
ICU管理で時として問題になる、
微量元素(Fe・Zn・Cu・Mn・Se)欠乏と経腸栄養についてまとめました。
各栄養製剤の特徴や、微量元素欠乏の治療に用いる薬剤は把握しておくべきです。
マニアックなテーマではありますが、リスクの高い症例では可能性を考慮しつつ診療にあたる必要があります。
経腸栄養を行っている患者さんでは、念頭に置きつつ入院管理を行いましょう。
1.ポイント
●経腸栄養を行う際は微量元素欠乏にも注意する
●短期間の経腸栄養でもZnやCuは低下しうる
●それぞれの経腸栄養材の特徴を微量元素の視点からも把握しておく
2.経腸栄養と微量元素欠乏の関係
ICU管理において最も重要なのは、経腸栄養が行われている患者さんも微量元素欠乏のリスクであるということです
その他、微量元素欠乏のリスク因子はいくつかありますので、そちらを学びたい方は以下の記事を参考にしてみてください👇

経腸栄養剤によっては、含まれる微量元素の偏りがあったり、量自体が少ないために生じます。特に微量元素の中でも、Fe、Zn、Cu、Mn、Seが低下するといわれています。
経腸栄養を実施している患者さんでは、これらの栄養素に着目する必要があるのです。
しかも、長期間の経腸栄養管理でなくても微量元素は欠乏しうることに注意しましょう。
●経腸栄養を受けている高齢入院患者106例のうち血清微量元素値低下者の割合は、Fe66%、Zn65%、Cu70%、Mn71%、Se97% 1)
●CuとZnでは経腸栄養期間に減少が比例せず、短期間でも低下
●経腸栄養期間に比例して減少を示したのは、MnとSeであった。
3.各経腸栄養に含まれる微量元素
各々の経腸栄養材に含まれる微量元素を表にまとめてみました。
MA-ラクフィア | メイバランス | ペプタメンAF | ペプタメンST | ハイネイーゲル | リーナレンMP | レナウェルA | レナウェル3 | |
容量(mL) | 300 | 333 | 200 | 200 | 375 | 250 | 125 | 125 |
Z(mg) | 3 | 4 | 4.4 | 4.4 | 3.6 | 6 | 0.05 | 0.06 |
Cu(mg) | 0.3 | 0.4 | 0.3 | 0.3 | 0.24 | 0.3 | 0.002 | 0.004 |
Se(μg) | 9.0 | 10.5 | 6 | 12 | 9.8 | 36 | ー | ー |
Mn(mg) | 0.54 | 0.69 | 0.75 | 1.5 | 0.98 | 0.92 | 0.011 | 0.011 |
テルミールミニ | メイバランス | アイソカル100 | メイバランスミニ | Sara | メイン | グルセルナ | アップリードmini | |
容量
(mL) |
125 | 125 | 100 | 125 | 125 | 200 | 400 | 50 |
Zn
(mg) |
2.4 | 2 | 0.8 | 2 | 4 | 2 | 4.8 | 1.7 |
Cu
(mg) |
0.2 | ー | 0.06 | 0.1 | ー | 0.1 | 0.64 | 0.17 |
Se
(μg) |
10 | ー | 6 | 12 | ー | 5 | 2 | 8 |
Mn
(mg) |
0.7 | ー | 0.27 | 0.014 | ー | 0.175 | ー | 0.5 |
もちろん施設によって栄養剤の採用は異なるので、自分の働いている施設のものにはどの程度含まれているのか調べてみるといいでしょう。
ちなみに、それぞれの微量元素の一日必要量は以下の通りです1)。こちらと見比べて、経腸栄養管理している患者さんで不足する計算になっていないか確認してみましょう👇
Zn 9~11mg
Cu 0.7~0.9mg
Se 20~35μg
Mn 3.5~4.0mg
4.微量元素欠乏の治療に用いる栄養剤・薬剤
上記の表を参考に算出した結果、微量元素の不足を疑い、さらに微量元素欠乏に伴う症状が出現していそうなときは、治療を始めなければなりません。
それぞれの特徴的な症状は以下の記事を参考にしてみてください👇

ここからは、実際の治療に用いる栄養剤や薬剤をまとめていきたいと思います。
個人的に登場頻度が高いものを選んでみましたが、ここに関してはおそらく施設によって千差万別なのでしょう。参考になれば幸いです。
①栄養補助食品
アルジネード | ブイクレスCP10 | アップル&キャロット | ラフランスジュース | |
容量(mL) | 125 | 125 | 125 | 125 |
Zn(mg) | 10 | 12 | 11 | 12 |
Cu(mg) | 1 | |||
Se(μg) | 50 |
②薬剤(静脈投与)
エレンミック | ミネラリン | ボルビサール | |
容量(mL) | 2 | 2 | 2 |
Zn(mg) | 3.9 | 3.9 | 3.9 |
Cu(mg) | 0.32 | 0.32 | 0.32 |
Mn(mg) | 0.055 |
③中心静脈栄養
エルネオパ1号液 | エルネオパ2号液 | |
容量(mL) | 2000 | 2000 |
Zn(mg) | 3.9 | 3.9 |
Cu(mg) | 0.32 | 0.32 |
Mn(mg) | 0.055 | 0.055 |
例えば、低リン血症の補正に用いられる内服薬(ホスリボン)は有名ですが、リンの負荷に加えてナトリウムも付加してしまうため、高ナトリウム結晶を合併しているときは使用しずらいですよね。
そんなとき、リンを多く含む栄養剤から摂取してもらうという選択肢を持っていると、上手に不足分を補うことができます。
微量元素欠乏のリスクとなる栄養剤に加えて、治療に用いる製剤についてもざっくりとでいいのでイメージを持っておきましょう。
5.引用、参考文献
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