2020年夏クールのドラマ『MIU404』
素敵な俳優の方々、テンポの良さ、明確なメッセージ性を持ったテーマなど、個人的にはどれをとっても最近見ているドラマの中でもトップレベルで面白いと感じます。
ここまでハマったのは久しぶりかもしれない…
当直明けに放心状態で帰宅し、シャワーを浴びて何気なくこのドラマを見始めたところ、作りこまれた素晴らしいストーリーに夢中になってしまい録画していた3話を通して観てしまいました。
いつもは昼ご飯を食べるのもおっくうになって爆睡してしまうのに…笑
睡魔と闘いながらも高揚しながら観ていると、
このドラマは刑事ドラマではあるが、根底のテーマがなんだか自分自身が日々働く救急の現場と似通ったところがあるなと感じる部分が多々ありました。
業務中にタイムリミットがあり、シフト制。問題の初期対応に重点を置いており、原則として最終的には専門家に解決してもらうよう引継ぎをする…キーワードだけ抽出してもまさに救急外来で勤務する当直医ではないでしょうか。
今回は『MIU404』の簡単な概要を説明したうえで、ドラマ中の刑事たちの仕事と救急外来での業務の共通する部分を改めて書き記していきたいと思います。
その中で、救急の現場の業務の本質に近い部分である面白さ、奥深さ、もどかしさなどを医療従事者の方々はもちろん、一般の方々にも伝えられたらなと思います。
そして、もう一つ別の想定される読者像があるとすれば、『MIU404』のファンやドラマ好きの方々でしょうか。
こんな視点からこの刑事ドラマを見ることもできるのだとお伝えすることで、来週からの『MIU404』を視聴するのがもっと待ち遠しくなる、そんな記事をお届けできたら幸いです。
1.架空の警察捜査部隊、『機捜』
少しだけドラマ『MIU404』のあらすじについて、公式HPの内容を参考にさせていただきながら説明させていただきます。
当ドラマはダブルで主演を演じる綾野剛・星野源が警視庁“機動捜査隊”(通称:機捜)でバディを組み、24時間という限られた時間の中で犯人逮捕という最終目標に向けて全力投球するというもの。
ドラマのタイトルである『MIU404』の“MIU”とはMobile Investigative Unit(機動捜査隊)の頭文字であり、“404”は綾野と星野が演じる機動捜査隊員の二人を指すコールサインのことです。
警視庁には現在3つの機動捜査隊が存在するが、このドラマでは警視庁の働き方改革の一環で作られたという架空の設定の臨時部隊「警視庁刑事部・第4機動捜査隊」が舞台となっています。
警察の世界や刑事ドラマに疎い自分にとっては、この捜査隊が架空の存在であるという事さえこの記事を書くために調べるまで知らなかった…
二人はその第4機捜に所属し、第1〜3機捜のヘルプだけでなく、捜査1課などの各部署のヘルプも行う。普段の主な業務は覆面パトカーでのパトロール、110番通報があれば事件現場に急行しての初動捜査となります。
勤務は24時間制で、次の当番勤務は4日後。
初動捜査で事件が解決できない場合は専門の課に捜査を引き継ぎ、継続捜査は行わない。
つまり、街中で勃発する各事案に対し、24時間でできうる限り対処するのが彼らの仕事です。
2.タイムリミットと戦う、救命救急の現場
ここまで読んでいただいた方の中で、特に医療従事者の方は感じていただけるかもしれないですが、少なくとも救急医である自分はこの『機捜』と救急医の業務は本当によく似ていると思いました。
24時間といったタイムリミットがある点や、シフト制であること。
そして何より、初期対応に重点を置いた業務内容で最終的には専門家に解決をゆだねること…
一部例外はあるもののこれらはまさに救急外来で勤務する当直医の業務そのものではないかと感じました。
あらかじめ休みが決まっているシフト制だからこそ、体力をフルに使って最後までやり切れる点や、初動のスピード感が患者さんの予後改善(刑事でいうところの犯人逮捕か?)といった最終結果に直接寄与するあたりは著者が救急の仕事において好きなところです。
端的に表せば、『太く短く』働くといったところでしょうか。
そして、秒単位の判断をおこなうことで、分単位で患者さんの状態が改善してくる…時にヒリヒリするこの時間感覚に自分はやりがいを感じます。もちろん、いつもそう上手にいくことばかりではないのですが…
3.最後まで見届けられないもどかしさと、冷静でいること
先ほど述べたような点が救急の良い点であるとするなら、一般的に言われる救急の悪い点は患者を最後まで一人で完結して診察できないことも多いことと言えるでしょう。
ある程度疾患や患者さんの症状の原因を目星をつけた段階で、今後より専門的な治療や検査が必要であると判断した場合は、救急医は専門の科の先生に患者さんを引き継ぐ。
この業務の傾向を非難する一部の方々からは、救急科は割り振り屋で何も治療していないといわれることもあります。
もちろん救急医の中には「集中治療医」として最重症の患者さんを最初から最後まで治療しきるスペシャリストも数多くいます。著者自身、いつかはそのような専門性の高い救急医になりたいと憧れている一人ではあります。
一方で餅は餅屋という言葉もあるように、どれだけ修練を積んだ医師であっても専門外の内容は専門家に任せた方がいい場合もあります。それを判断するのも救急医の業務の一つではないかと思います。
確かに最後まで治療、診察しきれないもどかしさを感じることもある。
一方で、これは時にメリットとして働くこともあるとも思います。
例え適切なタイミングで最速で専門科に引き渡したとしても、大手術の末に命を落とすこと、はたまた意識が戻らず意識不明の重体になることは往々にして経験します。
その際介入してくださった専門科の方々は、スペシャリストとしての責任と誇りをもって全力で手術に臨んだのだから、その患者さんの意識が戻ることはないとわかっていても、何としても命を生き永らえさせようとさせる傾向にあります。
それが、本人さんやご家族の幸福と乖離してしまっていることは度々経験します。
そこで、患者さんの状態をもう少しニュートラルな視点で見ることが出来る救急医は、治療や本人の状態、家族背景のどれかに重点を置くことなく、あくまで中立的な立場で意思決定を促すことができる。。
冷静に自分の裁量を見極め、適切に依頼し、常に中立の立場から患者さんやご家族の幸せの観点からも判断を下す…コマンダーとしての救急医の業務も著者は気に入っています。
4.見届けるからこそ見えてくる、見たくないもの
最後に少し抽象的にはなりますが、自分が今回一番伝えたかった内容を書かせていただきます。
事件解決の最後まで見届けた先は、必ずしもハッピーエンドではないということ
このドラマの中でもあるように、被害者が実は加害者であったり、信じた人間に裏切られたり…物事は解決すれば必ずしもすべてが良い方向に転ぶわけではありません。
救命の世界でも同様であり、被害者の命を救えなかった一方で、極悪な加害者の命は助かることもあります。
もちろん命に重みづけはないので、医師はそこを分け隔てなく救命することが使命ではあるのですが、やはり医師も一人の人間。
ひとたび白衣を脱げばどこにもやり場のないやりきれなさを感じることもあります。
そういった人間の根底に触れられる命を最前線で扱う仕事に携わっているからこそ、人一倍生きている今を大事にしたいと感じるし、こういった経験を多くの方に伝えていきたいと日々思います。
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タイトルイラストは友人(@mio.uesaka)作です👇
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