Qラボ

Qラボで申し送らナイト【2026年7月26日公開収録】

📩 7月リアルタイムセミナー後の30分

2026年7月のリアルタイムセミナー終了後、恒例の「Qラボでおくらナイト」をお届けしました。

救急外来で使いがちなNG用語の話から、マシュマロ2件への回答、そして僕のこだわりが詰まったガンマ計算の小噺まで。

当日参加できなかった方も、この記事でゆるっと振り返っていきましょう。

皆さん、7月のリアルタイムセミナーもお疲れ様でした!

この記事を読んでくださっているあなたは、22時30分まで一緒に残ってくださった方かもしれませんし、後からアーカイブで追いかけてくださっている方かもしれません。

どちらの方にも、当日の空気感が伝わるように、チャット欄の反応も交えながらまとめてみました。

「呼吸苦」「ショックバイタル」でカンファで吊るし上げられる前に

まずは、セミナーに関連する用語の話から。

救急外来での対応後の申し送りやプレゼンで、間違った用語を使うとカンファレンスで叩かれることってありますよね。その代表格が、「呼吸苦」という言葉です。

⚠️ 実は”医学用語として存在しない”言葉たち

  • 「呼吸苦」:医学用語としては存在しません。「呼吸困難」に言い換えましょう
  • 「ショックバイタル」:ショックは組織の低灌流という”病態”の名前であって、バイタルサインの名前ではありません

チャット欄でも「使ってしまいます」という声、たくさんいただきました。

そうなりますよね。僕も言いがちです。

特にショックバイタルという言葉が悩ましいのは、「ショックバイタル=血圧が低いこと」という使われ方をすると、「血圧が低い=ショック」という誤解を助長してしまうところなんですよね。

今回のセミナーでも何度も出てきたように、ショックはあくまで循環に起因する組織低灌流の病態。血圧が保たれているショックもあるわけで、そういった視点からも避けましょうと言われる用語です。

当日は「若い子にショックバイタルって何ですか?と聞いてしまいました」「老害です」なんてコメントもあって、思わず笑ってしまいましたが(関西だと笑いに変えられてしまうそうです。それはそれでいいですよね◎)

💡 

「僕らもこういう指摘をもらうことで成長してきた部分があるんですよね。全部をスルーすると成長の機会を失ってしまうし、かといって指摘だけだとカンファの空気が悪くなる。伝え方のバランスが難しいところですが、誰にも指摘されない立場になってから気づくのは、やっぱりちょっと恥ずかしい。だからこそ、バランスよく伝え合える文化を作っていきたいなと思っています。」

マシュマロ①|緊急輸血で”先回り”できた話

💬 いただいたマシュマロ(検査技師さんより)

「先日、救急外来の患者様で急変からの緊急輸血が必要になる場面がありました。当院では基本的に別採血での2回の血液型検査の結果で血液型確定となります。先日の救急外来の薬剤セミナーでトリガーの話があり、『これは輸血になるかも』と、たまたま2回目の採血の外注検体の残血で2回目の血液型を確定しておくことができました。普段は担当ではない仕事は後手後手になりますし、慌てることでインシデントにもつながりかねません。先回りで動くことができると余裕ができて、在庫を兼ねた発注などもスムーズになります。貴重なご講演をありがとうございました。」

これは本当に嬉しいマシュマロでした。ありがとうございます。

2回の血液型検査で確定血液型とする運用は、医療安全的に多くの施設で採用されていると思います。

だからこそ、「これは輸血になるかもしれない」とセミナーで学んだトリガーを思い出して、確定血液型まで先回りしておけたというのは、素晴らしい動きですよね。

💡 Qラボをみんなで学ぶことの、いちばんのポイント

  • 医師がどういうふうに意思決定しているのかを知れる
  • 看護師さんが何を準備しているのか、検査技師さんが何を考えながら動いているのかを知れる
  • お互いの視点を知ることで、指示を受けてから考えるのではなく、「次に何が起きるか」を先回りして考えられるようになる

救急外来において、先回りして考えられるというのは本当に大事なスキルです。多職種の皆さんは、指示を受けてから次を考える場面も多いと思いますが、あらかじめ「こういうことが起きるかもしれない」と意識しながら動けると、対応の余裕がまったく変わってきます。いい学びの機会になっているようで何よりです。

この救急外来の薬剤セミナーは、Qラボメンバーの皆さんはアーカイブで視聴できます。まだの方はぜひ。そして8月も、定例会とは別軸の特別セミナーを企画していますので、楽しみにしていてください◎


