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発熱時の身体診察と鑑別【Qラボセミナー 2026年2月 その1】

発熱≠感染症〜「とりあえず抗菌薬」から卒業するための7Dsと身体診察

 


0:00「とりあえず抗菌薬」になっていませんか?

2026年2月のQラボ、今月のテーマは抗菌薬です。

感染症や発熱っていうキーワードで、抗菌薬投与を考えることって多いですよね。どの抗菌薬がこの患者さんに最適なのか、いろんなことを考えると思います。

ただ、抗菌薬の話をする上で、まず押さえておきたい大前提があるんです。

そもそも、この患者さんは本当に感染症なのか?

今回は「発熱≠感染症」というテーマで、発熱の原因を一緒に考えていきたいと思います。


0:54よくある場面:発熱→培養→抗菌薬、の落とし穴

こんな場面を考えてみてください。

患者さんが発熱しました。「いや、それならとりあえず抗菌薬」っていう選択肢になっていないでしょうか。

🤔 こんな判断、していませんか?

  • 「CRPが上がってるから、まあ感染でしょう」→ 抗菌薬開始
  • 「原因はよくわからないけど、状態が悪くなっちゃいけないから」→ とりあえず広域抗菌薬
  • 「先生、Aさんが発熱してます。抗菌薬お願いします」→「じゃあ培養取って抗菌薬いきましょうか」

発熱した時点で、もう抗菌薬が行く運命が決まっている。

一見、大きく間違ってなさそうに見えますよね。

でもやっぱり、ここで立ち止まって考えないといけないんです。

その抗菌薬、本当に必要ですか?


1:48ポイント①:ICUの発熱、半分は感染症じゃない

今日のポイントは大きく3つあります。

🎯 今日の3つのポイント

  1. ICUで見かける発熱の約50%は非感染性
  2. 院内発熱の原因を探る「7Ds」という覚え方
  3. 身体診察とデバイスの確認が最優先

まず一つ目、これ意外じゃないですか?

熱が出たらやっぱり感染症を考えがちだと思うんですけど、実はICUの発熱の約50%は非感染性なんです。

⚠️ ICU発熱の原因

分類 割合
感染性 約50%
非感染性 約50%

出典:Circiumaru B, et al. Intensive Care Med. 1999; O’Grady NP, et al. Crit Care Med. 2008

僕もこれを初めて見た時に、「そんなに多いんだ」ってなりましたね。

つまり、発熱=感染症って思い込んでいると、半分は判断を間違えてしまう可能性があるわけです。培養もはっきりしないけど、状態も悪そうだしって行き始めた抗菌薬、半分ぐらいいらない可能性があるんですよね。

まずはこれを大前提として覚えておいてください。


3:34ポイント②:院内発熱の原因を探る「7Ds」

じゃあ、感染性じゃない発熱って何があるのか。

院内発熱の原因を覚えるための語呂として、「7Ds」というのがあります。正直、全部Dから始まるわけじゃないだろって僕も初めて見た時に突っ込んだんですけど(笑)、一つ一つ見ていくとやっぱり見落としが少なくなるんですよね。

📋 院内発熱の原因「7Ds」

語呂 原因 チェックポイント
Drug 薬剤熱 新規薬剤の開始時期と発熱の時期
Device デバイス感染 CV、PICC、尿カテ、ドレーン、ルート
DVT 深部静脈血栓症 下肢の腫脹、D-dimer、エコー
CDトキシン CD腸炎 抗菌薬使用中の下痢
Decubitus 褥瘡 仙骨部、踵、臀部の観察
CPPD 偽痛風 関節の腫脹、発赤、熱感
Debris 胆泥・胆嚢炎 右季肋部痛、Murphy徴候、エコー

順番に見ていきましょう。

3:50💊 Drug(薬剤熱)

まずは薬剤熱です。新しい薬を始めた時期と発熱の時期をチェックすることが大事です。

薬ってね、始めたその日に発熱することはあまりないんですよ。だいたい2〜3日から1週間ぐらい経ってから、遅れて出ることがあるんです。だから発熱した時に、これまで新しい薬を始めたかどうかをチェックするのは結構大事ですね。

4:15🔌 Device(デバイス感染)

