「ABCDアプローチ」という言葉、聞いたことはありますよね?
でも、実際に患者さんを目の前にすると、「結局、何から見ればいいの?」と迷うことはありませんか?
私も研修医の頃、教科書で学んだはずなのに、いざ現場に出ると頭が真っ白になった経験があります。この記事では、ABCDアプローチの「本当の意味」と、実践での使い方をお伝えします(1)。
ABCDアプローチの本質
ABCDアプローチとは、患者さんの状態を優先順位をつけて評価・安定化するためのフレームワークです(1)。
📋 ABCDの順番
- A:Airway(気道)
- B:Breathing(呼吸)
- C:Circulation(循環)
- D:Disability(意識・神経)
なぜこの順番なのか?それは、「より早く死に至るもの」を先に評価・治療するという考え方です(1,2)。
💡 臨床のコツ
ABCDアプローチは「診断」ではなく「安定化」が目的です。まず生命を脅かす問題を見つけて、すぐに対処する。診断は後からでいいんです(1)。
A:Airway(気道)〜開通しているか?〜
まず確認するのは、気道が開通しているかです(1,2)。
✅ 気道評価のポイント
- 発声できるか:声が出ていれば、気道は開通している
- いびき様呼吸:舌根沈下のサイン
- ストライダー:上気道狭窄のサイン
- 流涎、嚥下困難:気道の問題を示唆
気道に問題があれば、すぐに介入します(2)。
- 用手的気道確保:下顎挙上、頭部後屈顎先挙上
- 吸引:分泌物、嘔吐物の除去
- 補助器具:経口エアウェイ、経鼻エアウェイ
- 高度気道確保:気管挿管、声門上器具
B:Breathing(呼吸)〜十分に換気できているか?〜
気道が開通していても、呼吸が十分でなければ酸素化できません(1,2)。
💡 呼吸評価のポイント
- 呼吸数:正常は12〜20回/分
- SpO₂:酸素化の指標
- 呼吸様式:努力呼吸、陥没呼吸、シーソー呼吸
- 胸郭の動き:左右差、奇異性運動
- 呼吸音:減弱、消失、副雑音
Cretikos MAらの研究(Resuscitation 2008)では、呼吸数の異常が院内心停止の最も強い予測因子であることが示されています(3)。
C:Circulation(循環)〜臓器に血流が届いているか?〜
次に、循環が保たれているかを評価します(1,2)。
📊 循環評価のポイント
- 血圧:収縮期血圧 < 90 mmHg → ショックを疑う
- 脈拍:頻脈、徐脈、不整脈
- CRT(毛細血管再充満時間):> 2秒 → 末梢循環不全
- 皮膚所見:冷感、湿潤、チアノーゼ
- 尿量:< 0.5 mL/kg/h → 臓器低灌流
ショックの徴候があれば、静脈路確保と輸液負荷を開始します(4)。
D:Disability(意識・神経)
ABCが安定したら、意識レベルと神経学的所見を評価します(1,2)。
📋 意識評価のスケール
| スケール | 内容 |
|---|---|
| AVPU | Alert / Verbal / Pain / Unresponsive |
| GCS(こちらが多い) | E(開眼)+ V(発語)+ M(運動)= 3〜15点 |
加えて、瞳孔(サイズ、対光反射、左右差)と血糖(低血糖を除外)も確認します(1)。
Primary Surveyを繰り返す
ABCDアプローチで大事なのは、一度で終わらないことです(1,2)。
✅ ABCDアプローチのサイクル
評価 → 問題発見 → 介入 → 再評価 → …
このサイクルを回し続けることで、患者さんを安定化させていきます。
まとめ
✅ ABCDアプローチのポイント
- A(気道):開通しているか?発声できるか?
- B(呼吸):呼吸数は?SpO₂は?努力呼吸は?
- C(循環):血圧、脈、CRT、皮膚所見
- D(意識):AVPU/GCS、瞳孔、血糖
- 繰り返す!:一度で終わらない
引用文献
- Thim T, Krarup NHV, Grove EL, et al. Initial Assessment and Treatment with the Airway, Breathing, Circulation, Disability, Exposure (ABCDE) Approach. Int J Gen Med. 2012;5:117-121.
- 日本外傷学会・日本救急医学会. 外傷初期診療ガイドライン(JATEC)第6版. へるす出版; 2021.
- Cretikos MA, Bellomo R, Hillman K, et al. Respiratory Rate: The Neglected Vital Sign. Med J Aust. 2008;188(11):657-659.
- Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Crit Care Med. 2021;49(11):e1063-e1143.
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