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はじめての救急応援パック3時間コース【アーカイブ4週間用】

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📚 目次(クリックで該当箇所へジャンプ)

【導入】

【1時間目:ERでのカルテの書き方・読み方】

【2時間目:兆候から動く院内急変】

【3時間目:ショックを苦手から得意に】

【まとめ】


目次

0:003時間コースのテーマと、3つのゴール

2026年5月に開催した「はじめての救急応援パック 3時間コース」のアーカイブ記事です。3つのテーマを、合計3時間でお話ししました。

📋 3時間コースの構成

  • 1時間目:ERでのカルテの書き方・読み方
  • 2時間目:昇降から動く院内急変 ─ 初動の5分間が変わる
  • 3時間目:ショックを苦手から得意に ─ 動きながら考える

💡 このセミナーの軸

3つのテーマは一見バラバラに見えるかもしれませんが、すべて「救急の基本=ABCDアプローチ」に立ち返って考えると、根っこでつながっています。記事の最後では、この共通項を整理し直しているので、ぜひ通して読んでみてください。


3:53カルテの3つの役割と、救急外来カルテの難しさ

まずは1時間目、ERでのカルテの書き方・読み方から。

カルテっていつも”なんとなく”書いている方も多いと思うのですが、そもそもカルテにはどんな役割があるのかから立ち返ってみましょう。

📋 カルテの3つの役割

  • ① 記録:診療内容・病歴・既往。医療訴訟の際の証拠にもなる
  • ② 共有:他科の医師・看護師・薬剤師など、関わる全員が読む
  • ③ 成長:書くこと自体が、自分の知識と思考を整理する作業になる

ここに加えて、救急外来のカルテは、普通の病棟・外来カルテとは違う”難しさ”があります。

⚠️ 救急外来カルテの”難しさ”

  • 時間的余裕がない(数分単位で判断+オーダー+記載が並行)
  • 多くの患者さんが「はじめまして」で、ゼロから組み立てる必要がある
  • 命に直結する判断が続くストレスフルな環境
  • シフト交代が頻繁。「あとでまとめて書こう」が機能しない
  • 呼び出し・緊急対応で記載の中断が多い

だからこそ、救急外来のカルテには救急外来特有の書き方のコツがあるんです。


6:39カルテの3原則:正確・明瞭・即時

救急外来でカルテを書くうえで大事な原則は、ざっくりこの3つに集約されます。

📊 救急外来カルテの3原則

原則 中身
正確性 事実を正しく記録する。間違いは患者さんの不利益に直結する
明瞭性 他職種・他科の人にも伝わる書き方。専門略語の乱用に注意
即時性 リアルタイムで記録する。検査の合間にもこまめに飛ばす

特に救急外来では、即時性が他のカルテとは比べ物にならないくらい大事になります。CTに行く前のちょっとした時間に、簡単にでも書いて飛ばしておく──これだけで、他科の先生がコンサルされたときの体験が一気に変わります。


9:23カルテはコミュニケーション ─ プレゼンとの共通点

この3原則、実はプレゼンテーションやコンサルテーションと共通する条件でもあります。

カルテって、つい”自分のために書くもの”と思いがちですが、本質的には“読み手のためのコミュニケーション手段”なんですよね。

💡 プレゼン=プレゼント、と考えてみる

プレゼンテーションの語源はプレゼント。誕生日や母の日にプレゼントを選ぶとき、いちばん大事なのは「相手のことを思いやる」こと。カルテも同じで、読み手(次のシフトの人/コンサルされた他科の医師/自分自身)のことを思いやって書くと、自然と質が上がっていきます。


12:51情報量 × 所要時間 ─ 受け手のニーズで決める

「リアルタイムで書こう」と言われても、どれぐらい綿密に書けばいいの?という疑問は出てきますよね。

ここを判断する軸が「受け手のニーズ」です。情報量は多いほど良く、所要時間は短いほど良いんですが、患者さんの状況次第でバランスが大きく変わります。

📊 状況別:カルテに求められるバランス

患者像 優先すべきこと
多発外傷でショック、ヘリ搬送 情報の質よりスピード。バイタル・受傷起点・家族情報を最低限、即時で共有
不明熱でバイタル安定、長い病歴 時間をかけて綿密に。細切れだとかえって読みにくい

