Qラボ

Qラボで申し送らナイト【2026年6月26日公開収録】

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6月27日(土)リアルタイムセミナーお疲れ様でした!
Qラボ限定ポッドキャスト「Qラボで申し送らナイト」の第3回をお届けしました。

6月のテーマは 「ショック」。アーカイブセミナー4本+リアルタイムセミナーで、ショックの全体像から個別の病態まで一緒に学んできました。今回の収録は、いつもの確認問題スタイルから少し趣向を変えて、オープンチャットでの議論マシュマロ2通、そして参加者の皆さんとのライブQ&Aに、じっくり時間を取りました。

リアルタイムで参加できなかった方にも、この記事で収録の要点が掴めるよう整理しています。今月は画面を共有しながら、参加者の皆さんと意見を交わす時間を多めに取りました。

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  1. 6月の振り返り|ショック、4本のアーカイブで地図は描けましたか?
  2. オープンチャットより|胸腔脱気・ドレナージの“プレホスのリアル”【特集】
  3. マシュマロ回答コーナー
  4. ライブQ&A|参加者の皆さんと一緒に
  5. お知らせ|Notion本&7月セミナー予告
  6. 7月のテーマ予告
  7. どうですか?あなたの感想を聞かせてください。

6月の振り返り|ショック、4本のアーカイブで地図は描けましたか?

ショックは救急・集中治療の中心にありながら、扱う範囲が広いテーマです。分類だけでも循環血液量減少性・心原性・閉塞性・血液分布異常性と多岐にわたり、それぞれで初動も治療も変わってきます。そこで今月は、まず「ショックをどう見抜き、どう初期対応するか」という共通の地図を描くことを大切にしました。

前半の基本パートでは、ビジュアルEF(目視のEF)やショックの初期評価についてもお話ししました。1ヶ月積み上げてきたことで、「ショックかも」と思ったときに次の一手を考えやすくなっていれば幸いです。

あわせてご活用いただきたいのが、前野先生がリアルタイムで更新してくださっている ポータルサイト です。過去のアーカイブセミナーや限定記事が蓄積されており、疑問やお悩みの多くはこの中で見つけていただけると思います。まずは一度ご覧いただくことをおすすめします。

オープンチャットより|胸腔脱気・ドレナージの“プレホスのリアル”【特集】

今回扱ったテーマのひとつが、緊張性気胸などに対する 胸腔の脱気・ドレナージ です。ドレナージの「やり方」をめぐって、前野先生からこんなコメントをいただきました。

前野先生より:「穿刺のときや胸腔ドレーンを入れるとき、僕は穿刺よりもペアンで鈍的に脱気することが多いです。いわゆる胸腔開放ですね。」

「脱気=胸腔ドレーンを入れるイメージで、ペアンで鈍的に胸膜に対して脱気する、というニュアンスですか?」とお聞きしたところ──

前野先生より:「おっしゃる通りです。院内のERに来たら、いちばん安全なトロッカーの位置、第5〜6肋間あたりからシンプルに鈍的剥離してドレーンを入れる、という操作になります。
ただ ドクターカー だと、かなり揺れるんですよね。スペースも狭い。穿刺だと思いのほか胸腔内(肺などの臓器)に刺さってしまうのが怖い。だから第2肋間あたりから、ペアンしか胸腔に達するものがない状態で鈍的にやった方が安全じゃないか、と。僕らはそう教わることが多いです。」

📍 院内ER と プレホスピタル|“同じ脱気”でもアクションが変わる

  • 院内ER(落ち着いた環境):トロッカーで第5〜6肋間から鈍的剥離 → 胸腔ドレーン挿入という標準的な流れ。
  • ドクターカー/プレホス(揺れる・狭い):穿刺による臓器損傷を避けるため、第2肋間あたりからペアンで鈍的に脱気(胸腔開放)。「鋭的に刺さるものを胸腔に入れない」という発想。
  • 気胸が小さいほど、揺れの中での穿刺はかえって危ない。「鈍的」を選ぶのは“安全側に倒す”意思決定

プレホスピタルでは確かに、重症外傷で胸部外傷がありそうな症例に対して、両側の前胸部を胸腔開放して脱気し、搬送することを経験します。では、開放したあとはどうしているのか?ここも伺ってみました。

前野先生より:「経験は実は1例くらいなのですが…そのときは三弁テーピングのような閉鎖も一瞬頭をよぎりました。ただ、開放したらすぐERに着いてしまったので、そこまで気にしませんでした。」

