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血圧正常でもショック?【ショックを見抜く5つのサイン】

「先生、血圧は正常ですけど、なんか患者さんの様子がおかしいんです」

こんな看護師さんからの報告、受けたことはありませんか?

私も研修医の頃、「血圧が正常ならショックじゃないでしょ」と思っていた時期がありました。

でも、それは大きな間違いでした。

 

この記事では、「ショック=低血圧」という誤解を解き、本当のショックの見つけ方をお伝えします(1)。


ショックの定義

まず、ショックの定義を確認しましょう(1)。

📋 ショックの定義

ショックとは、組織への酸素供給が需要に対して不十分な状態

つまり、「臓器に十分な血流が届いていない状態」です。血圧は、その結果として下がることがあるだけで、ショックの定義そのものではありません(1)。


代償性ショック:血圧が正常でもショック

人間の体は非常に賢くできています。循環血液量が減っても、すぐには血圧が下がりません。なぜなら、代償機構が働くからです(1,2)。

💡 代償機構の例

  • 心拍数の増加:心拍出量を維持しようとする
  • 末梢血管収縮:血圧を維持しようとする
  • カテコラミン放出:交感神経系の活性化

これらの代償機構が働いている間は、血圧は正常に保たれます。でも、この時すでに臓器への血流は不十分になっているんです(2)。

💡 臨床のコツ

出血性ショックでは、循環血液量の15〜30%が失われても、代償機構によって血圧は正常範囲に保たれることがあります(Class II出血)。血圧が下がる頃には、すでに30%以上の出血が起きている可能性があります(2)。


ショックを見抜く5つのサイン

では、血圧以外に何を見ればショックを早期発見できるのでしょうか(1,3)。

✅ ショック早期発見の5つのサイン

サイン 所見 意味
1. 頻脈 HR > 100/分 心拍出量を維持しようとしている
2. 皮膚所見 冷感、湿潤、蒼白 末梢血管収縮
3. CRT延長 > 2秒 末梢循環不全
4. 意識変容 不穏、傾眠 脳血流低下
5. 尿量低下 < 0.5 mL/kg/h 腎血流低下

Ait-Oufella Hらの研究(Intensive Care Med 2014)では、CRTの延長がショック患者の予後と関連することが示されています(3)。


Shock Index(ショック指数)を活用しよう

便利な指標として、Shock Index(SI)があります(4)。

📊 Shock Index

SI = 心拍数 ÷ 収縮期血圧

  • 正常:0.5〜0.7
  • SI > 0.9:ショックの可能性
  • SI > 1.0:重症ショックを示唆

例えば、血圧 110/70 mmHg、心拍数 110/分の患者さん。血圧だけ見ると「正常」ですが、SI = 110 ÷ 110 = 1.0 です。これはショックの可能性を示唆しています(4)。

ただ、このSIは出血性ショックや病院前診療など、限られた状況や症例を除くと感度および特異度が高くありません。

あくまでバイタルサインによって計測するものなので、ショックの認知はバイタルサインよりも他の身体所見を重視した方が良いというのが私の考えです。


乳酸値:臓器低灌流の指標

乳酸値もショックの評価に重要です(5)。

📊 乳酸値の解釈

  • 正常:< 2 mmol/L
  • 軽度上昇:2〜4 mmol/L → 注意が必要
  • 高度上昇:> 4 mmol/L → 重症ショックを示唆

4つのショックの分類

ショックには4つのタイプがあります(1)。

📋 ショックの4分類

タイプ 原因 代表疾患
循環血液量減少性 血液・体液の喪失 出血、脱水、熱傷
心原性 心臓のポンプ機能低下 心筋梗塞、不整脈
閉塞性 心臓への血液流入障害 肺塞栓、心タンポナーデ
血液分布異常性 末梢血管拡張 敗血症、アナフィラキシー

まとめ

✅ ショック早期発見のポイント

  • ショック ≠ 低血圧:代償性ショックでは血圧は正常
  • 5つのサインを見る:頻脈、皮膚所見、CRT、意識、尿量
  • Shock Indexを計算:SI > 0.9 で要注意
  • 乳酸値を確認:臓器低灌流の客観的指標
  • 4つの分類を意識:原因によって治療が異なる

引用文献

  1. Vincent JL, De Backer D. Circulatory Shock. N Engl J Med. 2013;369(18):1726-1734.
  2. 日本外傷学会・日本救急医学会. 外傷初期診療ガイドライン(JATEC)第6版. へるす出版; 2021.
  3. Ait-Oufella H, Bige N, Boelle PY, et al. Capillary Refill Time Exploration During Septic Shock. Intensive Care Med. 2014;40(7):958-964.
  4. Cannon CM, Braxton CC, Kling-Smith M, et al. Utility of the Shock Index in Predicting Mortality in Traumatically Injured Patients. J Trauma. 2009;67(6):1426-1430.
  5. Wardi G, Brice J, Correia M, et al. Demystifying Lactate in the Emergency Department. Ann Emerg Med. 2020;75(2):287-298.

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