「栄養入れたら、むしろ具合が悪くなった…?」
長期間栄養が取れていなかった患者さんに栄養を再開したら、心不全や不整脈を起こしてしまった。
そんな経験、聞いたことはありませんか?
これが「リフィーディング症候群」です。
栄養療法は大切ですが、「いつ、どのくらい」始めるかを間違えると、かえって害になることがあるんです(1,2)。
リフィーディング症候群とは
リフィーディング症候群(Refeeding Syndrome)は、長期間の低栄養状態にあった患者さんに栄養を再開した際に起こる、重篤な代謝異常です(1,2)。
⚠️ リフィーディング症候群の症状
- 低リン血症:最も重要な特徴
- 低カリウム血症:不整脈のリスク
- 低マグネシウム血症:筋力低下、痙攣
- 心不全・肺水腫:Na・水分貯留による
- 致死的不整脈:突然死のリスク
なぜこんなことが起きるのでしょうか?
そのメカニズムを理解することが、予防の第一歩です(1)。
なぜリフィーディング症候群が起きるのか
長期間の飢餓状態では、体は脂肪をエネルギー源として使うようになります。
この時、インスリン分泌は低下し、細胞内の電解質(リン、カリウム、マグネシウム)は枯渇しています(1,3)。
📋 リフィーディング症候群のメカニズム
- 栄養(糖質)を投与→ インスリン分泌が急激に増加
- インスリンの作用で→ 電解質が細胞内に移動
- 血中の電解質が急激に低下→ 低リン血症、低K血症、低Mg血症
- ATP産生障害→ 心筋・呼吸筋の機能低下
- Na・水分貯留→ 心不全、肺水腫
💡 臨床のコツ
「栄養を入れる」→「インスリンが出る」→「電解質が細胞に入る」→「血中電解質が下がる」という流れを覚えておきましょう(1)。
リスク因子を見極める
どんな患者さんがリフィーディング症候群のリスクが高いのでしょうか(2,3)。
💡 高リスク群(1つでも該当)
- BMI < 16 kg/m²
- 15%以上の意図しない体重減少(3-6ヶ月以内)
- 10日以上の絶食
- 栄養開始前の低リン血症、低カリウム血症、低マグネシウム血症
📊 注意すべき患者背景
- 神経性食思不振症(拒食症)
- 慢性アルコール依存症
- 悪性腫瘍による低栄養
- 高齢者の長期絶食
- 慢性下痢・嘔吐の患者さん
救急外来でこれらの背景を持つ患者さんが来たら、「リフィーディング症候群のリスクがあるかも」と考える習慣をつけましょう(3)。
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予防と管理のポイント
リフィーディング症候群は「予防」が最も重要です(2,4)。
✅ 予防のための5つのステップ
- リスク評価:入院時に高リスク群を同定する
- 電解質測定:栄養開始前にP, K, Mgを測定
- 電解質補充:低値なら補充してから栄養開始
- ゆっくり開始:高リスク群は10 kcal/kg/日から開始
- モニタリング:毎日電解質を測定(最初の1週間)
💡 臨床のコツ
「ゆっくり始めて、徐々に増やす」がリフィーディング症候群予防の原則です(4)。
栄養投与量の目安
高リスク群では、栄養投与量を慎重に増やしていきます(2,4)。
📋 栄養投与量の増やし方(高リスク群)
- 初日:10 kcal/kg/日(最大20 kcal/kg/日)
- 2-4日目:徐々に増量(電解質を確認しながら)
- 5-7日目:目標カロリーに到達
- ビタミンB1:必ず投与(糖質代謝に必須)
特にビタミンB1(チアミン)の投与は重要です。
糖質代謝にB1が必要なため、B1欠乏状態で糖質を投与するとWernicke脳症のリスクがあります(4)。
電解質補充の実際
リン、カリウム、マグネシウムの補充方法を確認しましょう(2,4)。
📊 電解質補充の目安
| 電解質 | 補充の目安 |
|---|---|
| リン(P) | 低リン血症時:リン酸製剤を静注 |
| カリウム(K) | K 4.0 mEq/L以上を目標に補充 |
| マグネシウム(Mg) | 低Mg血症時:硫酸マグネシウムを静注 |
まとめ
✅ リフィーディング症候群のポイント
- 長期低栄養患者への急速な栄養投与で発症
- 低リン血症が特徴的:致死的不整脈のリスク
- リスク評価が重要:BMI、体重減少、絶食期間
- 予防が最重要:ゆっくり始めて、電解質をモニタリング
- ビタミンB1を忘れずに:糖質投与前に開始
引用文献
- Mehanna HM, Moledina J, Travis J. Refeeding syndrome: what it is, and how to prevent and treat it. BMJ. 2008;336(7659):1495-1498.
- National Institute for Health and Care Excellence (NICE). Nutrition support for adults: oral nutrition support, enteral tube feeding and parenteral nutrition. Clinical guideline [CG32]. 2006 (updated 2017).
- Crook MA, Hally V, Panteli JV. The importance of the refeeding syndrome. Nutrition. 2001;17(7-8):632-637.
- Friedli N, Stanga Z, Sobotka L, et al. Revisiting the refeeding syndrome: Results of a systematic review. Nutrition. 2017;35:151-160.
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