標準的な外傷初期診療を網羅的に勉強する際におすすめなのはJATECのガイドラインです。
ただ、JATECは分量も多く、想定読者として医学生や初期研修医1年目前半の先生方にとっては少し難易度が高いかもしれません。
一方で、救急科を志す2年目後半の先生方にとっては基本的すぎると感じることもあるでしょう。
そこで今回は、JATECよりも内容が平易で分量も少ない「入門書」と、より重症外傷の治療戦略や各専門科の治療方針を学ぶことができる「応用書」を1冊ずつ紹介させていただきます。
それぞれの参考書の特徴や評価・具体的な活用方法についてまとめていきますので、興味を持った本に関してはぜひ手にとって読んでみてください。
これからご覧いただく医学書レビューは、
これまで研修医時代に100冊以上の医学書を読み、
その中でもオススメの医学書のレビューを月5冊以上書いている
ある救急科専攻医のレビューです。
医学生や研修医、各分野の初学者の気持ちが痛いほどわかるので、
是非この一冊を手に取ってみたいと思っていただけるようなレビューを心がけています!
1.【入門書】『Primary-care Trauma Life Supportー元気になる外傷ケア 』
外傷初期診療についての入門書として、研修医時代に上級医から進められたのがこの一冊です。
本書を読むことで今後救急外来で外傷の患者さんが搬送されてきたとしても自信を持って対応することができます。
本書の特徴はなんと言っても、手に取りやすいページ数と圧倒的なわかりやすさです。外傷初期診療に苦手意識のある医療従事者にとっては最適の一冊であると言えます。
本のページ数も多すぎる事なく完結にまとまっているので、苦痛を感じることなく通読することができるのもよい点です。理解すればいいところと、本当に覚えなければならないことをしっかりと分けて記載してくださっているので読者側としては重み付けをしながら読み進めることが出来ます。
また、暗記すべき重要事項についてはラミネートされている付録を参考にすることで、臨床現場でチェックリストのように使用することができます。
一方で、あくまで個人的な印象ではありますが気になった点としては、各種外傷の診断後の治療や管理についての知識についてはやや不十分に感じました。
やはり外傷初期診療においてはJATECというガイドラインであり王道の医学書が存在するので、本書を導入として使用した後に、しっかりと学びたい場合はJATECを購入することを推奨します。
【基本情報】
タイトル:Primary-care Trauma Life Supportー元気になる外傷ケア
著者:箕輪良行 (編集), 今明秀 (編集), 林寛之 (編集), 中野朋彦 (イラスト), 公益社団法人地域医療振興協会 (監修)
出版社:シービーアール
発行年月日:2012/5/15
【ターゲット層】
初期研修医・外傷初期診療に不慣れな専攻医・救急隊・看護師
【推定読了期間】
6-7時間程度
【本書の特徴】
●外傷の標準的初期治療のABCDEを理解し,外傷患者を素早く,見逃しなく診られるようになることを目標に作成
●全ページカラーでイラストと写真,表を多用し,ポイントが一目で視覚的に理解できるように工夫
●外傷初期診療のmnemonicsを記載したルミネートカード付き
【本書で学べること(例)】
●外傷初期診療のPrimary Survey(初期評価)
●全身の外傷検索によるSecondary Survey
●外傷初期診療で必要な処置(気管挿管・胸腔ドレーン)や検査(F-FAST)など
【評価】
必要性:
本の薄さ:
わかりやすさ:
面白さ:
継続使用度:
オススメ度:
※Amazon評価:
【本書のおすすめの読み方・活用方法】
●目次を参考にさらっと通読して、どこに何が書いてあるかざっくり把握し通読
●付録のラミネートを駆使して日々の臨床で毎日復習!
【本書のまとめ】
外傷初期診療の入門書として最適の一冊である!
本書は外傷初期診療の初心者は全員一度は手に取るべき一冊である!
2.【専門書】『外傷専門診療ガイドライン JETEC』
外傷の初期診療についてPTLSやJATECを通じて学んで一通りできるようになったと感じてきた次に行うべき事は、コンサルトした先の専門科での治療についてある程度理解しておくことです。
私自身も決して外傷の診療が得意であるといえる立場ではなく、外傷初期診療で迷うことや怖いことばかりです。そんな時に治療方針や戦略を考える際に参照するのがこの一冊です。
本書を読むことで今後重症患者患者さんに出会ったとしても自信を持って対応し、適切な科に提案も含めたコンサルトをすることができます。
本書の特徴はなんと言っても、日本の外傷診療において準拠すべきガイドラインであるということです。
外傷診療で最も大切な患者さんにとって最善の戦略をどのように構築するかを学ぶことができます。
また、外傷専門医や外科の先生方でないとわからないような専門家による一次止血やダメージコントロールの概念についても網羅されているので、コンサル後の治療についても辞書のように適宜参照することで知識を深めることができます。
また、外傷診療は一人で完結することはできず、チームワークや適切なコミュニケーションが不可欠です。本書を通じて外傷の知識を深めることはもちろん、コミュニケーションを行う上でのクローズドループコミュニケーションといったスキルについても学ぶことができるのも嬉しい点だと思います。
【基本情報】
タイトル:外傷専門診療ガイドライン JETEC―戦略と戦術、そしてチームマネジメント
著者:日本外傷学会外傷専門診療ガイドライン改訂第2版編集委員会 (編集), 日本外傷学会 (監修)
出版社:へるす出版
発行年月日:2018/6/1
【ターゲット層】
外傷診療に携わる後期研修医以上の医師
【推定読了期間】
14-16時間程度
【本書の特徴】
●外傷専門医が備えるべき知識をまとめた診療ガイドライン、その完成度をより高めた改訂版
●外傷専門医・外傷専門医を目指す医師のみならず、外傷に携わる医師必携の一冊
【本書で学べること】
●外傷診療で必要とされる「戦略」(診療の組み立て・管理能力)と「戦術」(知識・技能)
●外傷診療におけるチームマネジメントの重要性 「チームアプローチ」
【評価】
必要性:
本の薄さ:
わかりやすさ:
面白さ:
継続使用度:
オススメ度:
※Amazon評価:
【本書のおすすめの読み方・活用方法】
●目次を参考にさらっと通読して、どこに何が書いてあるかざっくり把握(付箋を貼るのも良いでしょう)
●経験した症例の前後で読み直して復習
【本書のまとめ】
本書は外傷専門医・外傷専門医を目指す医師のみならず、外傷に携わる医師必携の一冊である!
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