“とにかく細切れに飛ばせばいい”わけではなくて、「この患者さんを次に診る人が、何を必要としているか」を意識して書く分量を決める──これが本質です。


16:28SOAPを書き手として整理する/読み手はAPから読む

カルテといえばSOAP。”SOAPに沿って書きましょう”とよく言われますが、それぞれが何を意味しているのか、改めて整理しておきましょう。

📋 SOAPの中身

  • S(Subjective):患者さんの主観 ─ 訴えそのもの
  • O(Objective):客観所見 ─ バイタル・身体所見・検査結果
  • A(Assessment):評価 ─ SとOから何を考えるか
  • P(Plan):治療方針 ─ 評価に基づくTo Do

🔑 SとOには”解釈”を入れない

たとえば貧血があったときに、Oに「ビタミンB12欠乏による貧血」と書いてしまうと解釈が混ざります。SとOは揺るぎない事実だけ。解釈や評価はAに、その先のアクションはPに、という分担を意識しましょう。

そしてここからがあつし的おすすめ。読み手としてカルテを開くときは──。

💡 読むときは”AとPから”が早い

教科書は「SOAPの順で書け」と教えますが、読むときはAP(評価と方針)から始めて、必要に応じてSとOで肉付けする方が、情報のインプットが圧倒的に早いです。引き継ぎや胃カメラ依頼のコンサルなど、”自分の役割が決まっている”ときほど、APから読む癖をつけると、考える時間が増えます。


25:39明瞭性を損なうNGパターンと、救急外来でのカルテ早書きのコツ

明瞭性を損なう”あるあるNG”も整理しておきます。

⚠️ こういうカルテは伝わらない

  • コピペの肥大化:「○月○日 〜〜」が延々と積み上がっていく
  • 専門略語の乱用:他科・他職種に伝わらない
  • 体言止めや「?」だけ:結論が見えず、読み手が判断に迷う

✅ 救急外来でカルテを早く書くコツ

  • 朝、上級医が来る前にSとOを揃えておく(タフだけど効果絶大)
  • 日中はリアルタイムで細切れ更新。5〜10分の隙でも書いて飛ばす
  • オーダーと一緒に”なぜそのオーダーか”を一行入れる。中断を防げる
  • 救急車要請の段階から下書き。ある程度書いておいて、コンサル先まで仮置きする

29:59パターン認識:症候学 × 受診の真の理由

カルテのスピードを上げる本質は、パターン認識にあります。同じような患者さんを繰り返し診る中で、「この主訴ならこういう枠組みで書くと早い」という型を増やしていく作業です。

ここで2つの軸が大事になります。

📋 パターン認識の2軸

  • ① 症候学(胸痛・腹痛・呼吸困難など、主訴に沿ったアプローチ)
  • ② 受診の真の理由(なぜ”今日”病院に来たのか、何を求めているのか)

💡 受診理由は深掘りしないと出てこない

“とにかく何とかしてほしい”なのか、”不安を解消してほしい”のか、”検査をしてほしい”のか──普通の救急対応では捉えきれない“真の理由”が、患者さんごとに必ずあります。「なんで今日、救急に来たんですか?」と聞くだけで、話が一気に深まることが多いです。

そしてもう一つ。主訴とプロブレムは一致しないことがある──ここも押さえておきたいポイントです。

⚠️ 主訴 ≠ 真のプロブレム

本人すら自分の症状を正しく言語化できていない/話が長くて主訴が埋もれる/認知機能が落ちていて伝わらない──こういうケースで、表面の主訴に引っ張られると診断を外します。プロブレムは複数あり得ると前提を置くだけで、見落としが減ります。


32:50症例で読み解く”主訴の裏にある真の理由”

最後に、2つの症例で実感をもらえたらと思います。

【症例①】60代女性、独居、ADL自立、主訴「両下腿のむくみ」

予診票では「足がむくむ」が主訴。1週間前にも他院を受診したが改善せず、定期通院もなし。よく聞くと「肩や腰も痛い」「朝のこわばりがある」とのこと。

🔍 ここで何を考えるか

「足のむくみ」だけを症候学で追うと、心不全・腎不全・低栄養…と鑑別が広がりすぎます。でも、関節の痛み・朝のこわばりという追加情報を引き出すと、リウマチ性多発筋痛症(PMR)が浮かび上がってきます。