これ、めちゃくちゃ大事です。CV(中心静脈カテーテル)、PICC、尿カテーテル、ドレーン、末梢ルート。こういったデバイスは感染の原因になるわけですよ。患者さんを見た時に、まずこういったデバイスが入っていないかをチェックするのがポイントです。

4:40🦵 DVT(深部静脈血栓症)

DVTは下肢の腫脹があればわかりやすいんですけど、なかなかないことも多いんですよね。ポイントとしてはD-dimerとエコーです。D-dimerが高いかどうか、長期臥床している患者さんの下肢をエコーで圧迫して、静脈の虚脱に左右差がないかをざっと見るだけでもだいぶ違います。

5:10🦠 CDトキシン(CD腸炎)

抗菌薬を使っている患者さんで下痢があったら、これを考える必要があります。入院中の下痢って、まずはCDトキシンをしっかり評価しましょうっていうのはセオリーですね。

5:25🛏️ Decubitus(褥瘡)

これもですね、患者さんを実際に見ていないと見落としがちです。仙骨部、踵、臀部。見えないうちに褥瘡ができてしまっているということがあり得るんですよね。長期臥床の患者さんでは特に注意が必要です。

5:45🦴 CPPD(偽痛風)

僕は整形外科医としても働いているので、結構これで紹介されることが多いんですよ。感染の原因をいろいろ探していると、「先生、この患者さん、膝を痛がってます」って言われて、膝が腫れてる、熱を持っている。そこで整形外科にコンサルトされるわけですよね。

結構これ、見落としがちです。感染を疑う時って、やっぱり肺のレントゲンを撮るとか画像検査に意識がいくんですけど、関節の痛みは画像になかなか映らない。だからこそ、患者さんをしっかり診るのが大事なんです。

6:30🫀 Debris(胆泥・胆嚢炎)

最後が胆泥・胆嚢炎です。なかなかわからない一方で、コモンディジーズとして挙げられるところかなと思います。右季肋部の圧痛がないか、エコーで胆石・胆嚢炎の所見がないか、Murphy徴候はどうか。こういった身体診察とエコーで見抜くのがポイントになります。


7:00ポイント③:身体診察とデバイスの確認が最優先

7Dsを見て皆さんも気づいたかなと思うんですけど、やっぱり発熱の原因検索において身体診察がめちゃくちゃ大事なんですよね。

🩺 入院患者が発熱したら、まず全身を見る

  • CVの刺入部:発赤、腫脹、膿がないか
  • 下肢:左右差がないか → エコーで圧迫して静脈の虚脱を確認
  • 関節:膝をはじめ、腫脹・熱感がないか
  • 仙骨部・踵:褥瘡がないか(見えないところまでしっかり)
  • 腹部:右季肋部の圧痛、Murphy徴候
  • D-dimer:高くないか
  • エコー:胆嚢の所見、DVTの評価

血培・痰培・尿培を出して抗菌薬いきましょうっていう前に、まず患者さんを見る。

すごく当たり前なんですけど、やっぱり忘れがちなんですよね。発熱っていうのはあまりにコモンな症候であるために、こういったところが省略されることが多い。だからこそ、「培養を出す前に患者を診る」を忘れないようにしてほしいなと思います。

💡 吹き出し|あつし

「意識が悪い患者さんだと自分でお腹が痛いって訴えられないこともあるよね。だからこそ、エコーとか客観的な指標で評価するのが大事なんだ。培養を出す前に、まず患者さんを診よう。」


7:50薬剤熱のピットフォール〜抗菌薬が発熱の原因になる〜

身体診察以外のところで言うと、この薬剤熱っていうのが結構厄介なんですよね。いくつかピットフォールを紹介します。

🔥 ピットフォール①:抗菌薬自体が薬剤熱の原因になる

何かしらの感染を疑って抗菌薬を始めたのに、なかなか解熱しない。その原因が抗菌薬自体による薬剤熱だったっていうこともあり得るわけです。

🔥 ピットフォール②:典型的な所見が揃わないことが多い

比較的徐脈が手がかりだっていうふうによく言われますけど、感度・特異度がめちゃくちゃ高いわけじゃないんですよね。好酸球増多や皮疹も必ずあるわけじゃない。教科書に書いてある典型例だけでは、なかなか見抜けないっていうのがポイントです。

💊 薬剤熱の原因になりやすい薬剤

  • 抗菌薬(β-ラクタム系、バンコマイシンなど)
  • 抗てんかん薬(フェニトイン、カルバマゼピン)
  • アセトアミノフェン(カロナール) ← 解熱剤が発熱の原因になることもある!

