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【心肺蘇生2025アップデートセミナー】皆さんからの質問にお答えしました!

 

「AEDのパッドって、胸毛が濃い人は両脇に貼ってもいいんですか?」

「VTで脈がある人にAEDを貼ったら、機械はどう判断するんでしょう?」


「アドレナリンって、1回目のショックの後じゃダメなんですか?」

2025年11月、Qラボで開催した「心肺蘇生2025アップデートセミナー」には、救急救命士、看護師、医師など、多くの方々が参加してくださいました。

申し込み人数は合計500名を超えました!本当にありがたいですね!

セミナー後にいただいた質問は、どれも現場で本当に迷うポイントばかり。

教科書には書いてあっても、実際の場面でどう動くべきか、はっきりしないことって、ありますよね。

今回の記事では、セミナー開催後2日間でいただいた11の質問に、AHA2025とJRC2025のガイドラインを基に、できるだけ具体的にお答えしていきます。

一緒に学んでいきましょう!

Q1:胸毛が濃い人、右胸心の人、AEDパッドはどこに貼る?

聞き逃したのかもしれませんが…胸毛のAEDパッドは、両側の脇(胸毛のない位置)でも良かったでしょうか?予めわかってる右胸心(先天心)は、パッドは左右逆に貼りますか?内臓逆位などネックレスや持ち物でわかっている場合など

まず、AHA・JRC2025でも、成人に対する標準的なパッドの位置は「右鎖骨下と、左の中腋窩線・乳頭よりやや下」と定義されています。 これは「心臓を電流がしっかり貫く位置」として、ILCORの除細動パッドのステートメントでも繰り返し示されている基本です。

胸毛が濃いからといって、「両側の脇だけ」に貼る配置は、電流が心臓を十分に通らない可能性が高く、ガイドライン上も推奨されていません。どうしても前胸部に貼ると浮いてしまうような胸毛であれば、パッドが当たる範囲だけ素早く剃るか、予備パッドで一度貼って「ベリッ」と毛ごと剥がしてから、改めて正しい位置に貼る、というやり方が推奨されます。

それでも前胸部がどうしても難しい場合には、「前胸部+背部(anterior–posterior位置)」に切り替えるのが現実的です。前側は胸骨左縁〜心尖部あたり、後ろは肩甲骨の下あたりに貼って、「心臓の塊を二枚のパッドで挟む」イメージです。 左右の脇だけに貼る「横並び配置」は、少なくとも現行ガイドラインのどこにも推奨はなく、避けた方が良いと考えてください。

右胸心や内臓逆位が事前に分かっている場合についてですが、AHAやJRCの成書・アルゴリズムには「右胸心だから左右逆に貼れ」とは明記されていません。 ただ、電気生理的には「心臓の位置に合わせて電流が通るようにパッド位置を変える」のが理屈としては正しいので、右胸心が確実に分かっていて、救助者側に余裕がある場面なら、右胸側に心尖側パッドがくるようにミラー配置にしてしまって構わないと個人的には考えます。

ただし、貼り方に悩んで除細動が遅れるくらいなら、「標準の位置でさっさと打つ」方がはるかに重要です。右胸心や内臓逆位などの情報を処理している時間でショックが遅れるくらいなら、通常の「右上・左下」配置でよいという割り切りも必要かなとも考えました。

Q2:蘇生的帝王切開、家族の同意はどうする?

「救急の現場では家族へのICを並行して行う必要があると思います。時間の制約がある中で、必要十分な説明をして家族に理解をしてもらうだけでなく選択をしてもらわなければならない場面が多いなぁと感じます。例えば、今回のお話の中では『蘇生的帝王切開は心停止後できるだけ早く』が推奨されていても、家族の同意を得ることがCPR2サイクル以内にできるのか疑問に思いました」

この疑問は、多くの救急救命士や医療従事者が抱えているものではないでしょうか。

AHA2025の「Cardiac Arrest in Pregnancy Algorithm」では、妊娠20週以降くらい(子宮底が臍を超える頃)で心停止が持続する場合、「母体の予後を改善する目的でresuscitative deliveryをできるだけ早く行う。理想的には心停止から5分以内」というメッセージが明示されています。

ここで大事なのは、「この蘇生的帝王切開は、まず母体の蘇生のための処置であり、胎児救命はその次」という位置づけと、「緊急の生命救助では、家族からの形式的な文書同意よりも、時間優先で医療者の判断に基づいて実施してよい」という前提です。 2025年のAHAハイライトや、JRCガイドラインの倫理章も含め、緊急時は「推定同意(implied consent)」で救命処置を進めてよいという立場を維持しています。

