「先生、患者さんが急に苦しそうです!蕁麻疹も出てきました!」
アナフィラキシーは、数分で死に至ることもある緊急事態です。
でも、適切な初期対応ができれば、多くの場合は救命できます。私も研修医の頃、初めてアナフィラキシーの患者さんを目の前にした時、「本当にアドレナリンを打っていいのかな…」と直前で手が震えたのを覚えています。
この記事では、アナフィラキシーの認識と初期対応、特に「アドレナリンを打つ判断」について解説します(1)。
アナフィラキシーを認識する
アナフィラキシーの診断基準を確認しましょう(1,2)。
⚠️ アナフィラキシーの診断基準
以下のいずれかを満たす場合、アナフィラキシーを強く疑う:
- 皮膚・粘膜症状(蕁麻疹、紅潮、浮腫)+呼吸器症状または血圧低下
- アレルゲン曝露後に2つ以上の臓器症状(皮膚、呼吸器、消化器、循環器)
- 既知のアレルゲン曝露後の血圧低下
ポイントは、皮膚症状がなくてもアナフィラキシーはあり得るということ。
約10-20%の患者では皮膚症状が出ません(2)。
💡 臨床のコツ
「蕁麻疹がないからアナフィラキシーじゃない」は危険な思い込み。
呼吸困難+血圧低下があれば疑いましょう(2)。
アドレナリンが第一選択
アナフィラキシーの治療で最も重要なのは、アドレナリン(エピネフリン)の筋注です(1,3)。
✅ アドレナリン筋注
- 投与量:0.3-0.5 mg(成人)
- 投与経路:大腿外側に筋注(皮下注ではない!)
- 製剤:アドレナリン1mg/mL(ボスミン®)を0.3-0.5mL
- 反復投与:5-15分で改善なければ再投与可
なぜ筋注なのでしょう?
それは、皮下注より吸収が速く、血中濃度が早く上昇するからです(3)。
アドレナリンを打つ勇気
「本当にアナフィラキシーかな…」と迷って、アドレナリン投与が遅れることがあります(3,4)。
💡 アドレナリンを打つべき理由
- 早期投与で予後改善:投与が遅れるほど死亡率が上昇
- 副作用は軽微:動悸、頻脈、振戦など、一過性で重篤ではない
- 打たないリスク > 打つリスク:迷ったら打つ方が安全
アナフィラキシー死亡例の多くは、アドレナリン投与の遅れが原因とされています(4)。
「疑ったら打つ!」が原則です。
💡 臨床のコツ
アドレナリンは「打って後悔」より「打たずに後悔」の方がはるかに危険。迷ったら打ちましょう(4)。
アドレナリン以外の治療
アドレナリン投与と並行して、以下も行います(1,5)。
📋 アナフィラキシーの初期対応まとめ
- アレルゲン除去:原因物質の投与中止、蜂の針を抜く
- 体位:仰臥位+下肢挙上(ショック体位)
- 酸素投与:高流量で開始
- 静脈路確保:太い末梢ルート
- 輸液:生理食塩水を急速投与
- アドレナリン筋注:0.3-0.5 mg
- モニタリング:血圧、SpO₂、心電図
抗ヒスタミン薬やステロイドは補助的な治療です。
アドレナリンの代わりにはなりません(5)。
二相性反応に注意
アナフィラキシーには「二相性反応」があります(1,5)。
📊 二相性反応とは
- 定義:初期反応が改善した後、再び症状が出現
- 頻度:約1-20%(報告により差がある)
- 時間:通常1-72時間後(多くは8時間以内)
- 対応:経過観察入院を考慮(最低4-6時間)
💡 臨床のコツ
「良くなったから帰宅」は危険。重症例は経過観察入院を検討しましょう(5)。
経過観察できるベッドがERにある施設は、閾値が低くなりますね。
あなたの施設ではどうですか?
まとめ
✅ アナフィラキシー対応のポイント
- 早期認識:皮膚症状がなくてもあり得る
- アドレナリン筋注が第一選択:0.3-0.5 mg、大腿外側に筋注しましょう
- 迷ったら打つ:打たないリスクの方が大きい
- 二相性反応に注意:経過観察入院を考慮する
引用文献
- Cardona V, Ansotegui IJ, Ebisawa M, et al. World Allergy Organization Anaphylaxis Guidance 2020. World Allergy Organ J. 2020;13(10):100472.
- Sampson HA, Muñoz-Furlong A, Campbell RL, et al. Second symposium on the definition and management of anaphylaxis: summary report. J Allergy Clin Immunol. 2006;117(2):391-397.
- Simons FE, Ardusso LR, Bilò MB, et al. World Allergy Organization Guidelines for the Assessment and Management of Anaphylaxis. World Allergy Organ J. 2011;4(2):13-37.
- Pumphrey RS. Lessons for management of anaphylaxis from a study of fatal reactions. Clin Exp Allergy. 2000;30(8):1144-1150.
- Ring J, Beyer K, Biedermann T, et al. Guideline (S2k) on acute therapy and management of anaphylaxis: 2021 update. Allergo J Int. 2021;30(1):1-25.
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