「先生、○○号室の患者さん、バイタルがおかしいんです!」
この報告を受けた瞬間、あなたの頭の中では何がよぎりますか?
私も研修医1年目の頃は、この報告を受けると心臓がドキドキして、何から手をつけていいかわからなくなることがありました。
でも、実は「まず何をするか」には、明確な手順があります。
この記事では、バイタルが悪い患者さんに遭遇した時の初動をお伝えします(1)。
Step 1:まず患者さんのところへ行く
当たり前のことですが、最も大切なことです(1)。
📋 まずベッドサイドへ
- 電話やカルテだけで判断しない
- 自分の目で患者さんを見る
- 「すぐ行きます」と伝えて、急いで向かう
💡 臨床のコツ
「バイタルが悪い」と呼ばれたら、電話で詳しく聞いている間に患者さんの状態が悪化することもあります。まず行きましょう(1)。
Step 2:第一印象を確認する(20-30秒)
患者さんのところに着いたら、まず第一印象を確認します(1,2)。
💡 第一印象の評価(20-30秒)
- A(Appearance):見た目。顔色、表情、体動
- B(Breathing):呼吸。呼吸の仕方、努力呼吸の有無
- C(Circulation):循環。皮膚の色、冷感
この3つを見るだけで、「ヤバい」か「そうでもない」かが大体わかります。
Step 3:ABCDを評価・安定化する
第一印象で「緊急」と判断したら、ABCDアプローチで評価と安定化を同時に進めます(1,2)。
✅ ABCDアプローチ
| 評価 | 確認項目 | 介入 |
|---|---|---|
| A(気道) | 発声できる?いびき様呼吸? | 体位調整、吸引、気道確保 |
| B(呼吸) | 呼吸数、SpO₂、努力呼吸? | 酸素投与、BVM換気 |
| C(循環) | 血圧、脈拍、CRT、皮膚 | 静脈路確保、輸液 |
| D(意識) | AVPU/GCS、瞳孔、血糖 | 低血糖補正、頭部CT検討 |
ABCDは「評価してから介入」ではなく、「評価しながら介入」です(2)。
Step 4:応援を呼ぶ
状態が悪い患者さんに一人で対応するのは限界があります(1)。
📊 応援を呼ぶタイミング(一例)
- 心停止:すぐにコードブルー/ハリーコール
- 意識障害:ABCの評価をし、低血糖を否定しつつ上級医をコール
- 呼吸不全:挿管の可能性があればすぐに麻酔科/集中治療医
- ショック:輸液をはじめつつ、昇圧剤が必要そうならすぐに上級医
💡 臨床のコツ
「呼びすぎて怒られる」ことより、「呼ばなくて手遅れになる」ことの方がはるかに深刻です。迷ったら、呼んでください(1)。
Step 5:モニタリングと検査
ABCDを安定化させながら、モニタリングと検査を進めます(1,3)。
📋 すぐにつけるモニター
- 心電図モニター:不整脈、ST変化
- SpO₂モニター:酸素化の連続モニタリング
- 血圧:頻回測定または動脈ライン
✅ 最初にオーダーする検査(血ガス・エコー・心電図は3種の神器)
- 12誘導心電図:ACS、不整脈
- 血液ガス:酸素化、換気、酸塩基平衡
- 血算、生化学:貧血、電解質異常、腎機能
- 血糖:低血糖の除外
- ポータブル胸部X線:肺炎、心不全、気胸
よくあるバイタル異常と原因
📋 バイタル異常と鑑別(一例)
| バイタル異常 | 考える原因 |
|---|---|
| 頻脈 | 発熱、脱水、出血、疼痛、敗血症、肺塞栓 |
| 徐脈 | 薬剤(β遮断薬)、房室ブロック、低体温 |
| 低血圧 | ショック(4分類)、薬剤、起立性低血圧 |
| 頻呼吸 | 低酸素、代謝性アシドーシス、肺炎、肺塞栓 |
| 低酸素 | 肺炎、COPD増悪、心不全、肺塞栓、気胸 |
Cretikos MAらの研究(Resuscitation 2008)では、呼吸数の異常が院内心停止の最も強い予測因子であることが示されています(4)。
呼吸数は「最も見落とされやすいバイタルサイン」です。
まとめ
✅ バイタルが悪い患者さんへの対応
- まず患者さんのところへ行く:電話だけで判断しない
- 第一印象を確認:ABC、3秒で判断
- ABCDを評価・安定化:評価しながら介入
- 応援を呼ぶ:迷ったら早めにコール
- モニタリングと検査:心電図、血ガス、採血
引用文献
- Smith GB, Prytherch DR, Meredith P, et al. The Ability of the National Early Warning Score (NEWS) to Discriminate Patients at Risk of Early Cardiac Arrest, Unanticipated Intensive Care Unit Admission, and Death. Resuscitation. 2013;84(4):465-470.
- Thim T, Krarup NHV, Grove EL, et al. Initial Assessment and Treatment with the Airway, Breathing, Circulation, Disability, Exposure (ABCDE) Approach. Int J Gen Med. 2012;5:117-121.
- 日本外傷学会・日本救急医学会. 外傷初期診療ガイドライン(JATEC)第6版. へるす出版; 2021.
- Cretikos MA, Bellomo R, Hillman K, et al. Respiratory Rate: The Neglected Vital Sign. Med J Aust. 2008;188(11):657-659.
🩺 急変対応、一緒に学びませんか?
Qラボでは、急変対応のシミュレーションや症例検討を行っています。
「バイタルが悪い」と呼ばれた時に、自信を持って動ける臨床力を身につけましょう。