したがって、「CPR2サイクル以内に家族から署名付きの同意書をもらう」のは、そもそも想定されていません。現実的には、心停止の認識から5分以内に開腹を開始できるかどうかが勝負なので、家族への説明は「どうしても拒否したい宗教的・倫理的理由があれば今すぐ教えてください」程度の、短い説明で済ませるしかないのかなと個人的には考えます。

人手が少ない2〜2.5次救急で当直1名の状況なら、優先順位ははっきりさせるべきで、「蘇生処置と原因検索>短い説明>家族との相談」という順番になります。 説明を聞いてもらってから処置に移る、という順番ではなく、「処置を始める宣言+反対があれば止める」という形に寄せた方が現実的です。

具体的な声かけの例としては、こんなイメージです。

「今、心臓が止まっており、心臓マッサージと薬、電気ショックで元に戻せないか全力で治療しています。妊娠の週数から考えると、お母さんを助けるために、お腹を開けて赤ちゃんを出す『緊急のお産』を、数分以内に始める必要がある状態です。これは、お母さんを助けるための処置です。今からすぐ準備を始めます。宗教的な理由などで、どうしてもそれを望まれない場合は、今お話しください。」

これは「同意書にサインをもらう」のではなく、「医療側として標準治療として行うが、強い拒否があれば聞く」というスタンスです。 この方が、AHA/JRCの倫理パートが言っている「救命処置は原則実施、ただし患者・家族の価値観を尊重する」というバランスに近いのかなと思います。

別の話題になりますが、人数の少ない勤務帯で心肺蘇生の診療にあたるコツとしては、まず「家族対応役」を最初に決めておくことです。看護師長や経験のある看護師に、「説明する内容の定型文」をあらかじめ共有しておき、医師は蘇生リーダーに徹する。 どうしても医師本人が説明に出ないといけない場合でも、CPRの2分サイクルの合間に30〜60秒だけ家族の前に行き、「今なにが起きているか」「このあと数分で何をするか」だけ伝えてすぐ戻る、という割り切りをした方がいいかもしれません。

Q3:CALSとALSの違い、AEDモードと手動モードの違い

「勉強会で言ってた気がするのですが、CALSとの違いを知りたい。DC使う時にAEDモードと自ら電気ショックする時と比べてAEDモードでする時の方が電気ショックをするまでの時間が長い気がするのですがいかがでしょうか」

ここでいうCALSは、おそらく「Cardiac Surgery Advanced Life Support」、つまり開心術後患者の心停止に特化したプロトコールのことでしょうか。開心術後は、吻合部からの出血やグラフト閉塞など、一般CPAとは全く違う問題が起こりうるため、「早期再開胸」「ドレーン確認」「ペーシング」などを通常ALSより優先するように設計されています。

一方で、AHA2025/JRC2025のALS(ACLS)は「すべての成人心停止」を対象とした汎用アルゴリズムであり、開心術後に関しては各国の心外科系のガイドライン(CALSなど)に委ねる形になっています。

つまり、心臓外科ICUや心外病棟では「CALS+ALS」の組み合わせが必要ですが、一般の2〜3次救急で診る心肺停止のほとんどはALSだけで十分、という整理で良いと思います。

次にAEDモードと手動モードの話ですが、感覚通りで、「AEDモードの方がショックまでの時間は長くなる」が正解です。 AEDモードでは、機械が「解析中です」「患者から離れてください」「電気ショックが必要です」「ショックボタンを押してください」と順番にアナウンスし、そのたびに圧迫を止めざるを得ないため、どうしてもhands-off timeが伸びます。

AHA2025のアルゴリズムでも、医療者向けALSでは、心電図を読めて除細動器を扱えるのであれば「手動除細動器を直接使う」前提で書かれており、AEDはあくまで心電図判読をしない場面での代替手段として位置づけられています。

したがって、「すぐに打ちたい時は自分でエネルギーを設定して、手動モードでショックする」という運用は、医療者がいる環境ではむしろ望ましいです。その際に重要なのは、ショック前後の圧迫中断を10秒以内に抑えることと、チーム全体で「VF/pVTであること」を声に出して確認してからボタンを押すことです。

Q4・Q10:AEDは脈なしVTを見分けられる?

