチェック👇
1.救急外来におけるSAH
SAHの診断って難しいですよね。
救急外来で対応しているときも、頭痛を主訴に来院している人をみると、
この方頭が痛いみたい、しかもけいけんし今まで経験したことないくらい痛いとか言ってる…頭部CT撮ってみるか…?
と悩んだ後、実際に撮影してみると
この高吸収域って、もしかして出血?それともアーチファクト??
と撮影した後もSAHで悩むことが何度もありました。
頭痛が主訴で来院してくれるならまだ想定しやすいですが、吐き気や片麻痺でも来院することがあるため、より難解!
今回の症例をきっかけに、SAHのことについて自分が改めて勉強した事をまとめていきたいと思います。
まずは救急外来におけるSAHの疫学的知識から。
頭痛の主訴で来院される患者さんのうち、SAHの頻度は一般外来では0.8%程度と言われています。
一方、救急外来では8%のSAHが紛れているといわれており、この頻度は一般外来と比較すると10倍にもなります!
なので頭痛の患者さんを見たら、救急外来においてSAHはcommonな疾患であると再確認しましょう!
疫学を考慮した鑑別、救急外来では大切です◎
次にSAHをいつ疑うかという問題についてですが、
問診で大切なのは発症様式と痛みの程度に注目することが肝要です!
典型的な来院パターンは上の2つで、
2つ目については忘れてしまうことも多いので必ず念頭に置きましょう。
ですが、今回の症例のように
今回の来院パターン:突然発症+BP低下+意識障害
典型的でないパターンもあるため、典型的でなくても疑う必要があります。ああやっぱりSAHって難しい…笑
2.SAHを疑った際に行う各種検査
SAHを疑った際に施行される検査と、その代表的な検査結果をまとめてみました。
今回の症例で該当した検査結果は、
この黄色でラインを引いた項目です。
今回はECGや採血ではSTの変化やCKの上昇などがみられました。
これって急性冠症候群(ACS)でも見られる検査結果ですよね…!
このあたりが
SAHは虚血性心疾患と誤診されることが多い
と言われるゆえんであると思います。
しかも、SAHを発症した際のストレスなどが要因となり、
『たこつぼ型心筋症』という、
心筋の虚血はないが心臓の収縮が全体的に悪かったり
心筋の一部がうまく動かなくなったりする病態が被ることが良くあります。
これもACSとの鑑別を悩ませる一因ですね。
このようにSAHは、たこつぼ型心筋症やテルソン症候群(視力低下)
神経原性肺水腫(NPE)などの様々な合併症を持つのも特徴です。
神経原性肺水腫(NPE)についてはこちらをチェック👇
ああSAHって紛らわしい…笑
3.SAHの画像検査
また、SAHの診断について、最も中核となるのは頭部CTや頭部MRIなどの画像検査であると思います。
頭部CTで教科書で見られるようないわゆるヒトデ型の高吸収域を認めたら、SAHの可能性が極めて高くなります。
ですが、SAHとよく似た画像所見を呈する、『pseudo-SAH』という概念も存在するため、安易にSAHと決めつけるのは危険なのです…
pseudo-SAHについてはこちらをチェック👇
救急外来でよく出会い、そして絶対に見逃してはならないSAH。
自分も苦手意識が強いのですが、今後も出会う度に復習していきたいと思います。
みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります!