血液ガス分析の5ステップ〜型を身につけて、どんな症例も解釈できるようになる〜
🎥 動画で学ぶ
- 5ステップは型を覚えれば、自動的に計算できる [00:00]
- 復習:血液ガス分析で何を解き明かすのか? [00:54]
- 5ステップの全体像
- ステップ1:pHを確認する〜アシデミアかアルカレミアか?〜 [01:48]
- ステップ2:PaCO₂とHCO₃⁻を確認する〜呼吸性か代謝性か?〜 [02:45]
- ステップ3:アニオンギャップを計算する〜やばい病態を見逃さない〜 [03:43]
- ステップ4:補正HCO₃⁻を計算する〜隠れた病態を見つける〜 [10:54]
- ステップ5:代償反応を確認する〜体の対応は適切か?〜 [14:12]
- 5ステップを終えたら、次は解釈 [15:58]
- 覚えるべき数字は、たった3つ
- 次回予告:病態ごとの解釈と介入
- まとめ
- どうですか?あなたの感想を聞かせてください。
5ステップは型を覚えれば、自動的に計算できる [00:00]
前回、血液ガス分析を「守破離」のステップで学ぶというお話をしました。
今回は、いよいよ「守」の本番です。
血液ガス分析の解釈って、難しそうに見えますよね。pHとかPaCO₂とか、HCO₃⁻とか、数字がたくさん出てきて、「どこから手をつければいいの?」って思うかもしれません。
でも、実は。
この5つのステップを流れで覚えてしまえば、あんまり意識しなくても前に前に進めることができるんです。
逆に言うとね、このステップ1から5っていうのは自動的に計算できるということになるので、まずはこの自動的に計算できるポイントっていうところを一つ一つ押さえていければというふうに思います。
難しいなって感じるところも多いかもしれないんですけど、何度でも復習してもらって、何回も見ると、この血液ガス分析っていうものを流れで自分で解釈できるようになるかなと思います。
ここが押さえられたら、血液ガス分析が楽しくなってきますんで、頑張っていきましょう。
復習:血液ガス分析で何を解き明かすのか? [00:54]
前回お話ししたように、血液ガス分析で何をしているかっていうと、体の中で働いている「力」がいくつあるのかを解き明かすことなんでしたよね。
🔄 体の中で働く4つの力
- 呼吸性アシドーシス(CO₂が溜まる → 酸性に傾ける力)
- 呼吸性アルカローシス(CO₂が減る → 塩基性に傾ける力)
- 代謝性アシドーシス(HCO₃⁻が減る → 酸性に傾ける力)
- 代謝性アルカローシス(HCO₃⁻が増える → 塩基性に傾ける力)
これらの力が、最大3つまで合併しうるということをぜひ覚えておいてください。
そして、これらを5つのステップで順番に解き明かしていくのが、今日学ぶ型なんです。
5ステップの全体像
まずは、全体像を見ておきましょう。
📋 血液ガス分析の5ステップ
ステップ1:pHを確認する → アシデミアかアルカレミアか?
ステップ2:PaCO₂とHCO₃⁻を確認する → 呼吸性か代謝性か?
ステップ3:アニオンギャップを計算する → アニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスがあるか?
ステップ4:補正HCO₃⁻を計算する → 代謝性アルカローシスやアニオンギャップ非開大性アシドーシスが隠れていないか?
ステップ5:代償反応を確認する → 代償反応は適切か?