「AEDはPulseless VTはどうやって判断しているんですか?」 「AEDは脈ありVTと脈なしVTを感知しわけることできるのですか?」

この2つの質問は、同じテーマなので一緒にお答えします。当たり前のことだと考えがちだったので、思わずハッとしましたね。改めて調べ直してみました。

AEDは、そもそも「脈を見ていません」

AEDが見ているのは、電極から拾った心電図波形だけです。波形の形(細かく不規則ならVF、幅の広い規則的な頻拍ならVTなど)、振幅、心拍数などから、機械が「ショックが必要なリズムかどうか」だけを判定しています。

脈があるかどうか(つまり心拍出があるかどうか)は、AEDには分かりません。 だから、AEDは「患者はすでに倒れていて、反応がなく、正常な呼吸がなく、脈もない」という前提条件のもとで使う機械になっています。

医療者の現場では、VTを見たときにまず人間が頸動脈を触って「脈ありVT」か「脈なしVT」かを判断するべきで、脈ありで血圧が維持されているなら同期カルディオバージョン(同期電気ショック)、脈なしなら除細動/AEDという分け方になります。

AEDの音声解析に任せるのではなく、人間が「今この患者にはCPRが必要な状況か」を判断した上で使う、という考え方で活用するのが安全かと思います。 また、個々からは個人的な見解ですが、AEDを用いるか検討する場合でたとえ脈が触れる状態だったけど認識できないレベルだったという症例は、おそらく呼吸と意識障害があり、中枢の脈の触れもギリギリだったということになるのでしょう。 それは少なくともたとえ脈ありVTであったとしても著名なショック状態の不安定なVTなので、治療も除細動が検討されるわけです。 なので、例えその状態で除細動をしても患者さんにとって大きな不利益はなく、むしろ効果的な治療になる可能性も高いのではないかと考えました。

Q5:ショックの時、乳酸リンゲルと酢酸リンゲル、どちらを使う?

「ショックの場合、肝血流低下、腎血流低下により乳酸負荷が増加すると思いますが、実臨床では乳酸リンゲルでの輸液構成が圧倒的に多いと感じています。私個人の集めた極めて少ない経験ですが、酢酸リンゲル液を使用した方が乳酸負荷が増加せずに済むのではないかと考えます。そのような病態の場合、救急医の中で乳酸リンゲル液を使用するエビデンスや予後に関する事例などありましたら御教授頂けますと幸いに存じます」

この質問は、現場で実際に患者さんを診ている人ならではの、とても鋭い疑問だと思います。

2025年のAHAやJRCの本体ガイドラインそのものは、「乳酸リンゲル vs 酢酸リンゲル」の細かい優劣までは踏み込んでいませんが、心停止・ショック全般に関しては、過去数年のエビデンスを踏まえて「0.9%生理食塩水よりも平衡晶質液(balanced crystalloids)を優先する」という流れを維持しています。平衡晶質の代表が乳酸リンゲルや酢酸リンゲル、Plasma-Lyte(日本にはありませんね)などです。

乳酸リンゲルに含まれる乳酸は、ショックや敗血症で患者自身が産生している乳酸(しばしば十数mmol/L)と比べると、相対的にはそこまで大きな負荷ではありませんし、無視していいレベルだと考えます。実際の研究でも、乳酸リンゲルを使うことで血中乳酸が1mmol/L前後上がることはありますが、そのことで予後が悪化したとする強いエビデンスはありません。

一方、酢酸リンゲルは乳酸を含まないので、「乳酸の数字の解釈がクリアになる」「肝血流が悪くても乳酸が増えにくい」という意味では理にかなっています。ただし、乳酸リンゲルと酢酸リンゲルを直接比較して「死亡率や腎障害に明確な差がある」と示した決定的な臨床試験は現時点では乏しく、どちらも「生食よりはマシな平衡晶質」という位置づけに留まっています。

臨床的な落としどころとしては、次のように考えるのが現実的です。

まず大原則として、「ショックの初期輸液に生理食塩水だけで行くのはやめて(過剰輸液による高Cl性アシドーシスの懸念がある)、乳酸リンゲルか酢酸リンゲルなどの平衡晶質を使う」。そのうえで、「乳酸値の経時変化を鋭敏に見たい症例」や「重度の肝障害で乳酸クリアランスが明らかに悪い症例」では、酢酸リンゲルを優先するのは合理的な工夫です。

それ以外の一般的なショック(外傷性出血や敗血症など)では、乳酸リンゲルか酢酸リンゲルかはそこまで大きな差ではなく、「施設にある方、慣れている方」で構いません。乳酸リンゲルが多数派であること自体は、ガイドラインから大きく外れているわけではないので、気にしすぎる必要はないと思います。

Q6:VF/pVTでアドレナリンは何回目のショック後に入れる?

