学習

pHが低い!代謝性?呼吸性?【アシデミアの鑑別】

「pH 7.25です」と報告を受けて、「代謝性?呼吸性?どっちだろう…」と迷ったこと、ありませんか?

私も研修医の頃、血液ガスの結果を見て固まっていた時期がありました。でも、見分け方は実はシンプルなんです。この記事では、pHが低い時(アシデミア)の鑑別方法をお伝えします。覚えるのは2つのキーナンバーだけです(1)。


まず確認:アシデミアとは

pH < 7.35 の状態をアシデミア(酸血症)と呼びます(1)。

アシデミアを引き起こす病態には、呼吸性アシドーシス代謝性アシドーシスの2つがあります。


2つのキーナンバーを覚えよう

血液ガスを読むとき、まず覚えてほしい数字があります(1,2)。

📊 キーナンバー

PaCO₂ = 40 mmHg

HCO₃⁻ = 24 mEq/L

この2つが基準値です。ここから「どちらがどう動いているか」を見るんです。


呼吸性 vs 代謝性:どう見分ける?

pHが低い(アシデミア)とき、次のように考えます(1,2)。

✅ 鑑別のポイント

  • PaCO₂が40より高い → 呼吸性アシドーシス(CO₂が溜まっている)
  • HCO₃⁻が24より低い → 代謝性アシドーシス(HCO₃⁻が減っている)

📋 呼吸性と代謝性の比較

病態 pH PaCO₂ HCO₃⁻
呼吸性アシドーシス ↑(40より高い) → or ↑(代償)
代謝性アシドーシス → or ↓(代償) ↓(24より低い)

💡 臨床のコツ

pHを酸性側に動かしている方が「原因」、それを打ち消そうとしている方が「代償」です。キーナンバーからどちらがどう動いているかを見れば、原因がわかります(1)。


呼吸性アシドーシスの原因

呼吸性アシドーシスは、CO₂が体内に蓄積することで起こります(1,2)。要するに「換気ができない」状態です。

💡 呼吸性アシドーシスの原因

  • 気道閉塞:異物、喉頭浮腫
  • 肺疾患:COPD急性増悪、重症喘息、肺炎
  • 神経筋疾患:ギラン・バレー症候群、重症筋無力症
  • 中枢神経抑制:薬物中毒、脳幹障害
  • 胸郭異常:フレイルチェスト、高度肥満

患者さんの呼吸状態を観察することが重要です。呼吸が浅い、遅い、努力様呼吸があるなど、「換気がうまくいっていない」サインを探しましょう(2)。


代謝性アシドーシスの原因

代謝性アシドーシスでは、アニオンギャップ(AG)を計算することが次のステップです(1,3)。

📊 アニオンギャップ

AG = Na⁺ − (Cl⁻ + HCO₃⁻)

正常値:12 mEq/L(8〜16の範囲)

📋 AGによる分類

分類 原因
AG開大性
(AG > 12)
乳酸アシドーシス、ケトアシドーシス、腎不全、中毒(LKKT)
AG正常型
(高Cl性)
下痢、尿細管性アシドーシス、生理食塩水大量投与

AG開大性代謝性アシドーシス:LKKT

AG開大性代謝性アシドーシスの原因は、LKKTという語呂で覚えましょう(3)。個人的には、この語呂が一番使いやすいと思います!

📊 LKKT(エルケーケーティー)

  • L:Lactate(乳酸)← 最も多い!
  • K:Ketoacidosis(ケトアシドーシス)← DKA、アルコール性、飢餓性
  • K:Kidney failure(腎不全)
  • T:Toxin(中毒)← メタノール、エチレングリコール、サリチル酸など

💡 臨床のコツ

AG開大性代謝性アシドーシスを見たら、まず乳酸値をチェック。乳酸が高ければ、ショックや敗血症などの致死的な病態を疑います。次に血糖と尿ケトンでケトアシドーシス、BUN/Crで腎不全をチェックしましょう(3,4)。


補正HCO₃⁻で隠れた異常を見抜く

AG開大性代謝性アシドーシスがあるとき、もう一歩踏み込んで補正HCO₃⁻を計算してみましょう(1,3)。

📊 補正HCO₃⁻の計算式

補正HCO₃⁻ = 実測HCO₃⁻ + ΔAG

(ΔAG = 実測AG − 12)

✅ 補正HCO₃⁻の解釈

  • 補正HCO₃⁻ が 24前後(22〜26) → AG開大性代謝性アシドーシスのみ
  • 補正HCO₃⁻ が 24より低い → AG正常型代謝性アシドーシスも合併
  • 補正HCO₃⁻ が 24より高い → 代謝性アルカローシスも合併

これで「隠れた酸塩基平衡異常」を見つけることができます。


代償が適切かを確認する

代謝性アシドーシスでは、呼吸で代償しようとします。この代償が適切かどうかを確認することで、混合性障害を見抜けます(1,2)。

✅ Winterの公式

予測PaCO₂ = 1.5 × HCO₃⁻ + 8(±2)

  • 実測PaCO₂が予測より高い → 呼吸性アシドーシスの合併
  • 実測PaCO₂が予測より低い → 呼吸性アルカローシスの合併

その他の代償の式はこちらから学べます▼

💡 臨床のコツ

代償は「完全に打ち消す」ことはありません。代償だけでpHが正常に戻ることはないんです。もしpHが正常なのに異常な値があれば、混合性障害を疑いましょう(1)。


まとめ

✅ アシデミアの鑑別

  • キーナンバー:PaCO₂ = 40、HCO₃⁻ = 24
  • PaCO₂ > 40 → 呼吸性アシドーシス(換気障害)
  • HCO₃⁻ < 24 → 代謝性アシドーシス → AGを計算
  • AG開大 → LKKT(乳酸、ケトン、腎不全、中毒)
  • AG正常 → 下痢、尿細管性アシドーシス、生食大量投与
  • 補正HCO₃⁻で隠れた異常を見抜く
  • Winterの公式で混合性障害を見抜く

その他の代償の式はこちらから学べます▼

引用文献

  1. Berend K, de Vries APJ, Gans ROB. Physiological Approach to Assessment of Acid-Base Disturbances. N Engl J Med. 2014;371(15):1434-1445.
  2. Emmett M, Narins RG. Clinical Use of the Anion Gap. Medicine (Baltimore). 1977;56(1):38-54.
  3. Kraut JA, Madias NE. Metabolic Acidosis: Pathophysiology, Diagnosis and Management. Nat Rev Nephrol. 2010;6(5):274-285.
  4. Wardi G, Brice J, Correia M, et al. Demystifying Lactate in the Emergency Department. Ann Emerg Med. 2020;75(2):287-298.

🩺 血液ガス分析、もっと深く学びたい方へ

Qラボでは、血液ガス分析を症例ベースで一緒に学んでいます。

LKKTの使い方、Winterの公式の実践など、一緒に練習しましょう。

公式LINEに登録する


どうですか?あなたの感想を聞かせてください。

アシデミアの鑑別、整理できましたか?

キーナンバー「40と24」を覚えておけば、呼吸性か代謝性かがすぐにわかります。明日から使ってみてください。