解熱剤が発熱の原因になるって、もう何なんだっていう感じですけどね(笑)

ネットで調べたり、様々な患者さんの内服歴を見て、それぞれが薬剤熱の原因にならないかを確認する。これも地味ですけど大事なアクションです。

🚨 薬剤熱を疑うヒント

  • 比較的徐脈(ただし感度・特異度は高くない)
  • 好酸球増多(必ず伴うわけではない)
  • 皮疹(必ず伴うわけではない)
  • 新規薬剤の開始から2〜3日〜1週間後の発熱
  • 抗菌薬で解熱しない時は、抗菌薬自体を疑う

出典:Patel RA, Gallagher JC. Drug fever. Pharmacotherapy. 2010;30(1):57-69.


9:34実際のアクションプラン

じゃあ結局、臨床でどう動くか。

抗菌薬で熱が下がらない時に、「抗菌薬が原因かもしれない」って思うのはもちろんなんですけど、なかなかそれでも止めにくいなっていう時ありますよね。

🔧 薬剤熱が疑われた時のアクション

  1. 内服薬・注射薬をすべてリストアップする
  2. それぞれが薬剤熱の原因にならないかを確認する
  3. 鑑別の中で「これは一回止めてみてもいいかな」というものを止めてみる
  4. 止めた後の経過を観察する

10:13まとめ:「とりあえず抗菌薬」から卒業しよう

これら3つのポイントを意識して患者さんを見ると、感染以外の発熱の原因を見つけることができます。

✨ 今日のポイント

  1. ICUの発熱の約50%は非感染性
    • 発熱=感染症だと思い込むと、半分は判断を間違える
  2. 院内発熱の原因は「7Ds」で覚える
    • Drug / Device / DVT / CDトキシン / Decubitus / CPPD / Debris
  3. 身体診察とデバイスの確認が最優先
    • 「培養を出す前に患者を診る」
    • CVの刺入部、下肢の左右差、関節、褥瘡、腹部所見
  4. 薬剤熱を忘れない
    • 抗菌薬自体が発熱の原因になる
    • 典型的な所見が揃わないことが多い

🎯 今日のゴール

「発熱したらとりあえず抗菌薬」から卒業する


参考文献

  • O’Grady NP, et al. Guidelines for evaluation of new fever in critically ill adult patients: 2008 update from the ACCCM and the IDSA. Crit Care Med. 2008;36(4):1330-1349.
  • SCCM/IDSA. Guidelines for Evaluating New Fever in Adult Patients in the ICU. 2024 Update.
  • Circiumaru B, et al. A prospective study of fever in the intensive care unit. Intensive Care Med. 1999;25(7):668-673.
  • Barie PS, et al. Influence of antibiotic therapy on mortality of critical surgical illness caused or complicated by infection. Surg Infect (Larchmt). 2005;6(1):41-54.
  • Patel RA, Gallagher JC. Drug fever. Pharmacotherapy. 2010;30(1):57-69.

どうですか?あなたの感想を聞かせてください。

「発熱したら抗菌薬」って、僕も研修医の時はなんとなくやっていた気がします。でも7Dsを知ってからは、発熱した患者さんのベッドサイドに行った時に、まず目が行く場所が変わったんですよね。

CVの刺入部を見る。下肢を触る。関節を確認する。仙骨部をめくって見る。

この「まず診る」っていう習慣が身につくだけで、発熱患者さんへのアプローチは大きく変わると思います。

来月の抗菌薬シリーズでは、この先の「じゃあ感染症だったとして、どう抗菌薬を選ぶか」っていうところに踏み込んでいきます。

一緒に学び、一緒に悩み、そして一緒に成長していきましょう。


Qラボ 2026年2月 10分セミナー①
講師:三谷雄己(救急医)