「VT/pVTのアルゴリズムでは、アドレナリン1mg ivは2回目の除細動の後となっていますが、実臨床では1回目の除細動の後にivしていることがほとんどです。医師の中では、アルゴリズムと違うことをわかっていて指示を出している人もいれば、そもそもアルゴリズムも1回目の後にivだと思っていた人もいます」

この質問は、現場で本当によく起きている「ズレ」を的確に指摘していると思います。

2025年版のAHA「Adult Cardiac Arrest Algorithm」では、ショック可能リズム(VF/pVT)の流れは図上はっきり示されています。初回ショックのあと2分CPRを行い、2回目のショックを打ったあと、その後の2分CPRのブロックの中で「アドレナリン1mgを3〜5分ごと」と書かれています。つまり、AHAの図だけを見ると「実質的には2回目ショック後にアドレナリン開始」ということになります。

なぜショックリズムでアドレナリンを「遅め」にしたいのかというと、観察研究やメタ解析で「非ショックリズムでは早期のアドレナリン投与が予後を改善するが、ショックリズムではROSCは増やすものの、神経学的転帰を悪くする可能性がある」という兆候が出ているからです。つまり、「VF/pVTのおいしいところ(早い除細動でneurologically intactな生存が期待できるところ)を、アドレナリンで潰してしまうかもしれない」という懸念があると考えるとよいでしょう。

実際の現場では、「1回目ショック後にルーチンでアドレナリン1mg」としてしまっている施設も確かにありますし、「そう教えられてそのままやっている」人もいるのかもしれません。ただ、現状のエビデンスを踏まえると、「ショックリズムでは、まず2回の除細動を実施して、その後にアドレナリンを入れる」というのがガイドライン寄りの考え方です。

個人的には、「原則は2回目ショック後のCPRブロックでアドレナリン開始」を標準にしておいて、少なくとも「毎回1回目ショック直後に反射的にアドレナリンを打つ」運用はやめた方が良いと思います。1回目後に入れてしまったからといって、目に見えて致命的な弊害を感じる場面は正直ほとんどないと思いますが、「わざわざ早めるメリットが薄い上に、長期予後悪化の不安がある」という意味で、2回目後にそろえておいた方がチームとしても整理しやすいはずです。

Q7:救急活動でアミオダロンを見たことがない理由

「救急活動でVFが続いてる方でアドレナリンのあとにアミオダロンを投与している姿を見たことがないのですが、院内CPAに限ってアミオダロン投与を行うのですか?」

2025年版のAHA/JRCどちらも、「アミオダロン(あるいはリドカインなどの抗不整脈薬)は、あくまで『ショック抵抗性のVF/pVT』に対して使う薬」として位置づけています。タイミングについては、AHAのアルゴリズムで言えば3回目ショックのあとに300mgボーラス、その後必要に応じて150mgの追加、という従来の流れをほぼ踏襲しています。

院外救急でアミオダロンがほとんど使われていないように見えるのは、「院外では救急救命士単独で活動している時間帯が長く、投与できる薬剤が制度上限られている」「搬送時間が短い場合は薬と準備をするより、とにかくCPRとショックを優先する」という運用上の理由が大きいです。薬を入れても生存退院が劇的に増えるわけではなく、ROSCが少し増える程度という位置づけなので、「薬に手をかける暇があれば病院に運んでしまう」という判断をしている現場も多いと思います。

一方で、院内心停止ではモニターもスタッフも揃っており、静脈路・骨髄路も取りやすいので、ショック抵抗性のVF/pVTに対してはアミオダロンを入れることが多いはずです。ガイドライン通り「ショック(複数回)+アドレナリン+アミオダロン(またはリドカイン/ニフェカラント)」のバンドルを一通りやり切る、というイメージです。

結論として、「アミオダロンは院内CPAだけの薬」というわけではありませんが、日本の制度と現場の制約を考えると、「院外では使えない/使う余裕がないことが多い」「院内では適応があれば積極的に使う」という棲み分けになっているのが実情だと思います。 ここからは個人的な見解ですが、病院前でVFが継続しているときは来院後すぐにECPRを施行するため、あまりプロトコール通りに治療されている印象が薄れることはあるかもしれません。ですがこの場合もアミオダロンは基本的に投与されていると私は理解しています。

