学習

【非専門科にも役立つ】肩の打撲で済ませない!鎖骨遠位端骨折・肩鎖関節脱臼の基本を知ろう

鎖骨遠位端骨折や肩鎖関節脱臼は、整形外科専門医の領域…というイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。
しかし実際には、スポーツ現場や日常の転倒などでも比較的よくみられる外傷であり、非専門科の医師や看護師が遭遇する機会も決して少なくありません。

そこで本記事では、「鎖骨遠位端骨折・肩鎖関節脱臼の特徴や治療法」について、最新の素材や術式がどのように進化してきたかも交えてわかりやすく解説します。

ぜひ最後までご覧いただき、患者さんに最適な対応ができるヒントを持ち帰っていただければ幸いです。

この記事は「整形外科Surgical Technique 2024 vol.14 no.3」から一部を抜粋・編集し、許諾を得て掲載しています。
参考文献や詳細手技、さらには図表などをより深く学びたい方は、ぜひ実際に書籍を手に取ってご覧ください。

1.鎖骨遠位端骨折・肩鎖関節脱臼とは?

鎖骨遠位端骨折と肩鎖関節脱臼は、どちらも肩鎖関節周囲の外傷です。

  • 鎖骨遠位端骨折:鎖骨の先端(肩峰側)近くで折れてしまう骨折
  • 肩鎖関節脱臼:鎖骨と肩峰をつなぐ肩鎖関節が強い外力で“ずれ”や“亜脱臼”になる

いずれも肩鎖関節を安定化させる靱帯(肩鎖靱帯、烏口鎖骨靱帯など)が損傷を受けているかが重要で、骨折や脱臼の程度によって治療法が異なります。

2.素材や技術の進化と治療法の変遷

近年では、高強度糸や人工靱帯素材の発展、解剖学的形状のロッキングプレートの登場など、内固定器具そのものが大きく進化してきました。

2-1.鎖骨遠位端骨折:フックプレートからロッキングプレートへ

従来、フックプレート(ブリッジングプレート)が鎖骨遠位端骨折の“ゴールデンスタンダード”と考えられていました。しかし、フックが肩峰に引っかかることで腱板損傷や関節可動域制限などの合併症が問題に…。

そこで近年は、解剖学的な形状のロッキングプレートが積極的に使われるようになり、骨片をしっかり固定しつつも合併症を軽減できる手術が主流となっています。また必要に応じて、烏口鎖骨靱帯再建を併用して固定性をさらに高めるケースも多く報告されています。

2-2.肩鎖関節脱臼:鏡視下手術の普及

 

以前はフックプレートやワイヤーによる固定も一般的でしたが、同様に合併症や再手術の必要性が課題に。

近年は鏡視下手術の技術が格段に進歩し、人工靱帯などを使った烏口鎖骨靱帯再建術が普及。鎖骨・肩甲骨の「サスペンションメカニズム」を正常に近づけることで、早期回復と良好な機能維持が期待されています。

3.非専門医や看護師が知っておくべきポイント

3-1.画像所見と適切なタイミングでの専門科紹介

肩周囲の骨折や脱臼は一見すると「打撲かな?」で済ませてしまいがちですが、レントゲンやCT、MRIで詳細に評価すると鎖骨遠位端の骨折や靱帯損傷が潜んでいることも珍しくありません。特に、靱帯損傷については以下のRockwood分類での損傷可能性の評価や、患側に荷重をかけた状態のレントゲン撮影が重要なので、是非確認しましょう。


非専門医の先生でも、肩鎖関節付近の微妙なずれや骨片転位に気づけるように画像所見を習得し、必要であれば早期に整形外科専門医へコンサルトできる体制を整えておくことが大切です。

3-2.看護師:外固定の基本と患者指導

鎖骨を安静に保つための三角巾体幹バンドなど、外固定の方法を理解しておくと、患者さんへの声かけや指導がスムーズになります。
「どの程度の痛みがあれば再診するべきか」「どんな動作に気をつけるべきか」「抜糸や抜釘(ばってい)のタイミング」など、患者さんが不安になりやすい点をフォローできるのも、看護師として大きな役割です。

Point:非専門医も肩関節周囲の画像診断に慣れて、適切な時期に専門科へ紹介できるようにしておきましょう。
看護師は外固定方法や日常生活上の注意点についてしっかり学び、患者さんへの分かりやすい説明を心がけましょう。

4.まとめ:合併症を防ぎ、早期回復を目指すには?

  • 鎖骨遠位端骨折は、ロッキングプレートによるノンブリッジング固定や人工靱帯を併用した烏口鎖骨靱帯再建により、早期から安定した骨癒合と機能回復が得やすくなっています。
  • 肩鎖関節脱臼では、靱帯損傷の程度や脱臼の方向によって治療法が変わるため、的確な分類(Rockwood分類)が重要。鏡視下での再建術は低侵襲かつ抜去手術が不要な場合が多く、合併症リスクを抑えつつ機能回復が期待できます。
  • 非専門医や看護師も“肩鎖関節付近の骨折・脱臼を見逃さない”視点をもち、早期に専門医との連携を図ることが大切です。
この記事で取り上げた内容は「整形外科Surgical Technique 2024 vol.14 no.3」の特集を参考にしています。より詳しく知りたい方は、ぜひ書籍を手に取ってご覧ください。肩鎖関節外傷の最先端手技を学ぶ貴重な機会になるはずです。

鎖骨遠位端骨折や肩鎖関節脱臼の治療は日進月歩です。患者さんの生活やスポーツへの早期復帰を目指して、最新の知見と技術をうまく活用していきましょう。
非専門医や看護師の方も、外固定・リハビリ・日常生活指導などでチーム医療を支える重要な役割を担っています。
これを機に、肩関節周囲の外傷にぜひ目を向けてみてください。

 

この記事を読んで参考になった方、面白いと思ってくださった方は

今後も定期的に記事を更新していきますので

各種SNSの登録よろしくお願いいたします!

【公式ラインアカウント】

各種SNSでのコンテンツ配信を定期的に配信!

この中でしか見られない限定動画配信もしています◎

日々のスキマ時間に気軽に見ることができるので、興味があれば是非登録していただければ幸いです!

コチラのボタンをタップ!👇

友だち追加

みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります!

参考文献(一部抜粋)

  1. Neer CS. Fractures of the distal third of the clavicle. Clin Orthop Relat Res. 58, 1968, 43-50.
  2. Craig E. “Fractures of the clavicle”. The shoulder. 2nd ed. Rockwood CA and Matsen FA. Philadelphia, WB Saunders, 1998, 428-82.
  3. Robinson CM. Fractures of the clavicle in the adult. Epidemiology and classification. J Bone Joint Surg Br. 80, 1998, 476-84.