この5ステップを終えた後に、じゃあどう解釈するかっていうところが、後で知識が問われたりとか、自分なりの知恵が要求されるところになるわけです。
でも、ステップ1から5までは、型通りに計算するだけなんです。
さあ、一つ一つ見ていきましょう。
ステップ1:pHを確認する〜アシデミアかアルカレミアか?〜 [01:48]
まずは、pHを確認して、アシデミアなのかアルカレミアなのかを評価しましょう。
これは分かりやすいですよね。
📊 pHの基準値
| pH | 判定 |
|---|---|
| pH < 7.35 | アシデミア(酸性に傾いている) |
| pH 7.35〜7.45 | 正常範囲 |
| pH > 7.45 | アルカレミア(塩基性に傾いている) |
わかりやすくまとめると、pH 7.4より低いか高いかっていうところですね。
💡 吹き出し|あつし
「まずはpHを見て、患者さんが酸性に傾いているか、塩基性に傾いているかを判断するんだ。これが出発点だよ。」
ステップ2:PaCO₂とHCO₃⁻を確認する〜呼吸性か代謝性か?〜 [02:45]
次に、アシデミアやアルカレミアが何が原因になっているのかを判断するのがこのステップです。
具体的には、PaCO₂とHCO₃⁻の数字を見ていきます。
🔍 ステップ2の基準値
🫁 PaCO₂(動脈血二酸化炭素分圧)
基準値:40 mmHg
- PaCO₂ > 40 → 呼吸性アシドーシス(CO₂が溜まっている)
- PaCO₂ < 40 → 呼吸性アルカローシス(CO₂が減っている)
🩺 HCO₃⁻(重炭酸イオン)
基準値:24 mEq/L
- HCO₃⁻ > 24 → 代謝性アルカローシス(塩基性に傾く)
- HCO₃⁻ < 24 → 代謝性アシドーシス(酸性に傾く)
この「40」と「24」っていうのがキーナンバーになるわけです。
HCO₃⁻が24より高いか低いか、PaCO₂が40より高いか低いか。この2つのキーナンバーを覚えることで判断できるということです。
これもわかりやすいですね。
💡 吹き出し|あつし
「40と24、この2つの数字を覚えておけば、呼吸性か代謝性かはすぐ判断できるよ。ここまでは簡単でしょ?」
ステップ3:アニオンギャップを計算する〜やばい病態を見逃さない〜 [03:43]
ここから少しずつわかりにくくなってくるんですけど、アニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスがある、ないっていうところを判断するステップです。
❓ なぜアニオンギャップがいきなり登場するのか?
実はね、アニオンギャップが開大する代謝性アシドーシスっていうのは、体にとってかなりダメージが深刻だったり、すぐさま介入が必要な病態であることが多いんです。
だからこそ、ステップ3で真っ先に評価するんですね。
🧪 アニオンギャップって、何? [04:39]
アニオンギャップ、また分からない言葉が出てきましたよね。
これをもう少し分かりやすく説明していこうと思うんですけど、体の中の陽イオンと陰イオンの量は等しいっていうのが大前提なんです。
⚖️ 体の中のイオンバランス
陽イオン(カチオン)の総量 = 陰イオン(アニオン)の総量
主な陽イオン
- Na⁺(ナトリウム)← 測定できる、最も多い
- K⁺(カリウム)、Ca²⁺、Mg²⁺など ← 測定されない(Unmeasured Cation)
主な陰イオン
- Cl⁻(クロール)、HCO₃⁻(重炭酸イオン)← 測定できる
- 乳酸、リン酸、硫酸、ケトン体など ← 測定されない(Unmeasured Anion)
この中で、アニオンギャップっていうのは、測定されない陰イオンと測定されない陽イオンの差なんです。
📐 アニオンギャップの定義
アニオンギャップ(AG)
= Unmeasured Anion(測定されない陰イオン)
− Unmeasured Cation(測定されない陽イオン)
「測定されないものなのに、どうやって計算するの?」
そう思いますよね。実は、測定できるもので計算できるんです。
🧮 アニオンギャップの計算式 [05:36]
陽イオンと陰イオンの総量は等しいので、測定できる主要なイオンの差を計算すれば、測定されないイオンの差が分かるんです。
💡 アニオンギャップの計算式
AG = Na⁺ − (Cl⁻ + HCO₃⁻)
基準値:約12 mEq/L
これすごくないですか?
実際に乳酸の数字とかリン酸の数字が分からなかったとしても、ナトリウムとHCO₃⁻とクロールの値を引き算するだけで、体に溜まっている「やばい酸」がどれくらいあるかが分かるわけですよ。
⚠️ アニオンギャップが高いということは? [06:34]
アニオンギャップが高いっていうことは、Unmeasured Anion(測定されない陰イオン)が多いってことなんです。
この「測定されない陰イオン」っていうのが、実は乳酸とかリン酸とかケトン体みたいな、体の中に溜まるとヤバい酸(揮発性酸)なんですよね。
🚨 アニオンギャップが開大する原因(すぐ介入が必要!)