Q8:高度気道確保後の非同期CPRと、アドレナリン後の上肢挙上

「⑴ALSに関して 現状、高度な気道確保後は『非同期CPR』を実施していますが、近年、高度な気道確保後→『同期CPR』をしたほうがいいんじゃないか?という意見も出たりしています。三谷先生はどのような考えをお持ちでしょうか?お聞かせください。⑵薬剤投与に関して アドレナリン投与後、外液20mlフラッシュは現場でもやりますが、上肢挙上20秒も併用しています。これは効果があるものなんでしょうか?やらないよりはやったほうがいい。ぐらいのレベルでしょうか?」

まず⑴の高度気道確保後のCPRについてです。

AHA2025のALSアルゴリズムでは、高度気道確保(気管挿管やSGA)が入っていない場合は30:2の圧迫・換気サイクル、高度気道確保が入ったあとは「胸骨圧迫は100〜120回/分で連続、換気は6秒に1回(10回/分)で圧迫と同期させずに入れる」と、従来と同じく「非同期CPR」を標準として記載しています。

「高度気道確保後も30:2に戻した方がいいのでは?」という議論は、主に「換気が疎かになるのでは」という懸念から出てきていますが、現時点で「非同期より同期の方がアウトカムが良い」と言えるような決定的なデータはありません。JRC ALS2025でも、高度気道確保後の非同期CPRを基本とする立場は変えていません。

実務上は、「原則非同期で実施する。ただし、人数が足りず換気が完全に崩壊しているような状況では一時的に30:2に戻すこともあり得るが、標準的ではない」といった理解で運用するのが現実的だと思います。看護師さんには、「気管挿管したら、圧迫は止めずに押し続ける。息は6秒に1回だけ入れる。たくさん入れればいいわけではなく、過換気はむしろ害になる」というシンプルなメッセージを繰り返し強調した方が伝わりやすいです。

次に⑵のアドレナリン後の20mLフラッシュ+上肢挙上についてです。

「薬をボーラスで入れたら20mLの生理食塩水でフラッシュする」というのは、AHA/ACLSのテキストやコースでもかなりはっきり推奨されており、末梢路から投与した薬剤をできるだけ早く中枢循環に乗せるための標準的なテクニックです。

一方「上肢挙上」は、重力で静脈還流を少しでも早めようという発想で、理屈としては間違っていませんが、これ単独でアウトカム改善を示したような大規模試験はありません 。エビデンスレベルとしては正直「低い」です。ただ、「害はほぼゼロで、理屈には合う」ので、「20mLフラッシュは必須、腕を上げるのは”やらないよりはやった方が良さそう”くらいの位置づけ」と考えるのが妥当だと思いますが、その時間があったら他の蘇生行為や治療介入を優先したほうがいいのではないかと個人的には考えます。

少なくとも、「フラッシュを省略して腕だけ上げる」のは本末転倒なので、看護師教育としては「ボーラス薬のあとに20mLフラッシュは必ずやる。余裕があれば腕も少し持ち上げてあげるが、慣習的なものでやらなくてもよい」という順番を徹底した方がよいと思います。

Q9:PEAやasystoleで脈確認とアミオダロンはどうする?

「1、PEA、pVTの脈ナシの確認は初回のみで、その後はROSC兆候が出た際に初めて確認するということでよろしいでしょうか?2、PEA、asysのアミオダロン投与の三回目以降のタイミング、量や上限を教えていただきたいです。私の理解不足かもしれませんが、ご教示いただきたいです」

まず1の脈の確認についてです。

AHA2025やJRC ALS2025のアルゴリズムでは、「CPAだと思ったら最初に10秒以内で脈を確認するが、その後は定期的に脈を触り直してはいけない」というメッセージが一貫しています。 2分間のCPRサイクルの中で時間が経過したらモニター上でリズムチェックを、そしてパルスチェック行うという流れが一般的です。

したがって、PEAやpVTで「脈がない」と一度確認したあとは、原則として「2分ごとのリズムチェック+ROSC兆候が出たときのみ脈確認」でよく、毎サイクルごとに頸動脈を触り直す必要はありませんし、むしろCPRの中断時間が増えるのでやるべきではありません。 ここからは個人的な見解ですが、このROSC兆候については体動などで判断すると、例えば上肢がベッドサイドから落ちただけでも体動と誤って認識するかもしれないわけで、私は原則通り2分おきに確認としています。 ROSCしたか?!と思ってCPRを止めて、循環を止めることのほうがデメリットが大きいと考えますので。

