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PCTが低ければ、本当に大丈夫? 【NEWS2との組み合わせで変わる敗血症評価】

📩 この記事のきっかけ

「敗血症が疑われる患者にPCTを測定し、NEWS2と組み合わせることで予後が改善する」という大規模RCTが発表されました。PCTの限界と、バイタルサインとの併用の重要性を改めて考える内容です。

新年度が始まって、敗血症や感染症の認知で悩ましいケースが続いたんですよね。

「PCTが低いから感染じゃないと思います」「CRPが上がってないので大丈夫かと…」

こういう申し送りやコンサルト、4月に限らず多いんじゃないかなと思います。

 

でも、それって本当に大丈夫なんでしょうか。

今回は、つい最近発表された大規模RCTの結果をもとに、PCTの「できること」と「できないこと」、そしてNEWS2との組み合わせについて一緒に考えてみたいと思います。


PCTは「比較的マシ」な感染症マーカー

まず大前提として、PCT(プロカルシトニン)は感染症マーカの中では比較的優れたものとされています。CRPやWBCよりも、細菌感染症に対する特異度が高いとされているんですよね。

でも、「比較的マシ」と「万能」はまったく違います。

⚠️ PCTの限界を知っておきたい

  • PCT陰性でも、約2割は感染症(偽陰性)
  • PCT陽性でも、約2割は非感染症(偽陽性)
  • CRPやWBCよりマシなだけで、単独で感染症の有無を判断するツールではない

PCTが簡単に測定できる施設では、CRPやWBCよりPCTを見る方が有用であることは間違いありません。ですが、PCTの数値だけで「感染あり/なし」を判断するのには注意が必要かもしれませんね。

じゃあ、PCTをどう使えばいいのか。そのヒントをくれるのが、今回のRCTです。


どんな研究? ── 英国20病院のER、5,453名のRCT

📋 研究の概要

項目 内容
デザイン 多施設RCT(ランダム化比較試験)
施設 イングランド・ウェールズの20病院の救急部門
対象 敗血症が疑われる16歳以上の患者さん 5,453名
介入群 NEWS2 + 迅速PCT検査(ガイダンスアルゴリズム)
対照群 NEWS2に基づく通常ケア
主要評価項目 トリアージ後3時間以内の静注抗菌薬投与率

ポイントは、PCT群の臨床医はアルゴリズムを「参考にする」だけで、使用する・無視する・逸脱する、いずれの判断も自由だったということです。つまり、現実の臨床に近い設計なんですよね。


結果

抗菌薬投与率は変わらず、でも死亡率は下がった

 

✅ 主な結果

アウトカム PCT群 通常ケア群
3時間以内の抗菌薬投与率 48.4% 48.2%(差なし)
28日死亡率 13.6% 16.6%(PCT群で有意に低い)

調整後リスク差:−3.12パーセントポイント(90% CI:−4.68〜−1.57、p=0.0009)

面白いのは、抗菌薬の投与率自体は変わっていないということなんですよね。

つまり、PCTを追加したことで「抗菌薬を早く出せた」のではなく、PCTの情報が臨床判断全体の質を底上げした可能性があるということです。PCT値を見ることで、感染症の重症度をより正確に評価でき、その後のマネジメントが変わったのかもしれません。

ただし、PCT検査結果が実際に臨床判断に考慮されたのは介入群の64.7%にとどまっています。全員が活用したわけではないんですよね。

それでも死亡率に差が出たというのは、注目に値すると思います。


だけど、PCTだけでは十分じゃない 【NEWS2との併用が鍵】

ここが今回の論文で最も大切なポイントかもしれません。

PCTは確かに有用なマーカです。でも、PCTだけで感染症を診断しようとするのは、やはり限界がある

陰性でも2割は感染症、陽性でも2割は非感染症。

これは忘れてはいけないですよね。

💡 臨床で意識したいこと

  • PCTはCRPやWBCよりマシだが、万能ではない
  • 患者さんの状態(バイタルサイン)と組み合わせることが前提
  • その「組み合わせる相手」の代表がNEWS2
  • 検査値だけでなく、目の前の患者さんを診ることが基本

NEWS2(National Early Warning Score 2)は、呼吸数・SpO2・体温・収縮期血圧・脈拍・意識レベルの6項目からなるスコアリングシステムです。

英国では広く使われていますが、日本の診療録でNEWSを評価した記載はほとんど見かけないのが現状かもしれません。

 

でも、今回のRCTが示唆しているのは、「検査値+バイタルサインの組み合わせ」が患者さんの予後を変えうるということ。これは日本の現場でも、とても大切な視点だと思います。


明日からの臨床で考えたいこと

✅ 今日のポイント

  • PCTはCRP・WBCより有用だが、偽陰性・偽陽性が各2割ある
  • PCTが測定できる施設では、CRPやWBCよりPCTを優先してよい
  • ただし、PCTだけで感染の有無を判断しない
  • NEWS2(バイタルサインの系統的評価)と組み合わせることで真価を発揮する
  • 「数値がこうだから大丈夫」ではなく、目の前の患者さんの状態と合わせて判断する

どうですか?あなたの感想を聞かせてください。

「PCTが低いから大丈夫」と思ったことがある方、きっと少なくないと思います。

僕自身もそうでした。

でも、検査値だけでなく、バイタルサインや患者さんの全体像を合わせて評価する。この「当たり前のこと」を、きちんとRCTで検証して示してくれたのが、今回の研究の価値なんじゃないかなと思います。

皆さんの施設ではPCTをどう活用していますか?NEWS2やバイタルサインとの組み合わせ方で工夫していることがあれば、ぜひオープンチャットやマシュマロで教えてください。