初発の主訴を鵜呑みにしない──カルテで一番大事なのは、ここです。

【症例②】80代男性、家族と同居、主訴「朝から立てない」、2日前から食事量減少

「立てない」と聞くと、研修医の頃は「脳梗塞かも」「脱水かも」と一直線に行きたくなります。でも、上級医はこれを「帯動困難」に翻訳する。

明らかな麻痺がない+ぐったりして全身が動かない、というパターンは──。

⚠️ 高齢者の”帯動困難+食欲低下” = 敗血症を疑え

高齢者の感染症は、典型的な発熱・WBC上昇を欠くことが多いです。「いつもより元気がない」「ご飯が食べれない」「ボーっとしている」──これらの非特異的な症状こそが、敗血症のサインだと知っておきましょう。


56:38急変には6〜8時間前から予兆がある

ここから2時間目、兆候から動く院内急変のお話。

「あの時に気づいてれば…」って、医療者であれば誰しも一度は思ったことがあるんじゃないでしょうか。実は、院内急変の多くには6〜8時間前からサインが出ていることが分かっています。

📋 2時間目のゴール

  • 急変の予兆を認知できるようになる
  • 兆候別5パターンで初動5分間を場合分けできるようになる
  • 迷ったら呼ぶ──そういう文化を職場に持ち込めるようになる

59:33News2と「呼吸数を必ず取る」習慣

急変リスクの予測ツールとしてNews2スコアがよく使われます。クイックソファより感度・特異度が高いと報告されているスコアリングです。

📊 News2の評価項目

呼吸数 / 酸素投与の有無 / 脈拍 / SpO2 / 収縮期血圧 / 意識レベル ─ ほぼ全てバイタルサイン

本格的に使うのは病棟のRRT/RRSチームですが、「リスクを見積もる軸」として頭に入れておくと、判断が早くなります。

ただ、現場で全部覚えておくのは難しいので、1つだけ徹底してほしい習慣があります。

💡 呼吸数を必ず取る

敗血症や心不全、呼吸不全の患者さんは、まず呼吸数が変動します。SpO2が98%でも、呼吸数30回ですごくしんどそうなら、それは”代償しきれずに崩れる”前兆。

モニターの呼吸数はほぼ当てにならないので、意識的に自分でカウントする。たったこれだけで、急変の認知力が大きく変わります。

💡 ちなみに、忙しいときの呼吸数の取り方

「2秒に1回呼吸しているか」を見るだけで、呼吸数30回のヒントになります。30秒×4倍が理想ですが、超緊急時はこの”2秒1回”の感覚で十分使えます。


1:03:17認知したら呼ぶ ─ RRT/RRSと呼ぶ文化

Failure to Rescue(救命の失敗)は、合併症そのものではなく「気づいた後、適切なタイミングで適切な介入ができなかった」ときに起きます。

つまり、認知した次の瞬間に「呼ぶ」動作がスムーズに出るかが、全てのカギ。

✅ RRT/RRSと「呼ぶ文化」

  • RRT(Rapid Response Team)/RRS(Rapid Response System)が整備されている病院は、院内死亡率が低い
  • 自分の施設にRRT/RRSがあるか、起動基準は何か、まず一度確認しておく
  • 起動基準を満たさなくても、「なんか変」と感じたら呼んでいい

⚠️ “呼ばなくてよかったですよ”を絶対に言わない

呼ぶハードルが高いことで患者さんが不利益を被るケースが、本当に多いです。チームの団結力は“呼ぶハードルの低さ”に表れます。Thank you for calling ── 呼んでくれた人を絶対に責めない文化を、一緒に作っていきましょう。


1:05:36兆候別5パターンの初動

ここからが本論。”呼んだあと、応援が来るまでの5分間で何ができるか”を、兆候別に整理します。

📊 兆候別5パターンと初動

兆候 最初の一手
意識の変容 まず血糖測定。低血糖は様々な疾患のミミッカー。AIUEO TIPSはチェックリスト止まりで、初動はABCDE優先+発症様式
呼吸困難 突然発症なら肺塞栓を強く意識。心不全・痰詰まり・気胸・胸水を鑑別。エコーで一気に絞れる
ショックっぽい 身体診察で4分類のあたりをつける(後述)。普段の血圧との”差分”で重症度を見る
急な不穏・せん妄 “とりあえず鎮静”は危険。PINCH MEで原因を探る。特に尿閉は忘れがち
発熱なき敗血症 高齢者の「なんか変」+帯動困難+食欲低下を、敗血症の初期サインと捉える