🔁 開放後の処置|“正解”は施設・状況でかなり違う

胸腔を開放したあとの扱いは、三弁テーピング(一方弁になるよう一辺だけ開けて貼る)で閉鎖する方法もあれば、ガーゼを当ててそのまま搬送するだけ、という運用もあります。短時間で病院に着くプレホスでは、後者で十分なことも多い。
他施設でどうされているかを知りたいテーマでもあります。「うちではこうしています」があれば、ぜひマシュマロやオープンチャットでお寄せください。

今月のショック特集では、心タンポナーデに対する心嚢穿刺も扱いました。「鋭的な穿刺をどこまで行うか/鈍的に安全側へ倒すか」という胸腔ドレナージの考え方は、心嚢ドレナージの判断にも通じます。手技は“型”を知ったうえで、目の前の環境(揺れ・スペース・時間)に合わせて選ぶ──この点を意識していただければと思います。

マシュマロ回答コーナー

① 重症頭部外傷とICカテーテル|体温は“下げる”のか“上げすぎない”のか

「外傷でICのカテーテルを挿入するのを見るのですが、これは体温を下げるときに使うものですよね。どのようなときに下げるのでしょうか? また、挿入後に中枢側に血栓ができるケースが多いとも聞きました。」

まず大事な整理から。出血性ショック(外傷性ショック)では、低体温を“避ける”のが鉄則でしたよね。低体温・アシドーシス・凝固障害の「死の三徴(lethal triad)」が揃うと、治療が後手に回ってしまう。今回のセミナーでも繰り返しお話しした通りです。

一方で、ご質問のICカテーテル(血管内体温管理デバイス)が出てくる典型は、重症頭部外傷のICP(頭蓋内圧)管理の場面だと思います。ここで意識しているのは「低体温にする」というより、“高体温を避ける(上がりすぎないようにする)”体温コントロールです。

💡 重症頭部外傷の体温管理|考え方の地図

  • 高体温は脳に不利:脳圧が上がりすぎないよう、鎮静・体位の調整に加え、体温が上がりすぎないようコントロールする、という工夫のひとつ。
  • 血管内デバイスは血栓リスクと隣り合わせ:中枢側の血栓は実際に起こり得るので、必要に応じて造影CTなどで評価する。ベネフィットとリスクの兼ね合いで判断する。
  • “絶対にやるべき”というほどのエビデンスはないのが実情。ラダーに沿って「ここまでやるか/他にできるアクションはないか」を都度考える。
重症頭部外傷は救急外来でも遭遇の多い病態です。新年度はABCを深掘りしてきましたが、いずれDの深掘りとして重症頭部外傷を扱う回も設けたいと考えています。

② 大量輸血とカルチコール|MTPは“何を引き金に”発動するのか

「大量輸血のときにカルチコールが入っているのは、輸血製剤のクエン酸が低カルシウム血症を起こす(キレートする)のを防ぐため、という理解で合っていますか? 輸血しながら血液ガスで乳酸値やベースエクセスとともにモニタリングするのでしょうか? また、大量輸血(MTP)を開始する基準は施設でいろいろあると思うのですが、どう決めているのでしょう?」

理解はばっちりです。輸血製剤に含まれるクエン酸がカルシウムをキレートして低Caを招くので、カルチコール(カルシウム製剤)で補正します。そしてご指摘の通り、ICU入室後も血液ガスでモニタリングしながら、カルチコールを持続投与して補正することがあります。本当に100単位を超えるような輸血になると、持続でずっと補正しながら救命する、ということもあります。

そして肝心のMTP発動基準。これは本当に施設ごとにやり方が違うのですが、うちでは採血所見“だけ”で発動するというより、病院前情報の段階から準備を始めることがよくあります。

💡 うちでのMTP発動のリアル

  • 病院前情報:若年・交通外傷・多発外傷っぽい・ショック…という病歴なら、その時点でMTPを発動し、受け入れ前から準備を始めることも。
  • プレホスでの接触時:ドクターカー/ドクターヘリでFAST陽性+ショックと分かっていれば、その時点で発動していることもある。
  • 「MTPじゃなくてもいいかな」と思った症例が実はMTP適応だった──となると、死の三徴が揃って手遅れになりかねない。だから“主観”を客観化するスコアがあると安心。

このご質問をきっかけに、大量輸血を予測するスコアを少し調べ直してみました。今回、これに合わせてQラボの限定記事(=この記事)でまとめています。スコアは大きく、検査値を含まないもの検査値を含むものに分かれます。

