今回は、僕が実際に当直中に経験した、
重症呼吸不全の触れ込みで救急搬送されてきた一例
初期治療と鑑別診断について学んだこと
について、初期研修医の目線から感じたことを中心に書いていきたいと思います。
この記事は、
●症例クイズが好きな研修医や医学生
●3次救急の救急外来での初期対応の流れが知りたい方
●救急医療にかかわる救急隊の方々
に読んでいただきたい記事です!
実はこの内容は症例プレゼンとして院内発表させていただいた内容です。
いろいろと学ぶことが多く面白いとコメントをいただいたので、
改めてアウトプットすることで自分の理解を深めようと思って書いています。
そのためスライドベースの内容になるので、
スライドを流し読みする感じでサクっと読めますので是非ご一読を!
1.ある日の夜勤中…
今回はなるべく臨場感をもって考えてもらうために、
学会発表などの主訴、現病歴、既往歴…などとまとまった形式とは少し変えたスタイルで進めていきたいと思います。
ある日の夜勤中、指導医の先生から
「呼吸不全の人があと10分で来るよ!蘇生室にエコー持って降りて向かっといて!」
といわれました。
パッと渡された、救急隊から集めた情報を書いてある紙は右のような感じでした。
BPについてはうまく測定できているかわからないとのこと。
詳しい現病歴は聞けてない、いわゆるroad and goの状態で、
救急隊の連絡もかなり切迫して焦っている様子だったそうです。
2.来院後の所見
実際に来院されてからのPrimary surveyは以下の通りでした。
真っ赤ですよね…笑
このように、ABCD4つにクリティカルな異常がある状態でした。
さて、何から手を付けましょうか…?
3.ABCへの治療介入
どんなに焦った状態でも、やはりABCの安定からが基本です!
まずここまでのクリティカルなABCDの異常があるため、挿管の適応であるとチームで意見を共有した状態で、初療がはじめました。
来院後、酸素投与を継続しながらすぐにモニター、ルート確保、採血を行います。
まずは、挿管までのつなぎとして、準備していたNPPV装着しました(来院前にHOTを付けていないことで呼吸不全が起きたと考えてあらかじめ準備されていました)
ですが、SpO2は70%台、気道も部分閉塞したまま…
そのまま速やかに挿管後、SpO2は90%に改善しました。
経時的な血圧評価のため、Aライン留置し、
血圧低下に対しては、Nadを投与しました。
ここまでのABCDへの介入によって、ある程度バイタルは維持された状態といえます。
しかし実際はABCの安定化だけに精一杯になるのではなく、
同時に原因検索をしながら初療を進めています!
さて、何の検査を行いましょうか?
この時検査を考慮する際には、ここまでのプロブレムを想定したうえで、原因となる疾患を想定することが大切です。
この段階でのプロブレムリストは、
#気道部分閉塞 #呼吸不全 #頻脈 #低酸素血症 #意識障害
の5つでした。
4.各種検査を施行
さあ、各種検査はある程度出そろいました。
鑑別診断はいくつか絞られてきたと思います。
ここで僕自身改めて広く鑑別をあげなおすと、
・既往の間質性肺炎の増悪?
・ST変化もあったし、心筋梗塞?
・両側全肺野の浸潤影…バタフライシャドウととるなら心不全による心原性肺水腫?
・はたまた浸潤影といえば、意識障害による誤嚥が原因の肺炎?
いろいろと頭を巡らせながら、原因検索のためCT撮影にいきました。
5.真の原因は!
CTの結果は以下のような所見でした。
そう、SAHに伴う神経原性肺水腫を疑う画像所見だったのです!
6.詳しく話を聞いてみると…
ここで、搬送してきた救急隊や、同乗者に再び話を聞いてみると、
実は参列者と会話しているときに意識を失っていたことがわかりました。
すなわち、突然発症だったのです!
もし突然発症のエピソードだと認識していれば、SAHも鑑別に入ったはずでした。
あせった初療しながらも、いかにAMPLEの聴取をしていくかが大切!
救急隊や目撃者の情報を詳しく聴取する!
この点は大切だと学びました。
7.Take home message
まとめると、この3つになるかなと思います!
特に今回は、救急隊からの情報によるアンカリングやミスリードが原因となり鑑別に困った症例でした。
複数の人数で初療にあたるときは、情報をしっかり集めてまとめる役割を担う人が必要だなと感じました!
今回のSAHに伴う神経減性肺水腫については、次回の記事にまとめようと思います。
こちらも是非あわせて読んでみてください!
SAHについてまとめた医学ノートはこちら👇
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