くも膜下出血(SAH)の画像所見との鑑別に難渋するpseudo-SAHをご存知でしょうか? 真のSAHと見分ける方法やポイントはいくつかあります。
この記事を読んでpseudo-SAHをしっかり診断できるよう参考にしてみてください。
今回は
pseudo-SAH(偽性くも膜下出血)について学んだこと
pseudo-SAHの機序や特徴、SAHとの CT画像の見分け方
解説していきます。
この記事は、
・SAHの画像診断に悩んだことがある医学生や研修医
・pseudo-SAHって聞いたことあるけど、よくわからない方々
のみなさんに読んでいただきたい記事です◎
SAHについてはまずこちらをチェック👇
1.pseudo-SAHとは?
さて、突然ですがこの画像所見を示す疾患は何でしょう?
「なんだ、これは典型的なヒトデ型の高信号域がみえるし、SAHでしょ。」
そう思ってしまいがちですよね。
ですが、実はこの画像所見「化膿性髄膜炎」なんです!
このようにCTで、くも膜下出血と似ている画像所見を呈する所見をpseudo-SAHと呼びます。
低酸素脳症によるびまん性の脳浮腫で見られることが多く、
CPA後の低酸素脳症では20%にみられるとの報告もあります。
その他の原因としては、脳出血や造影剤による造影効果などがあげられます。
SAHの診断は画像検査に頼るところが大きいですが、画像で一発診断は危険なんですね…!
2.pseudo-SAHの機序
くも膜下腔周辺の解剖を復習しながらpseudo-SAHの機序について考えてみたいと思います。
外側から硬膜、くも膜、軟膜と続いていて、くも膜下腔は
くも膜と軟膜の間に存在します。
そもそもSAHに特徴的な画像所見を呈するのは、くも膜下腔内がなんらかの機序(多くのSAHの場合は出血が原因)で周囲と相対的に高濃度になっているためです。
ここでクモ膜下腔に関与する血管支配について考えてみると、
硬膜などくも膜下腔より外側は主に外頸動脈支配、
脳実質は主に内頸動脈支配
となっています。
例えば脳浮腫が原因となるpseudo-SAHは、
脳浮腫による脳圧亢進によって脳実質の内頸動脈支配の動脈圧が高まり、
血管外に血液が漏出することが原因とされています。
このように、動脈支配について考えるとpseudo-SAHの様々な原因の機序がすっきりと
説明できることが多そうです!
真のSAHとの鑑別
真のSAHとpseudo-SAHの鑑別についてまとめてみました。
・真のSAHの方が、pseudo-SAHよりもCT値が高値
・pseudo-SAHは一般的にびまん性で左右対称である
・脳浮腫が原因の時は、皮髄境界が不明瞭化することが多い
・(静脈拡張が原因の)pseudo-SAHでは造影効果を有する
そして何よりも大切なのは、SAHを疑った際にpseudo-SAHの可能性を念頭に置くことができるかだと思います!
3.まとめ
SAH疑う画像所見を見た際には、
血管造影や腰椎穿刺などの不必要な侵襲的検査を行うことがないよう、
pseudo-SAHを鑑別に入れて治療検査介入をするようにしましょう。
みなさまのリアクションが今後の記事を書くモチベーションになります!
【参考・参照文献およびサイト】
・Pseudo-subrachnoid hemorrhage found in patients with postresuscuration encephalopathy
Yazawa.H Am J Neuroradiol,29:1544-1549,2008
・グレイ解剖学 pp782-786,エルゼビア・ジャパン
・Pseudo-Subrachnoid Hemorrhage: A Potential Imaging Pitfall Chun-Yu Lin
Canadian Association of Radiologists Journal 65(2014) 225-231
・画像診断に絶対強くなるワンポイントレッスン 〜病態を見抜き、サインに気づく読影のコツ
堀田昌利, 土井下 怜他