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肺動静脈瘻とは?【CT画像と心エコーで見抜く、時に致死的となりえる難病です】

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今回は、臨床で稀に出会う事のある、肺動静脈瘻についてまとめました。

出血を引き起こすと致命的になる疾患であることはもちろん、

治療後の合併症の頻度も少なくなく、注意深く経過観察が必要な疾患なのでしっかりと把握しておきましょう。

 

1.疫学・原因

肺動静脈瘻とは、肺動脈と肺静脈との異常短絡をきたす血管奇形のことで、頻度としては稀な疾患です。

男女比は1:1.5~2と女性に多いのが特徴ですが、有病率については不明です1)

原因としては、

遺伝性出血性末梢血管拡張症(Hereditary hemorrhagic telangiectasia: HHT)、肝硬変胸部外傷や先天性心疾患に対する外科治療後、転移性心臓腫瘍、住血吸虫症、放線菌症、特発性などがあります。

2.画像所見

胸部単純X線写真やCT画像で辺縁平滑な結節に流入・流出血管の陰影が確認できるのが典型的であり、このような所見が得られれば確定診断に至ります。

ERなどのシチュエーションで上記の所見を見逃さないよう、普段から読影能力を磨いておくことが大切ですね…!👇

【レビュー】ユキティのER画像Teaching File【ERでの読影にはこの1冊】ER・救急外来での治療方針や帰宅可能判断に大きく関与するCTの画像所見。 大変重要である一方で、体系だって学ぶ機会が少ないのもまた...

 

また、特徴的な画像検査としては、

経胸壁コントラスト心エコー(Transthoracic contrast echocardiography: TTCE)があり、右左シャントの重症度評価として有用です。

シャントの程度によってgrade分類を行い、それぞれのgradeで治療方針を決定します。ASDやVSDによく使われる分類です。

グレード0→泡なし
グレード1→左室に1-30個の泡
グレード2→左室に30-100個の泡

右左シャントはgrade 0またはgrade 1の無症候例では合併症リスクが低い事や、 塞栓術で治療可能な病変が存在しない可能性が高いことから追加の検査を行う必要性は低いと判断されます。

一方で、右左シャントがgrade 2~3の場合は合併症リスクが高く治療対象となるといわれています。

3.症状と治療について

症状については全体の約6割は無症状であるのが特徴で、胸部CT検査などで偶然見つかることもあります。

残りの4割は呼吸困難や胸痛、咳嗽などの症状や脳梗塞、脳膿瘍などの合併症が契機となり発見されることがあるといわれています1)。

治療適応とフォローに関してが当疾患の肝となるので以下にまとめました👇

AVMは脳梗塞などの致死的な合併症の原因となるので、無症候例でもコイル塞栓術の治療適応となり得る

CTで流入血管径(Feeding Artery Diameter: FAD)< 2 mmの無症候例では、1年ごとの臨床症状のフォローと3-5年ごとの単純CT撮影が推奨されている2)。

確かに、ERで経験する脳出血の患者さんで、AVMによる出血の場合はミゼラブルな契機をたどることも多い印象があります。肺血管の場合も大量出血が起きた場合は致死的となりえます。AVMは恐ろしいですね…。

フォローのCTでFAD ≧ 2-3 mmの場合は肺血管造影を行い、FADの再評価をします。 可能であればそのまま塞栓術を施行するようです2)。

塞栓術施行後の合併症や再開通、新規病変の出現など根治的治療に難渋するのも問う疾患の特徴です。以下にまとめてみました。

〈塞栓術失敗症例, 再開通・新規病変の出現など〉1)

●塞栓術施行後, 20%未満の確率で治療の失敗や再開通, 新規病変の出現を来すことがある.

●塞栓術失敗の原因は使用コイル数の不足や流入血管の塞栓部位の不適, サイズの合わないコイルを使用したことなどが挙げられる.

●基本的にはこれらの場合でも塞栓術を繰り返し行い完治を目指すことが推奨される. 塞栓術を繰り返しても失敗する場合は外科的治療を考慮する.

最後に、肺動静脈瘻のまとめはこちら👇

AVMは無症候例でも脳梗塞など致死的な合併症を起こすリスクが高い場合があり, 積極的に治療を行う必要がある.

治療は塞栓術が第一選択であるが, 本症例のように再開通を来すことがあるため治療後の経過観察は慎重に行う.

4.引用文献

1)Jess Mandel, MDBarbara LeVarge, MD. Epidemiology, pathogenesis, clinical evaluation, and diagnosis of pulmonary veno-occlusive disease in adults. UpToDate Inc. http://www.uptodate.com (Accessed on May 05, 2018.)

2)V. M. M. Vorselaars, S. Velthuis, R. J. Snijder, C. J. J. Westermann, J. A. Vos, J. J. Mager, and M. C. Post, “Follow-up of pulmonary right-to-left shunt in hereditary haemorrhagic telangiectasia.,” Eur. Respir. J., vol. 47, no. 6, pp. 1750–7, Jun. 2016.

 

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