次に2の「PEA/asystoleに対するアミオダロン」ですが、ここは誤解が入りやすいところなので、はっきり線を引いた方がいい部分です。

AHA2025のAdult Cardiac Arrest Algorithmでも、JRC ALS2025の本文でも、アミオダロンやリドカインなどの抗不整脈薬が推奨されているのは「電気ショック抵抗性のVF/pVT」に対してだけです。PEAや心静止に対してroutineにアミオダロンを投与することは推奨されていませんし、「3回目以降のタイミング・量・上限」といったスケジュールもガイドライン上は存在しません。

PEA/asystoleでやるべきことはあくまで、「高品質CPR」「アドレナリンの早期投与と3〜5分ごとの反復」「心停止の原因となる5Hと5T(低酸素、低容量、低体温、心タンポナーデ、肺塞栓など)の検索と治療」です。アミオダロンを足しても、電気ショックを打つ波形ではないので意味がなく、薬害だけ増やすことになります。

看護師さんや若手医師には、「アミオダロンは”VF/pVT専用の薬”であり、PEAや心静止では使わない」とはっきり教えておいた方が安全です。

Q11:CPRを終了するタイミングはどう判断する?

「CPRを終了するタイミングについてどのような指標を元にしているか教えて頂きたいです(ご家族のこと、ラボデータなど)」

この質問は、現場で一番悩むところですよね。

2025年版のAHA/JRCのガイドラインでは、「CPRをいつ終わらせるか」について、単純な時間のカットオフはあえて示していません。その代わりに、「高品質CPRと標準ALSを行ったかどうか」「心停止の原因が可逆的かどうか」「モニタリング所見」「患者の基礎疾患や事前の意思表示」「地域のTORルール」など、複数の要素を統合して判断するように書かれています。

医学的な視点でよく使われる指標を挙げると、まず「経過時間」と「初期リズム」です。 目撃されてすぐにCPRとショックが始まったVF/pVTなら、相対的に長く粘る価値がありますが、目撃もバイスタンダーCPRもなく時間が経ってから発見されたasystoleは、20〜30分以上のALSでもROSC・社会復帰の可能性は極めて低いことが多く、ある程度のところで中止を検討します。

次に、ETCO₂やエコーなどのモニタリングです。高品質CPRをしているにもかかわらず、ETCO₂が一貫して10mmHg未満から上がってこない場合、自発循環再開の可能性は極めて低いことが分かっています。また、POCUSで心収縮が全く見えない状態が長く続く場合も、同様です。

採血項目としては、極端なアシドーシス(pH < 6.8)や乳酸 > 15–20mmol/Lなどは予後不良と関連しますが、これだけを理由にCPRを即中止する根拠にはなっていません。多くの施設では、「時間」「リズム」「ETCO₂/エコー」「原因の可逆性」を主要な判断材料にし、ラボはあくまで補助情報として扱っていると思います。

家族・倫理の面では、「もともと進行癌で終末期だった」「重度認知症で寝たきりだった」「事前指示書や口頭で”延命措置は望まない”と言っていた」といった情報があれば、それもCPR継続の是非を考える重要な材料になります。 ただし、「やめる/続ける」を家族に丸投げするのではなく、「これだけの時間と治療を尽くしたが、これ以上続けても元の生活に戻れる可能性はほとんどないと医療チームは判断している。そのうえで、ここでCPRを終えることを提案したい」という形で、医療側が判断と提案の責任を負うことが、2025年の倫理パートでも強調されています。

家族への説明としては、「何分やったからやめる」という言い方ではなく、「標準的にできることは全てやり切った上で、これ以上続けても苦痛と侵襲だけが増えてしまう」ということを、言葉にして伝えることが重要だと思います。

一緒に学び続けていきましょう

今回のセミナーでいただいた質問は、どれも「教科書には書いていない、結局現場ではどうするの?」という、本当に大切な疑問ばかりでした。

ガイドラインは、あくまで「標準」を示すものです。でも、実際の現場は、人手も、環境も、患者さんの状態も、毎回違います。だから、ガイドラインの「意図」を理解した上で、目の前の患者さんに何が最善かを、チームで判断していくことが大切なんだと思います。

2025年版のAHAとJRCのガイドラインは、大きく変わった部分もあれば、変わらない原則もあります。でも、どちらも「高品質なCPR」と「チーム全体での共通理解」が、何よりも大切だというメッセージを一貫して伝えています。

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一緒に学び、一緒に救急について理解を深めていきましょう!