「熱がないから感染症じゃないですよね?」
この質問、よく聞きますよね。でも、高齢者の感染症は熱が出ないことも多いんです。
むしろ、熱がないからこそ見逃されやすい。
私も以前、「元気がない」という主訴だけで来た高齢の患者さんが、実は尿路感染症に伴う敗血症性ショックだったという経験があります。
この記事では、高齢者感染症の非典型的な症状と、見逃さないためのポイントを解説します(1)。
なぜ高齢者は熱が出にくいのか
高齢者が発熱しにくい理由は、いくつかあります(1,2)。
📋 高齢者が発熱しにくい理由
- 基礎体温が低い:平熱が35℃台の方も多い
- 免疫応答の低下:サイトカイン産生が減少
- 体温調節機能の低下:視床下部の反応性低下
- 解熱薬やステロイドの使用:熱がマスクされる
実際、高齢者の重症感染症の約20-30%は発熱を伴わないとされています(2)。
💡 臨床のコツ
高齢者では「平熱より1℃以上の上昇」を発熱とみなすことも重要です。37.2℃でも感染症の可能性を考えましょう(1)。
発熱以外の感染症サイン
高齢者の感染症では、発熱以外の症状に注目することが大切です(2,3)。
⚠️ 見逃してはいけない非典型症状
- 意識変容・せん妄:「いつもと様子が違う」が重要なサイン
- 食欲低下:「食べなくなった」は感染症を疑う
- 活動性低下:「元気がない」「動かない」
- 転倒:感染症による筋力低下が原因のことも
- 失禁:尿路感染症のサインだけでなく、全身性感染症でも
特に「急性の意識変容」は、高齢者感染症の重要なサインです。認知症の悪化と思われていたものが、実は尿路感染症だったということは珍しくありません(3)。
おすすめなのは、以下の覚え方ですね。語呂もいいです。
高齢者で見逃しやすい感染症
高齢者で特に見逃されやすい感染症があります(3,4)。
💡 見逃しやすい感染症トップ5
- 尿路感染症:症状が乏しいことが多い、せん妄だけのことも
- 肺炎:咳・痰がなく、食欲低下だけのことも
- 胆道感染症:腹痛が軽微、黄疸がないことも
- 感染性心内膜炎:発熱が軽度、心雑音が聴取しにくい
- 結核:慢性的な体重減少、微熱
例えば、高齢者の肺炎は、典型的な咳・痰・発熱の三徴がそろわないことが多いです。
「なんとなく元気がない」という訴えから肺炎が見つかることも(4)。
感染症を疑ったら何をする?
高齢者で感染症を疑ったら、以下の評価を行いましょう(4,5)。
✅ 感染症評価のチェックリスト
- バイタルサイン:発熱がなくても頻脈・頻呼吸に注目
- 意識状態:GCSだけでなく、普段との違いを確認
- 身体診察:肺、腹部、皮膚、CVA叩打痛
- 検査:CBC、CRP、プロカルシトニン、尿検査、血液培養
- 画像:胸部X線(肺炎)、腹部CT(胆道感染など)
プロカルシトニン(PCT)は、細菌感染症の補助診断として有用ですが、過信してはいけません。
そして、腎機能低下があると上昇しやすいので注意が必要です(5)。
💡 臨床のコツ
「いつもと違う」という家族の訴えは、最も重要な病歴です。
具体的に何が違うのか、詳しく聞きましょう(3)。
まとめ
✅ 高齢者感染症のポイント
- 熱がなくても感染症はある:高齢者の20-30%は発熱しない
- 非典型症状に注目:意識変容、食欲低下、活動性低下
- 「いつもと違う」を大切に:家族の訴えは重要な情報
- 積極的に検査を:疑ったら早めに評価する
引用文献
- Norman DC. Fever in the elderly. Clin Infect Dis. 2000;31(1):148-151.
- Mouton CP, Bazaldua OV, Pierce B, Espino DV. Common infections in older adults. Am Fam Physician. 2001;63(2):257-268.
- Yoshikawa TT. Epidemiology and unique aspects of aging and infectious diseases. Clin Infect Dis. 2000;30(6):931-933.
- Gavazzi G, Krause KH. Ageing and infection. Lancet Infect Dis. 2002;2(11):659-666.
- Schuetz P, Albrich W, Mueller B. Procalcitonin for diagnosis of infection and guide to antibiotic decisions: past, present and future. BMC Med. 2011;9:107.





