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【疾患】バゾプレシン分泌過剰症(SIADH)のまとめ【随時更新中】

SIADH
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今回は低ナトリウム血症の原因の中でも診断に難渋することが多い、SIADHについてまとめました。

診断に至るまで除外すべき原因も多々あるので、低ナトリウム血症全般の知識が問われる印象です。

出会う頻度が少ない分、検査や体液評価をしっかりと行って診断していきましょう。

1.ポイント

●ADHホルモンの過剰分泌が原因

●中枢神経・肺疾患・薬剤など過剰分泌の原因は様々

●低ナトリウム血症のどこの区分に分類されるかをしっかりイメージ

2.診断基準

Ⅰ.主症候
1. 脱水の所見を認めない。
2. 倦怠感、食欲低下、意識障害などの低ナトリウム血症の症状を呈することがある。

Ⅱ.検査所見
1.低ナトリウム血症:血清ナトリウム濃度は135 mEq/Lを下回る。
2.血漿バゾプレシン値:血清ナトリウム濃度が135 mEq/L未満で、血漿バゾプレシ ン濃度が測定感度以上である。
3.低浸透圧血症:血漿浸透圧は280 mOsm/kgを下回る。
4.高張尿:尿浸透圧は300 mOsm/kgを上回る。
5.ナトリウム利尿の持続:尿中ナトリウム濃度は20 mEq/L以上である。
6.腎機能正常:血清クレアチニンは1.2 mg/dl以下である。
7.副腎皮質機能正常:早朝空腹時の血清コルチゾールは6 μg/dl以上である。

Ⅲ.参考所見
1. 原疾患(表1)の診断が確定していることが診断上の参考となる。
2. 血漿レニン活性は5 ng/ml/h以下であることが多い。
3.血清尿酸値は5 mg/dl以下であることが多い。
4.水分摂取を制限すると脱水が進行することなく低ナトリウム血症が改善する。

[診断基準] 確実例:Ⅰの1およびⅡの1~7を満たすもの。

3.症状

●全身倦怠感、食欲不振などが多い

●低Naで見られる症状も多彩に見られる。

〈軽症〉
自覚症状がないことが多い
歩行の不安定性・注意力低下がみられる
⇒店頭のリスクが高まる

〈中等症〉
吐き気・嘔吐・腱つ式障害

〈重症〉
意識障害・昏睡・けいれん
循環や呼吸状態の異常をきたす

4.原因

ADHホルモンの過剰分泌が原因
中枢神経・肺疾患・薬剤など過剰分泌の原因は様々1)2)

1. 中枢神経系疾患:髄膜炎 外傷 くも膜下出血 脳腫瘍 脳梗塞・脳出血 Guillain-Barre症候群 脳炎

2. 肺疾患:肺炎 肺腫瘍(異所性バゾプレシン産生腫瘍を除く) 肺結核 肺アスペルギルス症 気管支喘息 陽圧呼吸

3. 異所性バゾプレシン産生腫瘍:肺小細胞癌 膵癌
4. 薬剤:ビンクリスチン クロフィブレート カルバマゼピン アミトリプチン イミプラミン

●ADH:抗利尿ホルモン、下垂体後葉から分泌
=バソプレシン・AVP

バソプレシン(ADH)受容体
・V1A受容体:平滑筋細胞で血管収縮作用
・V1B受容体:下垂体前葉でストレス反応性のACTH分泌
・V2受容体:腎臓集合管主細胞で自由水再吸収

5.鑑別

●低ナトリウム血症をきたす次のものを除外する。
1.細胞外液量の過剰な低ナトリウム血症:心不全、肝硬変の腹水貯留時、ネフローゼ症候群
2.ナトリウム漏出が著明な低ナトリウム血症:腎性ナトリウム喪失、下痢、嘔吐

●SAHなど中枢神経障害では中枢性塩類喪失症候群(CSWS)との鑑別も重要3)
・CSWSの原因としては塩類が尿から不適切に排出されてしまうことで起こる

6.検査

●血漿浸透圧と血漿ADHの相関関係に注目
⇒低NaなのにADHが正常値であること自体おかしい!

8.治療

●まずは原疾患の治療

●1日の総水分摂取量を体重1 kg当り15~20 mlに制限する。それでも難治性なら食塩を経口的または非経口的に1日200 mEq以上投与する。

●重症低ナトリウム血症(意識障害を伴う)ならば3%NSボーラス投与(ODSに注意)

●異所性バゾプレシン産生腫瘍に原因し、既存の治療で効果不十分な場合に限り、 成人にはモザバプタン塩酸塩錠(30 mg)を1日1回1錠食後に経口投与する。投与開 始3日間で有効性が認められた場合に限り、引き続き7日間まで継続投与するこ とができる。

☆バソプレシン受容体拮抗薬
●腎集合管の主細胞におけるADHの抗利尿作用(V2作用)を特異的に阻害する。

●SIADHは不適切にADHが分泌されている疾患なので、理にかなった治療

9.引用、参考文献

1)Rose BD, Post TW. Clinical Physiology of Acid-Base and Electrolyte Disorders, 5th ed, McGraw-Hill, New York 2001. p.703

2)A prospective study of patients with lung cancer and hyponatremia of malignancy.
Johnson BE, Am J Respir Crit Care Med. 1997;156(5):1669.

3)Refractory hyponatremia.
Gutierrez OM, Lin HY
Kidney Int. 2007;71(1):79. Epub 2006 Sep 20.

バゾプレシン分泌過剰症(SIADH)の診断と治療の手引き
(平成22年度改訂)

門川俊明:電解質輸液塾

 

 

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