🔑 PINCH MEの覚え方

P(Pain 痛み)/I(Infection 感染)/N(Nutrition 低栄養・電解質)/C(Constipation/尿閉)/H(Hydration/血糖)/M(Medication 薬剤)/E(Environment 環境)。せん妄を見たら、まずこの中から原因を探る。


1:25:39高齢者の感染症と「なんか変」をSBARで伝える

高齢者の感染症は、教科書通りには現れません。

⚠️ 高齢者感染症の特徴

  • 発熱が目立たない(解熱剤内服も含めて、約1/3で発熱がない)
  • WBC・CRPもパッとしない値で出てくることがある
  • 半日〜2,3日かけて、“全身がなんとなくしんどい”形で出る(だるそう、ボーっとする)

この”なんか変”を、医師に伝わる言葉に変換するのがSBARの型

📋 SBARの順番(実は”R”から始めるのがコツ)

  • S(Situation):今、何が起きているか
  • B(Background):患者さんの背景
  • A(Assessment):自分なりの評価
  • R(Recommendation):何をしてほしいか

💡 おすすめは”R先出し”

教科書的にはS→B→A→Rの順ですが、電話口で先方に「何のために呼ばれたのか」を最初に渡すと、聞く側の認知負荷が一気に下がります。「すぐ来て診察してほしい患者さんがいます」と先に言ってから、SBARに沿って詳細を続ける──これが伝わるコンサルのコツ。

“なんか変”を「2日以上ご飯が食べられない/座ったり立てたりできない/JCS I-1のぼーっと感/家族が”いつもと違う”と感じている」のように具体に分解すると、医師との会話がスムーズになります。


1:51:28ショックの定義は「血圧低下」ではない

いよいよ3時間目、ショックを苦手から得意にのパート。

研修医時代によく出てくる議論──「血圧は保たれているのでショックではないと思います」。これ、本当に正しいのか?を最初に問い直しましょう。

💡 ショックの本当の定義

ショック = 酸素の需給バランスの破綻(循環異常が背景)。血圧が低い・脈が速い・SI≧1 は、ショックの”診断基準そのもの”ではありません。あくまで進行した結果として表れるサインです。

📊 ショックの重症度と血圧

ショックのClass 1(初期)では、血圧は正常です。Class 4(重症)でようやく血圧が下がる。それまでの間に、脈拍・呼吸数・末梢の所見が先に動きます。血圧が下がっている時点で、ショックはすでにかなり進行していると考えてください。


1:55:19身体診察で見抜く(3つの窓・5P)

じゃあ何で見抜くか──。身体診察です。見て聞いて感じて、というやつですね。

覚えておきたいキーワードが2つあります。

📋 ショック認知の2つの軸

  • 3つの窓:① 中枢神経(意識の変容) ② 腎臓(尿量低下) ③ 皮膚(蒼白・CRT延長)
  • ショックの5P:Pallor(蒼白)/Perspiration(冷汗)/Prostration(虚脱)/Pulselessness(脈触れず)/Pulmonary insufficiency(呼吸不全)

🔑 CRTの正しい測り方

爪を5秒間しっかり圧迫してから離す。1〜2秒でパッと離してしまう人が多いですが、それだと正確に測れません。3秒以上で延長と判断します。


1:59:09認知したらOMI+18G×2本

ショックを認知したら、応援を呼ぶのと同時にOMIを確立する。これがアクションの基本です。

📋 OMI(蘇生の3点セット)

  • Oxygen(酸素投与)
  • Monitor(モニター装着)
  • IV Line(ルート確保)

ここで本当に大事なのがルート確保。輸液・薬剤・気管挿管時の鎮静薬・カテコラミン──全ての治療の起点です。

💡 ショックなら18G×2本が原則

ゲージ数は数字が小さいほど太い(24Gより18Gの方が太い)。外径で見るとわずか0.8mmの差ですが、1分間に投与できる量は4倍以上違います。患者さんを救うには、いい武器を持って臨むこと。


2:04:39ショックの4分類とMAPの式

ショックは大きく4つに分類されます。

📊 ショックの4分類

分類 代表疾患
循環血液量減少性 出血性ショック、腹膜炎、熱傷
血液分布異常性 敗血症性ショック、アナフィラキシー、神経原性
心原性 心筋梗塞、心筋症、致死的不整脈
閉塞性 肺塞栓、心タンポナーデ、緊張性気胸