マシュマロ②|JPTEC受講前の勉強法

💬 いただいたマシュマロ

「1ヶ月後にJPTECを受講する予定です。プレテストを先に勉強しておこうと思っているんですが、受講歴のある方により良い勉強法をご教授いただけると嬉しいです。」

僕も一度、受講生側で参加したことがあります。プレホスピタルのセミナーでいうと、MCLSなんかもありますね。

📋 僕のおすすめ勉強法

  • プレテストを先に解く:覚えないといけないところが見えてくるので、間違えたところを復習してから受講する(これは月並みですが、やっぱり王道です)
  • 病院前のプレゼンで出てくる単語や順番を意識して受講する:救急隊の方々が病院前で何を考えながら活動しているのかがわかって、すごく勉強になります
  • 共通言語を一緒に学ぶ:全身固定、ログロール、フラットリフトなど(JATECでもよく出てきますね)。なぜこの手順なのか、搬送時に何に気をつけているのかを意識してみてください

個人的に受講して感じたのは、病院前ではバイタルサインの評価までに時間がかかるということでした。病院ではモニターをつければあっという間にバイタルがわかりますが、病院前ではそうはいかない。だからこそ、身体診察がいかに大事かを、病院前の環境ではより強く感じられると思います。

僕自身、フライトドクターとしてドクターヘリやドクターカーに乗っているときは、身体診察でショックの鑑別をする場面が多くなります。すぐに検査にアクセスできない状況のほうが、むしろ身体診察の力が鍛えられるんですよね。

マシュマロをいただいてから1ヶ月ほど経つので、もう受講されたかもしれません。ぜひ受講後の感想も、マシュマロで聞かせてもらえたら嬉しいです◎

今夜の小噺|ガンマ計算は”初期量”で楽になる

時間に余裕があったので、せっかくならとガンマ(γ)計算の話をしました。カテコラミンをはじめ、投与量を厳密に規定したい薬剤・体重あたりで換算したい薬剤の指示で、必ず出てくるやつですね。

そもそも、なぜ「ガンマ」で指示するのか

たとえばオノアクトを投与しようと思って添付文書を見ると、「1μg/kg/minで持続投与を開始し、適宜調整」のように書いてあります。ところが、薬剤の組成(溶き方)は施設によってバラバラなんですよね。広島県内は似ている施設が多い印象ですが、関東圏や東北圏の施設の話を聞くと、けっこう違います。

同じ薬でも組成が違えば、「時間6mlでいってます」という流量の言い方では、同じ投与量にはなりません。だから、組成に左右されない言い方が必要になる。それがガンマです。

📋 ガンマ(γ)とは

  • 1γ = 1μg/kg/min(体重1kgあたり、1分間に何μg入っているか)
  • 体格が違っても、同じ数値で指示が成り立つのが最大のメリット
  • 循環作動薬の指示・申し送りは、ガンマの単位で揃えるのがお作法(流量ml/hも添えると親切◎)
  • ちなみに「ガンマ」という言い方は日本だけ。海外では通じません(これ、結構おもしろいポイントです)

逆に流量(ml/h)だけ言われても、組成がわからなければガンマ数はわかりません。各施設で組成は基本的に固定されているはずなので(医療安全的にもそこが揺れると危ないですからね)、自施設の組成でガンマとml/hがどういう比率になるのかを、薬剤ごとに一つ覚えておくのが大事です。

教科書通りの計算は、正直めんどくさい

教科書的には、単位をひとつずつ開いて揃えていきます。minをhにするために60をかけて、μgをmgにするために0.06に直して、体重をかけて、濃度(mg/ml)で割って、ようやくml/hが出る。

たとえば0.3%(3mg/ml)のドブタミンを3γでいきたいとき、3γ × 0.06 × 体重40kg ÷ 3mg/ml = 2.4ml/h。答えは出ますが、現場でこの式を毎回組み立てるのは、僕はけっこう煩雑だなと思うんですね。もっと簡単な方法はないのかと、いろいろ調べました。

そこで出会ったのが「初期量」という考え方

💡 初期量 ── 「体重 × 0.1」ml/h で流したときのガンマを、薬剤ごとに1つだけ覚える

例:ノルアドレナリン3A+生食50ml の組成なら

  • 体重50kgの人 → 初期量は 5ml/h。このとき 0.1γ
  • 体重80kgの人 → 初期量は 8ml/h。このときも 0.1γ
  • つまり覚えるのは「ノルアドは0.1」、これだけ!

