血液ガス分析で「代謝性アシドーシスかアルカローシスか」を見極める際、BE(Base Excess)は一目で変化を把握できる便利な指標です。
本記事では、ステップ解析の基本に加え、BEを使った迅速なアセスメント法やメイロン投与量の算出に役立つ計算式などをわかりやすく解説します。
看護師や研修医の方は必見ですよ!
【対象のおすすめ読者】
ERローテ中の研修医の先生方ERで勤務する看護師の皆さま
そしてERローテ中の専攻医の先生方
これらの方々には、ぜひ読んでいただきたい内容です。
明日から実践できるアクションプランや看護師さん向けのコラムもありますので、最後までお付き合いくださいね!
1.BEとは何か?
Base Excess(BE)とは、正常な二酸化炭素分圧(pCO2)の血液を、正常pH(7.4)に戻すために必要な理論的な酸の量を指します。
- BEがプラスの場合:pH 7.4にするために酸が必要 ⇒ 代謝性アルカローシスを示唆
- BEがマイナスの場合:pH 7.4にするために酸が不要(すでに過剰な酸がある) ⇒ 代謝性アシドーシスを示唆
言い換えれば、BEは代謝性アシドーシス・アルカローシスを一目で把握できる指標です。
ただし、血液ガス分析全体を評価する際には、従来どおりのステップ解析(pH・pCO2・HCO3^-の順にチェックする方法)に沿って総合的に判断することが推奨されます。
2.BEを活用するタイミング
- 初期評価時点の血液ガス分析
- 看護師や研修医が患者さんの状態を素早く把握したいとき、BEを見れば代謝性変化の方向性を一目で判断できます。
- ただし、呼吸性変化との兼ね合いもあるため、pCO2やpH、Anion Gapなどを併用した総合評価が大切です。
- メイロン(重炭酸ナトリウム)投与量を決めるとき
- Base Excessを指標にして、不足している塩基量(Base Deficit)を推定し、メイロン投与量を算出する方法があります。
- 具体的には、 塩基必要量(mEq)=Base Deficit(mEq/L)×0.2×体重(kg)
- BEがマイナス10の場合、Base Deficit = 10 mEq/L とみなすなどの計算例があります。
- メイロン静注8.4%で補正する際など、重症アシドーシスの管理を考えるときに活用されます。
3.BEの扱い方と注意点
- ステップ解析が基本:pH・pCO2・HCO3^-(またはTCO2)を順に見て、代謝性 or 呼吸性かを判断したうえで、BEを参考にするほうが、初心者には確実です。
- BEだけに頼りすぎない:呼吸性アシドーシスや代謝性アルカローシスなどが複雑に混在しているときは、BE単独では解釈が難しくなる場合もあります。
- 計算不要で一目でわかる利点:定性的に「+10」「-8」などの数字を見るだけで、代謝性アシドーシスなのかアルカローシスなのかがわかるため、即座のベッドサイド判断に有用。
4.初期評価での血液ガス分析:BEからわかること
- BEが大きくマイナス(例:-10以下)
- 代謝性アシドーシスが強く疑われ、重症患者の場合は乳酸アシドーシスやケトアシドーシス、敗血症などの可能性を考慮。
- 輸液補正やメイロン投与の必要性を含め、原因検索(Anion Gap評価など)を併せて行う。
- BEが大きくプラス(例:+10以上)
- 代謝性アルカローシスを示唆。過剰な利尿剤使用や嘔吐、電解質異常などの原因を探る。
- 呼吸性代償があるときはpCO2との相関も含めて総合評価する。
5.メイロン投与時の不足塩基量の計算法
塩基必要量(mEq) = 不足塩基量(Base Deficit mEq/L) × 0.2 × 体重(kg)
- 例えば、体重50kgの方でBE(Base Deficit)が-10の人をBE=0まで補正したい場合は、Base Deficit=10 mEq/L とみなし、 塩基必要量(mEq)=10×0.2×50=100
- メイロン静注8.4%の場合は1mLあたり約1mEqの重炭酸イオンが含まれるため、その必要量をmLに置き換えて計算すると、100mlとなりますね。
ただし、実際の臨床では、投与量の一括補正はリスクもあり、呼吸状態や腎機能、電解質バランスなどを考慮しながら少量ずつ投与し、再度評価していくことが多いです。
まとめ
- BE(Base Excess)は、代謝性アシドーシス or アルカローシスを一目で把握できる便利な指標。
- 血液ガス分析ではステップ解析を基本としつつ、BEを補助的に使うことで迅速なアセスメントが可能。
- メイロン投与量を計算するときなど、不足塩基量(Base Deficit)の推定に役立つ。
- ただし、複数の酸塩基平衡異常が混在するケースも多いため、pH・pCO2・HCO3-やAnion Gapとの総合評価が大切。
看護師や研修医の方々は、BEを“もうひとつの指標”として上手に活用し、患者さんの代謝状態を適切に把握してみてください。
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参考文献
みんなの救命救急科