今回は肺炎のなかでも重唱することが多く常に原因微生物として念頭に置くべきレジオネラについてまとめました。
肺炎の中でも肺外症状をきたすことが多いので、特徴的な症状についてはしっかりと把握しておきましょう。
1.ポイント
●グラム染色で優位な菌が認められない肺炎では、必ず鑑別に入れる
●疑うポイントを意識しておく
●重症市中肺炎で原因菌が不明の場合には、渡航歴や温泉歴、尿中抗原の結果によらずレジオネラをカバーする必要がある
2.疫学
●市中・院内の両方の肺炎の原因に
●温泉や空調など、塵埃感染によって集団発生することが多い
●保養施設での集団発生がしばしば確認されている。
3.症状
●定型肺炎の症状と合致する点も多い
重症の所見は肺炎球菌性肺炎と類似する点も多い
レジオネラ病の肺外症状を想起する1)
レジオネラを疑うWUHスコアリングにも注目4)
4.問診・診察のポイント
比較的徐脈に注目:発熱のわりに脈が頻脈とならない5)
38.3度以上の発熱があるにもかかわらずこの法則通りの心拍数の上昇がみられない状態を「Faget徴候」または「比較的徐脈」という。比較的徐脈は38.9度を超える体温のときには優位な所見と考えれらており、病歴や身体診察、臨床検査データと合わせて用いられる。
5.検査
【採血所見】
電解質異常(低ナトリウム血症、低リン血症)、肝機能障害、CPK上昇
【尿中抗原】
●肺炎球菌とレジオネラを検出できる。
●ともに特異度は比較的高い
●尿中レジオネラ抗原は
・特異度99%と高いため診断に有用
・感度は70%と比較的低いので陰性であってもレジオネラを否定できない。
※治療効果判定には用いない。持続で要請が続くので陰性化を確認するのは間違い
6.治療
●重症市中肺炎で原因菌が不明の場合には、渡航歴や温泉歴、尿中抗原の結果によらずレジオネラをカバーする必要がある
●重症化する事が多いので基本的に入院し抗菌薬加療
●抗菌薬加療
ニューキノロン系IV (2W)
マクロライドIV+リファンピシンPO(3W)
軽症例ではマクロライド系IV単剤でも治療可
●治療効果判定
発熱、CRPのみでなく呼吸状態や喀痰量、X-pなど総合的に肺炎の臓器特異的パラメータを見て総合的に判断。
7.引用、参考文献
1)Cunha BA. Infect Dis Clin North Am. 2010;24:73-105.
2)坂本壮. 救急外来ただいま診断中!. 中外医学社;2015.p.280-303.
3)坂本壮. 救急外来 診療の原則集―あたりまえのことをあたりまえに. シーニュ;2017.p.65-67.
4)Gupta SK,et al. Chest. 2001;120:1064-1071.
5)The Clinical Significance of Relative Bradycardia.
Ye F, Hatahet M, Youniss MA, Toklu HZ, Mazza JJ, Yale S.WMJ. 2018 Jun;117(2):73-78.
6)Carenet 【救急診療の基礎知識】坂本壮先生 作
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