今回は、前回学んだ「10ステップの読み方」を実際に使いながら、特殊な心電図の波形を見抜く練習をしていきます。
取り上げるのは、低体温症の「オズボーン波(J波)」と、Brugada(ブルガダ)症候群の2つです。
どちらも、見逃してしまうと心室細動(VF)=心停止につながりうる、とても大事な波形なんです。
「10ステップの型で読む」+「特徴的な波形をひとつずつ覚える」という流れで、一緒に見ていきましょう。
今日の目標
- 特殊な波形も、まずは10ステップの「型」にそって系統的に読めるようになる
- 低体温症に特徴的なオズボーン波(J波)を見抜けるようになる
- 若年者の失神ではBrugada症候群を疑って、V1・V2をチェックできるようになる
0まずは「10ステップ」のおさらいから
前回学んだ10個のステップ、覚えていますでしょうか。
①心拍数 ②調律(リズム) ③電気軸 ④移行帯 ⑤P波 ⑥PQ間隔 ⑦異常Q波 ⑧QRSの形 ⑨STの形 ⑩T波・QT間隔
という順番でしたね。ポイントは、1〜12誘導を順番に見ていくことと、P→QRS→ST→Tの順番に見ていくことです。
難しい波形・異常な波形を見抜くために何よりも大事なのは、正常の波形をしっかり覚えておくことです。
「ちょっと忘れちゃったな」という方は、ぜひ前回の動画をもう一度見てから進んでくださいね。
動画の中では症例ごとに一時停止ポイントがありますので、必ず一度動画を止めて、ご自身で10ステップで読んでみましょう。
1症例①:道端で見つかった意識障害の患者さん(体温28℃)
1例目は、意識が悪い状態で道端で発見された、体温28℃の患者さんです。かなり体温が低そうですよね。
この患者さんの心電図を10ステップで読んでいくと、特にステップ7・8(QRSとSTの形)が変なんです。
波形のポイント:オズボーン波(J波)
- QRSの終末部に「コブ状の波」がある … これがオズボーン波(J波)です
- J点の上昇を伴う
- 特にII誘導とV4〜V6で見やすいと言われています
- 32℃以下で出やすく、体温が低いほど振れ幅が大きくなります
これが、低体温症のときに特徴的な心電図の波形です。低体温では徐脈になることもあるので、
「R−R間隔が何マスかな」と、脈もあわせて確認するのがポイントですよ。
オズボーン波が目立つときは、心室細動(VF)のリスクが高まっているサインです。
雪山での遭難などで命を落とす原因のひとつにもなり得ます。心停止を避けながら管理することが、何より大事になります。
低体温症への対応のポイント
- 除細動の準備をしっかりしつつ、復温を進める
- 復温中は血管が拡張して血圧が下がることがある(リワーミングショック)
- そのためカテコラミンなどを準備しながら対応する
冬場になると、こういった患者さんは多くなってきます。オズボーン波があるかないかで、対応が大きく変わります。
心電図の波形を見抜くことで治療や対応が変わる、代表的な症例のひとつですね。
2症例②:27歳男性の意識消失(失神)
2例目は、27歳の男性で、意識消失(失神)の患者さんです。
若い方の失神ですから、ちょっと嫌な予感がしますよね。ヒントはV1・V2のQRSとSTです。
波形のポイント:V1・V2に注目
- V1・V2のQRSが右脚ブロックに似た形に見える
- QRSの終わり際で、基線と比べてSTが上昇している
これの正解は、Brugada(ブルガダ)症候群です。国家試験などで聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。
「右脚ブロックだけだ」と判断してしまわずに、ST上昇の「形」まで見にいくのがポイントです。
普通のST上昇とは、少し形が違うんですね。
STが弧を描いて徐々に下がっていく形。かなり特徴的で分かりやすいタイプです
馬やラクダに乗る「鞍(くら)」のような形のST上昇です
このST上昇の形に加えて、T波が陰性か陽性か、STがどのくらい高いか(1mmより高いかどうか)といったところで、タイプが分かれてきます。
特にV1・V2の誘導で確認しましょう。タイプ2・タイプ3では、心臓に負荷をかける誘発試験などをすることで、より分かりやすく見えることもあります。
Brugada症候群で押さえておきたい背景
- 遺伝性の病気です … 家族歴や失神歴を必ず確認しましょう
- 発熱や飲酒などがトリガーになって、波形が増悪して出やすくなることがあります
- 問題になるのは、突然VF(心室細動)になることがあるという点です
若年の方の失神や突然死(家族歴含む)をみたら、Brugada症候群の可能性を考えながら心電図を読みましょう。
「V1・V2で右脚ブロックっぽい形+STの変化」がキーワードです。
3特殊な波形を覚えていくコツ
今日は2つの波形をまとめました。今後もいろいろな波形を勉強していきますが、大事なのは、
とにかく10ステップで読めるようになることと、それに加えて特徴的な波形をひとつひとつ覚えていくことです。
特にこういった特殊な波形は、QRS・ST・T波の「形」に注目すると、ぐっと理解しやすくなりますよ。
まとめ
- 特殊な波形も、まずは10ステップの「型」で順番に読んでいきましょう。正常波形を覚えることが異常を見抜く近道です。
- 低体温症(32℃以下)では、QRS終末部のコブ状の波=オズボーン波(J波)に注目。II誘導・V4〜V6で見やすく、体温が低いほど目立ちます。
- オズボーン波はVFのリスクのサイン。除細動の準備をしつつ復温し、リワーミングショックに備えてカテコラミンも準備しましょう。
- 若年者の失神では、V1・V2の右脚ブロック様QRS+ST上昇(coved型/saddleback型)からBrugada症候群を疑いましょう。
- Brugada症候群は遺伝性。家族歴・失神歴を確認し、発熱・飲酒がトリガーになることも覚えておきましょう。
- QRS・ST・Tの「形」に注目しながら、特徴的な波形をひとつずつ増やしていきましょう。





