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酸素は何Lから?【状況別・酸素投与の考え方】

「先生、酸素何リットルにしますか?」

研修医の頃、看護師さんからこう聞かれて、「えっと…。」と戸惑ってしまった経験、ありませんか?

私もそうでした。なんとなく3リットル、なんとなく5リットル。根拠なく酸素投与をしていた時期がありました。

この記事では、酸素投与の基本と、「何L/minから始めるか」の考え方をお伝えします(1)。


まず確認:酸素投与の目標は?

酸素投与の目標は、適切な酸素化を維持することです(1)。

📋 酸素化の目標値

患者群 SpO₂目標
一般的な急性疾患 92〜96%
CO₂貯留リスク(COPDなど) 88〜92%
心停止後 92〜98%(過度の高酸素を避ける)

Chu DKらのメタアナリシス(Lancet 2018)では、過度の高酸素血症が死亡率上昇と関連することが示されています(1)。


酸素投与デバイスと流量の関係

酸素投与デバイスによって、投与できる酸素濃度(FiO₂)が異なります(2)。

💡 酸素投与デバイスと FiO₂

デバイス 流量 FiO₂(目安)
鼻カニューラ 1〜6 L/min 24〜44%
簡易酸素マスク 5〜10 L/min 40〜60%
リザーバーマスク 10〜15 L/min 60〜90%
ベンチュリマスク 設定による 24〜50%(正確)
高流量鼻カニューラ(HFNC) 30〜60 L/min 21〜100%

鼻カニューラでは、1 L/min増やすごとにFiO₂が約4%上がると覚えておくと便利です(2)。


状況別:何L/minから始める?

✅ 状況別の酸素投与開始量

軽度の低酸素(SpO₂ 90〜94%)

  • 鼻カニューラ 1〜2 L/minから開始
  • SpO₂を見ながら調整

中等度の低酸素(SpO₂ 85〜89%)

  • 鼻カニューラ 3〜4 L/minから開始
  • または簡易酸素マスク 5〜6 L/min

重度の低酸素(SpO₂ < 85%)

  • リザーバーマスク 10〜15 L/minから開始
  • 高濃度酸素で速やかにSpO₂を上げる

緊急時(心停止、ショック、重症外傷など)

  • リザーバーマスク10〜15L/minまたはBVM + リザーバー
  • 初期安定化後に適切な濃度に調整

💡 臨床のコツ

重症の場合、「迷ったら高めから始めて、下げていく」のが基本です。

低酸素による臓器障害は、短時間でも起こりえます(2)。


COPD患者の酸素投与

CO₂貯留リスクのある患者では、注意が必要です(3)。

⚠️ COPD患者の酸素投与

  • 目標SpO₂:88〜92%
  • 開始:鼻カニューラ 1〜2 L/min または ベンチュリマスク 24〜28%
  • モニタリング:血液ガスでPaCO₂も確認

Austin MAらの研究(BMJ 2010)では、COPD急性増悪患者において、適正な酸素投与群の方が高濃度酸素投与群より死亡率が低かったことが報告されています(3)。


簡易酸素マスクの注意点

📊 簡易酸素マスクの注意

  • 最低流量は5 L/min
  • 5 L/min未満では、呼気CO₂が再吸入されるリスク
  • 5 L/min以下で使いたい場合は、鼻カニューラに変更

高流量鼻カニューラ(HFNC)の活用

高流量鼻カニューラ(HFNC)は、急性呼吸不全に有用なデバイスです(4)。

📋 HFNCのメリット

  • 高流量(30〜60 L/min):患者の吸気需要を満たす
  • 正確なFiO₂:21〜100%で設定可能
  • 加温加湿:気道への負担が少ない
  • 軽度のPEEP効果:約3〜5 cmH₂O

Frat JPらのFLORALI試験(N Engl J Med 2015)では、急性呼吸不全患者において、HFNCが挿管率を下げる可能性が示されています(4)。


まとめ

✅ 酸素投与のポイント

  • 目標SpO₂を意識:一般的には92〜96%、COPD患者は88〜92%
  • デバイスと流量の関係を理解:鼻カニューラは1 L/minごとにFiO₂約4%上昇
  • 迷ったら高めから始めて調整:低酸素のリスクを優先的に回避
  • 簡易酸素マスクは5 L/min以上:CO₂再吸入を防ぐ
  • 過度の高酸素も避ける:SpO₂ 100%キープは不要

引用文献

  1. Chu DK, Kim LH, Young PJ, et al. Mortality and Morbidity in Acutely Ill Adults Treated With Liberal Versus Conservative Oxygen Therapy (IOTA): A Systematic Review and Meta-analysis. Lancet. 2018;391(10131):1693-1705.
  2. O’Driscoll BR, Howard LS, Earis J, Mak V. BTS Guideline for Oxygen Use in Adults in Healthcare and Emergency Settings. Thorax. 2017;72(Suppl 1):ii1-ii90.
  3. Austin MA, Wills KE, Blizzard L, et al. Effect of High Flow Oxygen on Mortality in Chronic Obstructive Pulmonary Disease Patients in Prehospital Setting: Randomised Controlled Trial. BMJ. 2010;341:c5462.
  4. Frat JP, Thille AW, Mercat A, et al. High-Flow Oxygen Through Nasal Cannula in Acute Hypoxemic Respiratory Failure. N Engl J Med. 2015;372(23):2185-2196.

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