Qラボ

難治性ショックの離脱とモニタリング 【昇圧薬をどう減らし、何で評価するか】

血圧が上がらないときに何を手がかりに評価するか、そして落ち着いてきた昇圧薬をどの順で減らして(離脱して)いくかを、文献の知見とあわせてまとめます。

1. 難治性ショック ― 薬を足す順序

ノルアドレナリンを増量しても血圧が維持できないとき、対談で共有された上乗せの流れは次のとおりでした。いずれの段階でも、輸液は足りているかという視点を持ち続けることが前提になります。

ノルアドレナリンを軸にする

まずはノルアドレナリンで血管の緊張を補います。反応が乏しければ輸液の充足を再評価します。

バソプレシン(ピトレシン)を足す

ノルアドレナリンの増量だけに頼らず、作用機序の異なるバソプレシンを併用します。

アドレナリン、またはドブタミンを検討する

それでも維持できない難治例では、アドレナリンを追加します。心機能低下が主体であれば、ドブタミンで心拍出量を補うことを考えます。

対談から ― アドレナリンが登場する場面

佐藤先生は、アドレナリンを使うのは「ノルアドレナリンやバソプレシンまで用いても維持できないきびしい状況」や「心停止後症候群で数日にわたり循環がきびしいとき」と話されました。ただし敗血症では、そこまで至った時点で感染源のコントロールがついておらず、可逆点を越えていることも多いため、効果が限られる場合があるという慎重な見方も共有されました。

2. 「何が血圧を下げているか」をどう見極めるか

対談で佐藤先生が強調されたのは、血圧低下に何が寄与しているかの判定は難しいという点でした。前負荷(容量)が足りないのか、心臓のポンプが弱っているのか、血管の緊張が保てないのか。これを一筋縄で言い切ることはできず、複数の情報を組み合わせて「もっともらしい答え」を作っていくことになります。

対談で挙がった評価の手がかり

  • 心エコー ― 心機能や容量の状態を短時間で把握できる。まず当てたい
  • 病歴 ― 経過や背景疾患から原因を絞る
  • 輸液チャレンジ ― 少量の輸液に対する反応を見る
  • CVP(中心静脈圧)動脈圧に基づく心拍出量モニタリング中心静脈血酸素飽和度(ScvO₂)静脈‐動脈CO₂ギャップなど、使えるものを組み合わせる

とくに敗血症では、経過中に心機能が低下する敗血症性心筋症を生じることがあります。輸液が十分に入っているのに血圧が下がるときは、心エコーで心機能を確認し、ドブタミンの追加を検討するかどうかで方針が変わります。

文献ポイント ①(Sato R, ほか. 敗血症性心原性ショックのレビュー, 2025年)
「心機能低下を伴う敗血症では、心エコーによるスクリーニングが有用です。高リスク例では肺動脈カテーテルによる継続的なモニタリングが役立つ可能性があります。高用量の昇圧薬・強心薬に頼る重症例では、適切な患者選択のもとで機械的循環補助(MCS)を検討します。ただし高用量の昇圧薬・強心薬に頼る状態そのものが予後の悪化と関連します」

3. 昇圧薬の離脱 ― どちらを先に減らすか

ショックが落ち着いてきたとき、ノルアドレナリンとバソプレシンを併用している患者では、どちらを先に中止するかが実務的な悩みどころです。ガイドラインでは明確な推奨がないため、この点は文献の知見が参考になります。

文献ポイント ②(Wu Z, ほか. 昇圧薬の中止順序に関するメタ解析, 2020年)
「ノルアドレナリンとバソプレシンを併用している敗血症性ショックの患者では、バソプレシンを先に中止すると、ノルアドレナリンを先に中止する場合よりも低血圧(血圧の再低下)の頻度が高くなりました。一方で、死亡率やICU滞在日数には差を認めませんでした。なお、この結論を確定するにはまだ十分な根拠が得られておらず、さらなる検証が必要とされています」

つまり、併用中に離脱を進める際は、バソプレシンを先に切ると一時的に血圧が下がりやすいことを念頭に置き、離脱後もモニタリングを続けることが大切です。予後そのものを左右する差ではないため、施設の方針や患者の状態にあわせて判断します。

4. 高用量時のルート管理という「こだわり」

対談では、高用量のノルアドレナリンを扱うときのルート管理という、実務的で細かな話題にも及びました。用量が増えて希釈濃度を切り替える(例:3アンプル組成から、5倍濃度の15アンプル組成へ)ときには、切り替えの前後で流量が大きく変わり、循環が変動しやすくなります。

切り替え時の工夫(対談より)

  • 2台のシリンジポンプを同時に走らせ、少し重ねながら置き換えることで、流量の急な変動を避ける
  • 循環作動薬のルートを細胞外液で後押しする方法と、変動を避けるために単独ルートにこだわる考え方があり、施設や診療科によって流儀が分かれる
  • カテコラミンの上流にある点滴の速さも、意外に見落とされやすい変動要因になる

細かな点ですが、こうした一つひとつの工夫が、切り替えのタイミングでの循環の乱れを防ぎます。看護師をはじめとする多職種の視点からも、これらを共有しておくと、より安全に処置を進められます。

最終的に向かう先 ― 根本治療とデバイス

薬剤とモニタリングで循環を維持しても、根本原因の治療が伴わなければショックからは抜けられません。難治例では、ECMOをはじめとする補助循環(MCS)も選択肢になります。Qラボの7月テーマでもあった機械的循環補助まで含めて、「どこまで薬剤で粘り、どこでデバイスに切り替えるか」を考えていくことになります。

この記事のまとめ

  • 難治例では ノルアドレナリン → バソプレシン → アドレナリン/ドブタミン の順で上乗せを考える
  • 血圧低下の原因判定は難しく、心エコー・病歴・輸液チャレンジ・各種モニタリングを組み合わせる
  • 輸液が十分でも血圧が下がるときは、敗血症性心筋症を疑い心機能を確認する
  • 離脱時、バソプレシンを先に切ると低血圧が起こりやすい。中止後もモニタリングを続ける
  • 高用量時の濃度切り替えは、重ねながら置換して循環変動を避ける
  • 根本治療が最優先。難治例では機械的循環補助(MCS)も選択肢になる

引用文献

  1. Wu Z, Zhang S, Xu J, ほか. Norepinephrine vs Vasopressin: Which Vasopressor Should Be Discontinued First in Septic Shock? A Meta-Analysis. Shock. 2020;53(1):50-57. https://doi.org/10.1097/SHK.0000000000001345
  2. Sato R, Hasegawa D, Guo S, ほか. Sepsis-induced cardiogenic shock: controversies and evidence gaps in diagnosis and management. J Intensive Care. 2025;13(1):1. https://doi.org/10.1186/s40560-024-00770-y