スコア 使う項目 特徴・使いどころ
ショックインデックス(SI) 心拍数 ÷ 収縮期血圧 計算が一瞬。病院前〜院内急変・Cの異常の基本としても登場。感度・特異度はそこまで高くないのが難点だが、まず頭に置きたい指標。
ABCスコア
(検査値不要
① 収縮期血圧 ≤90mmHg
② 心拍数 ≥120/分
③ FAST陽性
④ 穿通性外傷
各1点、2点以上でMTP発動を考慮。採血なしでバイタル+FASTだけで計算でき、プレホス・要員数の現場でも使えるのが強み。
TASHスコア
(検査値を含む
収縮期血圧・心拍数・Hb・ベースエクセス・FAST(腹腔内液体)・骨盤/四肢の骨折・性別 など 血液ガス所見を要するため、結果を待つことになり病院前からの発動には使いにくい。院内で「悩ましい症例」の閾値を考えるのに向く。
ポイントは、超重症はショックの時点でABCスコアに該当すること。逆に「悩ましい」というときに、TASHのような検査値込みのスコアで輸血の閾値を考える、という棲み分けです。いずれのスコアも感度・特異度が万全というわけではないため、あくまで主観を客観化する補助線として用いるのが現実的だと考えています。

ライブQ&A|参加者の皆さんと一緒に

検査技師さんの視点|心エコー、プローブはこう当てる

今回リアルタイムセミナーを担当してくださった検査技師のEさんからも、実技ならではのお話をいただきました。実際のエコー動画を見ながら学べる回として、多くの方にご参加いただきました。

Eさんより:「研修医の先生に教えるときは、難しく考えず『プローブのポッチを右肩に向けて』『左肩に向けて』と声をかけます。IVCを見るときも、心窩部で見えないと思ったら悩まず少し右側にずらす。出ないところで止まると時間がもったいないので、コツを実践しながら、めげずに続けていただきたいです。今後は目視のEF(ビジュアルEF)やasynergy(壁運動異常)も一緒に学べると、目が慣れてくると思います。」
エコーの“所見”を見る機会は多いですが、手元側=プローブをどちらに向けると四腔像から五腔像に変わるのかといった内容は、需要が高いと感じています。心エコーが分かると心電図も考えやすくなる、というご指摘もその通りだと思います。7月にぜひ一緒に企画できればと考えています。

家庭医療専攻医・村上先生から|現場で本当に悩む3つ

診療所勤務のかたわら、週1回ERで働かれている村上先生から、とても実践的な3つの質問をいただきました。

Q1. 最初の5分で、何を見て「重症」と判断する?

キーワードは トリアージプライマリーサーベイ。5分以内で見抜くなら、まず第一印象の評価(ABCDEに準じる)です。覚えるのが難しければ、アクションに落とし込むのがおすすめ。

  • 脈を触れながら「大丈夫ですか?」と声をかける → 発語があるか(A・気道/意識)
  • 呼吸を見る → 頻呼吸はないか(2秒に1回くらいしていないか)
  • 脈の振れを確認 → 触れ方でショックの当たりをつける(C)

これだけで1分以内に気道・呼吸・循環+意思疎通をざっと評価できます。「ショックかどうか」を見積もる感覚を、まず体に入れておきましょう。

Q2. 複数の患者さんを同時に診るとき、気をつけていることは?

コツは 「この患者さんはどうなり得るか」を予測し、“こうなったら連絡して”を最初に渡しておく こと。

  • 例:心不全にNPPVを開始 → 「10〜15分後にガスを取るけど、それまでに頻呼吸が改善しなかったら5分後に電話してください」と伝えてから別の患者さんへ。
  • 次の一手を先に用意・共有:呼吸が悪化したら次は挿管 → 「改善しなければ挿管するので、挿管チューブをこれくらい準備しておいてください」。
  • 血圧低下も予測の範囲なら:「2ルート全開で輸液して安定しなければ、カテコラミンを始めて挿管します」と事前共有

悪化の道筋とトリガーをチーム全員に共有しておけば、一人の患者さんに張り付いている間も、誰もケアの抜けた患者を作らずに済みます。

Q3. めまいの患者さんで、MRIを撮るかどうかの閾値は?