このどれに当てはまるかを判断する前に、“そもそもMAP(平均動脈血圧)はどう決まっているか”を理解しておくと、何を介入すべきかが一気にクリアになります。

💡 平均血圧の式(ホースのイメージ)

MAP = 心拍出量(CO)× 血管抵抗(SVR)

さらに分解すると、CO = 1回心拍出量(SV)× 心拍数(HR)。SVは前負荷/心収縮力/後負荷で決まります。

芝に水を撒くホースを思い浮かべてください。蛇口の勢い(CO)と、ホースの太さ(SVR)で水圧が決まる。どちらかが破綻すると、芝=臓器に水が届かなくなる。MAP 65 mmHg以上が、臓器灌流を保つ閾値です。


2:10:544つのショック、それぞれで何が破綻しているか

MAPの式を踏まえて、4つのショックを「何が破綻しているか」で整理し直します。

📊 ショック × 破綻している因子

分類 破綻している因子 体の代償
循環血液量減少性 前負荷↓(戻ってくる血液量が減る) 心収縮力↑+HR↑+SVR↑(末梢冷感)
血液分布異常性 SVR↓(血管が不適切に拡張=バケツが太くなる→前負荷も結果的に↓) 心収縮力↑+HR↑(神経原性は徐脈化)
心原性 心収縮力↓ または HR異常(高K血症で徐脈など) SVR↑で代償しきれず破綻
閉塞性 前負荷↓(戻れない理由が外側にある) 出血性と似た代償だが、輸液だけでは解決しない

⚠️ 閉塞性ショックは”原因解除”が必須

肺塞栓・心タンポナーデ・緊張性気胸 ── どれも、輸液とカテコラミンで時間を稼ぎながら、原因そのものに介入しないと改善しません。閉塞性ショックを疑ったら、即座に画像評価+ドレナージ/血栓溶解/再灌流を考えましょう。


2:23:47エコー(RUSH)で鑑別と介入を進める

ショックの鑑別はエコー・病歴・身体診察の3手段で進めます。中でも、RUSH(Rapid Ultrasound for Shock)はベッドサイドで一気に分類できる強力な武器。

📋 RUSHの3要素:Pump・Tank・Pipe

  • Pump(心臓):心嚢液/右心負荷/心収縮力
  • Tank(IVCと体腔):IVC径/腹腔・胸腔の液体/肺のスライディング(緊張性気胸)
  • Pipe(大血管):大動脈解離/DVT

📊 簡略版:心エコー+IVC+肺で分類する

所見 疑うショック
心嚢液貯留 心タンポナーデ
右心負荷所見 肺塞栓
心収縮力低下 心原性
IVC虚脱+過収縮 循環血液量減少性 or 血液分布異常性
IVC拡張 心原性 or 閉塞性
肺スライディング消失 緊張性気胸

✅ 病歴・身体診察も合わせる

  • 腰痛+発熱 → 腎盂腎炎による敗血症性(ただし大動脈解離・腹部大動脈瘤も忘れない)
  • 蜂刺し後 → アナフィラキシー
  • 交通外傷 → 出血性ショックが9割(ただし緊張性気胸/心タンポ/神経原性も鑑別)
  • 末梢冷感 vs 温感、頸静脈の怒張、ラ音の有無 ─ 5分でも所見はかなり拾える

2:30:29ショックへの介入:満たす・締める・叩く

ショック介入の引き出しは、実はシンプルにこの3つに集約されます。

💡 ショックへの介入:3つの動詞

  • 満たす:細胞外液・輸血で前負荷を満たす
  • 締める:ノルアドレナリンを第一選択に、血管を締めてSVRを上げる
  • 叩く:ドブタミンで心臓を叩いて、心収縮力とCOを上げる

これに加えて、必要に応じて気管挿管・人工呼吸(酸素供給↑)や、閉塞性ショックの原因解除を進めます。

📊 ショック × 介入の優先順位

分類 優先する介入
循環血液量減少性 満たす(輸液・輸血) + 出血源コントロール
血液分布異常性 満たす + 締める(ノルアドレナリン)
心原性 叩く(ドブタミン)/必要に応じてIABP・Impella・VA-ECMO + 早期コンサル
閉塞性 締めて時間を稼ぎつつ、原因解除(血栓溶解/心嚢ドレナージ/脱気)

2:34:50カテコラミンのα・β受容体を整理する

介入で出てくる薬剤を整理しておきましょう。α・β受容体の作用を押さえると、薬の選択が驚くほどシンプルになります。

📊 受容体 × 作用

受容体 作用
α1 血管収縮 → 血圧↑、SVR↑
β1 心収縮力↑、HR↑、CO↑
β2 血管拡張(→単独使用で血圧↓のリスク)

