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敗血症、見逃してない?〜早期発見の5つのサイン〜

「敗血症かもしれない」と思った時、何を見ていますか?

敗血症は早期発見・早期治療が予後を大きく左右します(1)。でも、発熱がない敗血症もあれば、血圧が正常な敗血症もある。だからこそ、複数のサインを組み合わせて判断することが大切です。

この記事では、敗血症を見逃さないための5つのサインをお伝えします。


敗血症の定義を確認

まず、敗血症の定義を確認しましょう(1,2)。

📋 Sepsis-3の定義

敗血症とは、感染症に対する制御不能な宿主反応によって引き起こされる、生命を脅かす臓器障害

ポイントは「臓器障害」があることです。単なる感染症ではなく、臓器障害を伴っている状態が敗血症です(2)。


サイン1:呼吸数の増加

呼吸数は、最も早く異常を示すバイタルサインです(3)。個人的には、呼吸数は最も大切にしているバイタルサインです。

💡 呼吸数のポイント

  • 正常:12〜20回/分
  • 22回/分以上:qSOFAの1項目
  • 敗血症では代謝性アシドーシスの代償として頻呼吸になる

Cretikos MAらの研究(Resuscitation 2008)では、呼吸数の異常が院内心停止の最も強い予測因子であることが示されています(3)。

💡 臨床のコツ

呼吸数は「最も見落とされやすいバイタルサイン」でもあります。必ず自分の目で呼吸数を数えましょう(3)。


サイン2:意識変容

「なんかいつもと違う」は重要なサインです(1,2)。

✅ 意識変容の評価

  • GCS < 15 → qSOFAの1項目
  • 不穏、傾眠、反応の遅さ
  • 家族からの「いつもと様子が違う」という訴え

特に高齢者では、発熱よりも意識変容が敗血症の初期徴候として現れることがあります(1)。


サイン3:乳酸値の上昇

乳酸値は、臓器低灌流の客観的な指標です(4,5)。

📊 乳酸値の解釈

  • 正常:< 2 mmol/L
  • > 2 mmol/L:注意が必要
  • > 4 mmol/L:敗血症性ショックの基準の一つ

Casserly Bらの研究(Crit Care Med 2015)では、敗血症患者において乳酸値の正常化が生存率と関連することが示されています(5)。


サイン4:CRT(毛細血管再充満時間)の延長

CRTは、ベッドサイドで簡単に評価できる末梢循環の指標です(6)。

📋 CRTの測定方法

  1. 指先や胸骨を5秒間圧迫する
  2. 解除後、色が戻るまでの時間を測定
  3. > 2〜3秒:末梢循環不全を示唆

ANDROMEDA-SHOCK試験(JAMA 2019)では、CRTを指標とした蘇生戦略の有用性が検討されました(6)。


サイン5:尿量の低下

尿量は、腎臓への血流を反映する重要な指標です(1,7)。

✅ 尿量の目安

  • 正常:0.5〜1.0 mL/kg/h以上
  • < 0.5 mL/kg/h:乏尿、臓器低灌流を示唆
  • 敗血症によるAKI(急性腎障害)の早期徴候

qSOFAの限界を理解する

qSOFAは敗血症のスクリーニングツールですが、感度が低いという限界があります(2)。

⚠️ qSOFAの注意点

  • qSOFA陰性でも敗血症を否定できない
  • 感染を疑う患者では、他の徴候も総合的に評価する
  • 乳酸値やCRTなど、追加の指標を活用する

敗血症を疑ったら:Hour-1 Bundle

敗血症を疑ったら、1時間以内に以下の介入を開始します(1,7)。

📊 Hour-1 Bundle(SSCG 2021)

  1. 乳酸を測定する
  2. 血液培養を採取する(抗菌薬投与前に)
  3. 広域抗菌薬を投与する
  4. 低血圧があれば急速輸液する(30 mL/kg)
  5. 輸液後も低血圧が続けば昇圧薬を開始する

Kumar Aらの研究(Crit Care Med 2006)では、敗血症性ショックにおいて抗菌薬投与が1時間遅れるごとに死亡率が約7.6%上昇することが示されています(8)。


まとめ

✅ 敗血症を見逃さないための5つのサイン

  1. 呼吸数の増加:最も早く異常を示す
  2. 意識変容:「いつもと違う」は重要
  3. 乳酸値の上昇:> 2 mmol/Lで注意
  4. CRTの延長:> 2〜3秒で末梢循環不全
  5. 尿量の低下:< 0.5 mL/kg/hで乏尿

引用文献

  1. 日本版敗血症診療ガイドライン2024(J-SSCG2024). 日本集中治療医学会・日本救急医学会.
  2. Singer M, Deutschman CS, Seymour CW, et al. The Third International Consensus Definitions for Sepsis and Septic Shock (Sepsis-3). JAMA. 2016;315(8):801-810.
  3. Cretikos MA, Bellomo R, Hillman K, et al. Respiratory Rate: The Neglected Vital Sign. Med J Aust. 2008;188(11):657-659.
  4. Wardi G, Brice J, Correia M, et al. Demystifying Lactate in the Emergency Department. Ann Emerg Med. 2020;75(2):287-298.
  5. Casserly B, Phillips GS, Schorr C, et al. Lactate Measurements in Sepsis-Induced Tissue Hypoperfusion: Results From the Surviving Sepsis Campaign Database. Crit Care Med. 2015;43(3):567-573.
  6. Hernández G, Ospina-Tascón GA, Damiani LP, et al. Effect of a Resuscitation Strategy Targeting Peripheral Perfusion Status vs Serum Lactate Levels on 28-Day Mortality Among Patients With Septic Shock: The ANDROMEDA-SHOCK Randomized Clinical Trial. JAMA. 2019;321(7):654-664.
  7. Evans L, Rhodes A, Alhazzani W, et al. Surviving Sepsis Campaign: International Guidelines for Management of Sepsis and Septic Shock 2021. Crit Care Med. 2021;49(11):e1063-e1143.
  8. Kumar A, Roberts D, Wood KE, et al. Duration of Hypotension Before Initiation of Effective Antimicrobial Therapy Is the Critical Determinant of Survival in Human Septic Shock. Crit Care Med. 2006;34(6):1589-1596.

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敗血症の5つのサイン、覚えられそうですか?

「発熱がないから敗血症じゃない」とは言えません。複数のサインを組み合わせて、早期発見を心がけましょう。