ここは本当に難しく、一概には言えない前提で…。結局は中枢性かどうかの鑑別です。村上先生の症例(頭位変換で誘発され数分で治まる→Dix-Hallpike+Epley法で改善、歩行確認して帰宅)は、誘発性のめまい(t-EVS)としてBPPVらしい所見が揃い、処置で改善・歩行まで確認できているので、多くの場合それで妥当な判断だと思います。あとは時間経過のフォローと「続くならもう一度来てくださいね」の一言が効いてきます。

診断補助としてよく挙がるのが HINTS。末梢性が疑わしいときに小脳梗塞などの中枢性を見抜くための眼球運動所見ですが、評価が難しく、救急医がやると専門医より感度・特異度が落ちるという報告もあります。耳鼻科・脳神経内科の先生と一緒に何度も練習して精度を上げていく類のもので、HINTSに固執しすぎなくてよいというのが個人的な感覚です。結局は病歴も含めた総合判断と、時間を味方につけることが大事。

この話題には前野先生からも、とても実践的な補足をいただきました。

前野先生より:「めまいは皆さん苦手意識があると思いますが、まず『タイミング&トリガー(TiTrATE)』で分類分けするのが大事。今回の症例は誘発性(t-EVS)が明確なので、その方針で進めた判断はよかったと思います。
悩ましいとき、僕がよく使うのは STANDINGアルゴリズム。眼振の有無、トリガーの有無やBPPVらしさを見て、最終的に『歩けるか』で判断に寄せていく流れです。
そしてMRIの感度は初日だと文献によって約50%が偽陰性になり得るので、悩ましければ1日置いて翌日に撮ると後方循環の所見が出てくることもあります。歩けて帰れそう・悪化しても再診できる人は帰す、少しでも悩ましければ経過観察入院、という整理がよいと思います。」
フレンツェル眼鏡で自分で眼振を取るのは難しいかもしれませんが、ERに置いてある施設もあります。普遍的に使えるのは 「症状が残っているか」を見ること「時間を味方につける」 という考え方。めまい診療は、自分なりに重み付けしながら所見を総合的に見る──ここに尽きるのかなと思います◎

お知らせ|Notion本&7月セミナー予告

📘 前野先生&三谷 監修|医療者向けNotion本が発売中

先月、前野先生監修のもと、医療者向けのNotion活用本を発売しました。

Notionは近年さまざまな業界で広まっていますが、医療向けにユースケースをまとめた書籍が少なかったため、形にしました。

写真を多く使い、読み進めればデータベースを作れることを意識した内容です。各章にテンプレートのQRコード/URLを掲載しており、20個ほどのテンプレートをそのままご自身のNotionに取り込めるのも特長です。

価格は2,970円。YouTubeにはNotion活用を語った対談ポッドキャストもあります。

試し読み・感想募集・プレゼント企画(応募フォーム)は6月末までですので、よろしければご覧ください。

 

📢 【初出し】7月開催|救急外来の薬剤 総まとめセミナー

7月に 「救急外来の薬剤 総まとめセミナー」 を開催します。ゲストに ゆっくり救急医先生をお招きし、私を含めそれぞれ1時間ずつ担当し、救急外来の薬剤を総ざらいします。

このセミナーは Qラボメンバー以外の方も対象です。周囲にQラボにご関心がありそうな方、ご紹介いただける方がいらっしゃれば、ぜひお知らせください。詳細・申し込み方法は、後日Qラボや公式LINEでご案内します。

7月のテーマ予告

4月「気道」、5月「呼吸(人工呼吸)」、6月「ショック」と積み上げてきました。

ショックは範囲の広いテーマのため、7月は「心原性ショック」をテーマにアーカイブセミナーを作成していく予定です。Eさんと相談しながら、心エコー(ビジュアルEF・asynergy)を一緒に見ていく実技寄りの回も検討しています。

  • 次回「Qラボで申し送らナイト」:7月第4土曜のリアルタイムセミナー後、21:30〜22:00を予定

どうですか?あなたの感想を聞かせてください。

第3回「Qラボで申し送らナイト」、いかがだったでしょうか。今回はオープンチャットとマシュマロ、そして参加者の皆さんとのライブQ&Aを通して、現場での悩みを共有する時間になりました。ご質問をお寄せくださった皆さん、ありがとうございました。

ショックは一度で習得しきれるテーマではありません。理解の整理がつかなかったところがあれば、アーカイブセミナーを 1.5倍速 ほどで見返していただくのもおすすめです。

一度聞いた後の倍速再生は、内容の定着に役立つと思います(私が早口なため、2倍速は少し聞き取りにくいかもしれません)

マシュマロは「感想だけ」「困っていること」「相談したいこと」、いずれも歓迎しています。セミナーに直接関係しない話題でも構いません。マシュマロ1通=3pt、10通お送りいただくと有料セミナー1本(30pt)分になります。「うちの施設では胸腔開放のあと、こうしています」といった現場の声も、お待ちしています。
それでは、また7月の第4土曜、21:30からお待ちしています。
夜分のご参加、ありがとうございました。引き続き、一緒に学んでいければと思います。