一度だけ計算しておきましょう。ノルアドレナリン3Aを生食50mlに溶いた組成で、体重50kgの人に5ml/h(=体重×0.1)で流すと、1時間あたり0.3mg。これをμgに直して体重と分で割ると、ちょうど0.1γになります。この「初期量のときのガンマ」さえ覚えてしまえば、体重換算の計算をひとつスキップできるわけです。

💡 実際に使ってみましょう

Q1. 体重80kgの患者さんに2.4ml/hでノルアドを投与中。今、何ガンマ?

  • 初期量は 80 × 0.1 = 8ml/h。これが0.1γ
  • 2.4ml/h は 8ml/h の 3/10 → 0.1γ × 3/10 = 0.03γ

Q2. 体重80kgの人を0.05γにしたい。ポンプは何ml/h?

  • 初期量 8ml/h = 0.1γ。0.05γはその半分 → 8 ÷ 2 = 4ml/h

比率で考えるだけなので、暗算でたどり着けるんですよね。この考え方は僕の書籍にも書きましたし、麻酔科の先生には結構この方式でやられている方が多いみたいです。救急の先生はいろんなやり方をされると思いますが、ひとつのおすすめとして覚えておいてください。

ノルアドのもう一つのこだわりポイント

敗血症性ショックのときのノルアド、書籍ではだいたい「0.05〜0.1γで開始」と書いてあります。ただ、0.05γくらいだとかなり微量で、効果が届くまで時間がかかることもある。ショックのときはこれからどんどん血圧が下がるかもしれないわけですから、まず0.1γをしっかり入れるというのが、我々の施設でよく言われる始め方です。

💡 吹き出し|三谷

「しかもこの0.1γ、そのまま初期量なんですよ。ノルアドを始めるときのml/hは『体重 × 0.1』にしちゃえばいい。体重50kgなら時間5、体重40kgなら時間4で始める。覚えるのは『ノルアドは0.1』だけ。超わかりやすくないですか? 他の薬剤の初期量も、ぜひ自施設の組成で一度計算してみてください◎」

当日は「閉じるボタンがあったら連打です」なんてコメントもいただきましたが(笑)、こういう「へぇ」となる話って、個人のこだわりからしか生まれなかったりするんですよね。AIがこれだけ台頭して、調べたいことはすぐ調べられる時代だからこそ、属人的なこだわりを楽しんで学んでもらえたら嬉しいです。ガンマ計算にはこだわりのある方も多いと思うので、皆さんの施設のやり方も、ぜひオープンチャットやマシュマロで教えてください。


【告知】8月のテーマは「心電図」。心電図検定、一緒に受けませんか?

最後に告知です。オープンチャットでも一度共有しましたが──心電図、勉強したくなってきませんか?

今回のセミナーのように、心エコーと心電図は切っても切り離せません。やったらやった分だけ理解度も解像度も上がる、勉強しがいのある領域です。

✅ 8月の予定とお誘い

  • 8月のセミナーは「心電図」を扱います。救急外来で絶対に避けられない検査ですからね
  • そして、Qラボのみんなで心電図検定を受けませんか?というお誘いです
  • 「私は◯級を受けます」と宣言し合って、級ごとの勉強法を共有できたら、モチベーションも勉強もはかどるはず
  • 僕は救急医になりたての頃に2級を取ったきりなので、ちょっと背伸びして1級に挑戦してみようと思っています
  • 申し込みの詳細はまだ出ていないはずなので、公開されたらQラボで共有します

みんなで同じ目標に向かって勉強するって、すごく意義があると思うんです。どれくらい勉強時間を割けるか、僕もドキドキではありますが、Qラボのメンバーと一緒ならきっと楽しい。一緒に受けたいなと思った方は、ぜひ申し込んでいきましょう!


今月も、遅い時間までありがとうございました。

7月のリアルタイムセミナーと「Qラボでおくらナイト」、以上となります。リアルタイムで22時30分まで聴いてくださった皆さんも、アーカイブで追いかけてくださった皆さんも、本当にありがとうございました。

マシュマロは引き続き募集しています。セミナーの質問はもちろん、普段の疑問、Qラボの感想、最近頑張ったこと、救急について普段思っていること──なんでも大歓迎です。皆さんのコメントで、このQラボ自体がどんどん盛り上がっていきますので、よろしくお願いします◎

それでは皆さん、また来月お会いしましょう。おやすみなさい。