📋 主なカテコラミンの使い分け

  • ノルアドレナリン:α1主体。第一選択の血管収縮薬
  • ドブタミン:β1主体。心収縮力↑、ただし単独だと血圧↓もあるのでノルアドと併用
  • アドレナリン:α・βとも強力。アナフィラキシー/心停止/難治性ショックで
  • バソプレシン:敗血症性ショックの第二選択(ノルアド増量が頭打ちなら追加)

🔑 末梢からのカテコラミン投与もOK

「ノルアドはCVから」と思いがちですが、ガイドライン上は末梢からも比較的安全。0.1〜0.2γ程度なら1〜2日は許容されます。手背や手首などの細い血管ではなく、肘の近くの太い静脈から投与しましょう。


2:41:56敗血症性ショック:1時間遅れるごとに死亡率が上がる

最後に、頻度が圧倒的に高い敗血症性ショック。これは“内科のエマージェンシー”と呼ばれる理由があります。

⚠️ 抗菌薬投与が1時間遅れるたびに死亡率が上がる

疑った時点で、診断確定を待たずに抗菌薬・血培・初期輸液・ノルアドレナリン・乳酸測定・エコーを一気に走らせる。これが敗血症バンドルの考え方です。

💡 バンドルに入っていないけど、最重要なのが”ソースコントロール”

  • 閉塞性腎盂腎炎の結石ドレナージ
  • 胆管炎の胆道ドレナージ
  • CRBSIならカテーテル抜去/IEなら遊離源の対応
  • 深部膿瘍の切開ドレナージ/壊死組織の除去

✅ 敗血症性ショックの輸液 × ノルアドの考え方

  • 体重×30 mLを目安に細胞外液を投与(成人50kgなら1500 mL)
  • 2/3量(約1000 mL)入っても血圧が低ければ、0.05〜0.1γでノルアドを開始
  • ノルアド早期使用は、漫然とした輸液負荷による肺水腫・臓器うっ血を回避できる
  • 増量で頭打ちならバソプレシン追加。心機能低下の合併(敗血症性心筋症)にはドブタミン

2:49:55救急の基本は、徹底的にABCDアプローチ

3時間、お疲れさまでした。

カルテ・院内急変・ショック

一見バラバラの3テーマですが、根っこにあるのは救急の基本=ABCDアプローチです。気道→呼吸→循環→意識の順に評価し、異常を見つけたら介入する。この型に立ち返れば、どんな重症患者でもブレずに動けます。

✨ 3時間コースのまとめ

  1. カルテはコミュニケーション
    • 正確・明瞭・即時の3原則。読み手はAPから読むのが早い
    • 受診の”真の理由”とプロブレムは、主訴とズレることがある
  2. 院内急変は、認知 → 呼ぶ → 5分間で動く
    • 呼吸数を必ず取る/”なんか変”で呼ぶ文化を作る
    • 兆候別5パターンの初動を頭に入れておく
  3. ショックは”血圧低下”ではなく”酸素需給バランスの破綻”
    • 身体診察で気づき、OMI+18G×2本を確保し、RUSHで分類
    • 満たす・締める・叩くを、ショックの種類に合わせて選ぶ
    • 敗血症は1時間遅れるごとに死亡率↑。ソースコントロールを忘れずに
  4. すべての根っこにあるのは、ABCDアプローチ
    • 困ったらここに戻ると、ブレずに動ける

🎯 3時間コースのゴール(再掲)

救急の現場で、認知 → 呼ぶ → 5分間で動く ── を、自信を持ってできるようになる


どうですか?あなたの感想を聞かせてください。

今回の3時間コース、リアルタイムで参加してくださった方、アーカイブで追いかけてくださった方、本当にありがとうございました。

カルテも、院内急変も、ショックも、本に書いてある原則だけでは”自分の臨床”には落とし込みにくいんですよね。だからこそ、今回のセミナーで触れた個別具体的な悩みや疑問を、ぜひ踊る救急医の申し送らナイトで申し送りとして投げてみてください。

「自分はいつもここで悩んでます」「うちの施設だとこう運用してます」

そういう声があるほど、僕も次の記事や次のセミナーをより深いものにしていけます。

3時間、本当におつかれさまでした。