今回は、
ドクターヘリでの患者搬送などの際に知っておくべき医学的・物理的知識の基礎についてまとめてみた
記事です。初期研修医の目線から学んで感じたことを中心に書いていきたいと思います。
これは実際にヘリに乗ってみて、胃がむかむかして気持ち悪い!笑
と感じ、
きっと上空にいるときは色々と身体に影響を与えるんだろうな。
減圧症とか本で読んだことあるし…詳しく学んだことがないから調べてみよう!
と思ったのが記事を書くきっかけとなりました!
この記事は、
●ドクターヘリ、航空医学に興味のある医学生・研修医
●飛行機酔いや高山病、減圧症って何?と疑問に感じている一般の方々
●高校物理がどのように普段の生活や活動に使われているのかを知りたい高校生
のみなさんに読んでいただきたい記事です!
医療関係の方でなくてもなるべく読みやすいよう注釈などもつけたので、ぜひ最後まで読んでみてください!
ドクターヘリのことについて知りたい方はこちらをチェック👇
1.航空医学とは
飛行機やヘリコプターで空を飛んでいるときを想像してみてください。
上空を飛行しているとき、僕たちが普段地上で生活しているときと比べると、
気圧や温度、湿度などの条件が大きく異なります。
この条件の変化によって身体に及ぼす影響についての学問が、航空医学です。
この航空医学の基礎を理解するためには、ボイル・シャルルの法則(高校で聞いたことある!)を中心とした、いくつかの物理の法則を学ぶ必要があります。
とはいっても、高校物理のように実際に体積や気圧を計算する必要はないので笑、
分かりやすくさらっとまとめてみたいと思います。
(詳しい内容に興味がある方はそれぞれ本を読んでみてください!)
2.必要となる高校化学の基本的知識ーなるべく感覚的に理解!
2.-1 ボイル・シャルルの法則
この法則については高校で聞いたことがある方も多いと思います。
それぞれの定義については、
ボイルの法則
温度が一定のもとでは、物質量が一定の気体について、圧力Pは体積Vに反比例する
PV=k(一定) または P1V1=P2V2=k(一定)
シャルルの法則
圧力が一定のもとでは、物質量が一定の気体について絶対温度Tは体積Vに比例する
VT=k または V1/T1=V2/T2=k
そしてこれら二つの法則を合わせると、
ボイル・シャルルの法則
物質量が一定の気体について、体積Vは圧力Pに反比例し、絶対温度Tに比例する。
PV/T=k または P1V1/T1=P2V2/T2=k
となります。
この法則を用いて飛行中に起こることを簡単に説明すると、
上空は地上より気圧が低くなるので、気体は膨張する
上空は地上より温度が低いので、外気の体積は機内の体積より小さい
となります。
お腹のガスが上空で膨張したのが、胃のムカムカの原因の一つだったことがわかります!
2.-2 ダルトンの法則
このあたりから僕にとってはあまり聞き覚えがない法則が出てきます。
スキューバーダイビングをされる方にはなじみがある法則のようです。
このダルトンの法則とは、
ダルトンの法則
混合ガスの圧力については、圧の総和Ptは、各ガスの分圧の総和になる
Pt=P1+P2+…+Pn
というものです。
具体的に地上(海抜0m)での酸素の圧PO2を考えてみましょう。
大気圧が760mmHgでPO2の割合が21%であると考えると、
760×21%≒160mmHg
一方、高度3000mの上空であれば、気圧が523mmHgと低くなるので、
523×21%≒110mmHg
と上空のほうが酸素の分圧が低いことがわかります。
すなわち、上空の酸素を吸い続けると低酸素状態となるのです!
これは山でも当てはまることで、
高山病や高地トレーニングを想像するとわかりやすいですね。
簡単に説明してみます。
●高山病は地上よりも酸素が薄い空気を吸い続けることで低酸素状態となり頭痛、消化器症状が出現する
(頭痛は低酸素状態になってもなんとか脳に酸素を送ろうと動脈が収縮するため起きるといわれている)
●高地トレーニングとは、酸素の薄い空気で運動することで酸素の供給が少ない状態でもよいパフォーマンスができるように訓練するトレーニング
2.-3ヘンリーの法則
3つ目は、ヘンリーの法則です。
ヘンリーの法則
液体中に溶解しているガスの量は、溶解しているガスの分圧に比例する
イメージとしては、
紙くずをゴミ箱に捨てるときにある程度紙くずを入れた後、
自分の体重をかけて押し込んだ方がたくさん紙くずが入る!
みたいな感じですかね。
この法則で説明がつく疾患として、減圧症があります。
ダイビングなどで潜水をするとき、水圧のため水中では10m深くなると1気圧上昇します。
この高い圧によって血液内にたくさん窒素が解けた後、
急に浮上して地上の低い気圧にさらされることで
窒素がガス化して血中に気泡を生じます。
このガスが血管が詰まることで胸痛や呼吸困難を起こすのが減圧症です。
このためスキューバーダイビングをしたあとは、
少なくとも24時間後に飛行機に乗るよう推奨されています。
水中の高い気圧から、気圧の低い上空にいくと急激に気圧の変化が起こり減圧症の原因となるからです。
3.まとめ
この記事をまとめると、
●上空では気体は膨張!胃が張ってムカムカすることも…
●高度が高い居場所では酸素濃度が低く、低酸素状態になりやすい!
●ダイビングをした後は減圧症に注意!
が要点となるかと思います!
みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります!
【参考・参照文献およびサイト】
・ドクターヘリハンドブック~ドクターヘリ安全運航のために 日本航空医学会監修
・HP理系ラボ ボイル・シャルルの法則