- 乳酸アシドーシス(ショック、組織低灌流)
- ケトアシドーシス(糖尿病性ケトアシドーシス、飢餓)
- 腎不全(尿毒症性アシドーシス)
- 中毒(メタノール、エチレングリコール、サリチル酸など)
だから、アニオンギャップが12より高い時っていうのは、こういうやばい病態が隠れてるんだっていうところを意識するっていうのがすごく大事になります。
🔧 補正アニオンギャップ [07:30]
そして、ポイントとして、アニオンギャップはアルブミンの値に影響されるんです。
なので、低アルブミン血症の時っていうのは、補正アニオンギャップを計算してあげないといけないわけです。
📊 補正アニオンギャップの計算
補正AG = 測定AG + 2.5 × (4.0 − アルブミン値)
補正AG > 12 mEq/L → アニオンギャップ開大性アシドーシスあり
💡 吹き出し|あつし
「アニオンギャップが12より高いかどうか、これを見逃さないことが患者さんの命を救うことにつながるんだ。ショックや中毒、ケトアシドーシスは一刻を争うからね。」
ステップ4:補正HCO₃⁻を計算する〜隠れた病態を見つける〜 [10:54]
ここまで計算する中で、アニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスの有無を評価しました。
このステップ4でやることっていうのは、補正HCO₃⁻っていうものを計算するんですね。
🤔 補正HCO₃⁻って、何? [11:43]
これは、「アニオンギャップが開大していなかったとしたら、HCO₃⁻はどれぐらいの数字になるんですか?」っていうのを推測するっていうところになるわけです。
この計算をすることによって、代謝性アルカローシス、もしくはアニオンギャップ非開大性の代謝性アシドーシスが合併しているかどうかを評価できるわけです。
📐 補正HCO₃⁻の計算式
補正HCO₃⁻ = 測定HCO₃⁻ + ΔAG
ΔAG = 測定AG − 12
基準値:24 mEq/L
🔍 補正HCO₃⁻で何が分かるのか?
例えば、アニオンギャップが開大していない時と、開大している時を比べてみましょう。
アニオンギャップが開大している時っていうのは、その分だけHCO₃⁻が消費されているわけです。だから、開大している分を足し算してあげると、本来のHCO₃⁻がどれぐらいだったかが分かるんですね。
📊 補正HCO₃⁻の解釈 [12:43]
補正HCO₃⁻ > 24
- → HCO₃⁻が相対的に多い
- → 代謝性アルカローシスが隠れている
補正HCO₃⁻ < 24
- → HCO₃⁻が相対的に少ない
- → アニオンギャップ非開大性の代謝性アシドーシスが隠れている
これによって、アルカローシスやアシドーシスが合併しているのかっていうところが分かると。
不思議な数字ですけど、これらをあんまり考えなくても計算することで、様々な病態が把握できちゃうっていうところが、このステップ4の優れものポイントなんですね。
💡 吹き出し|あつし
「代謝性アシドーシスとアルカローシスが合併すると、pHが中性に近づくから、見逃しやすいんだ。でも補正HCO₃⁻を計算すれば、隠れた病態が見えてくるよ。」
ステップ5:代償反応を確認する〜体の対応は適切か?〜 [14:12]
最後のステップです。
前回お話ししたように、代謝性とか呼吸性にそれぞれ酸や塩基に傾くっていうところを代償するっていうのが人の体のポイントなわけですよね。
これらが正常範囲にあるかどうかっていうところを見積もろうというのがこのステップになります。
📊 代償反応の予測式
それぞれの病態に応じて、予測されるPaCO₂やHCO₃⁻の値が計算できるんです。
🧮 代償反応の予測式(主要なもの)
代謝性アシドーシスの場合
予測PaCO₂ = 1.5 × HCO₃⁻ + 8 (±2)
代謝性アルカローシスの場合
予測PaCO₂ = 0.7 × HCO₃⁻ + 20 (±5)
呼吸性アシドーシス(急性)の場合
HCO₃⁻は1〜2 mEq/L上昇(PaCO₂が10上昇するごと)
呼吸性アルカローシス(急性)の場合
HCO₃⁻は2 mEq/L低下(PaCO₂が10低下するごと)
🔍 実測値と予測値を比較する [15:05]
予測の式を使って、実測のPaCO₂やHCO₃⁻と予測値の差がどうかっていうところを見積もってあげてください。
✅ 代償反応の評価
- 実測値が予測値と一致 → 代償反応は適切
- 実測値が予測値より高い/低い → 別の病態が合併している可能性
こういった代償反応が正常かどうかっていうところを意識して計算してあげるというのが最後のポイントになります。
💡 吹き出し|あつし
「代償反応がうまくいってないってことは、体がもう限界に来てるサインかもしれない。または、別の病態が隠れている可能性もあるんだ。」
5ステップを終えたら、次は解釈 [15:58]
ここまで突っ走ってきましたけど、この5つのステップを理解することで、それぞれ体の中にどのベクトルの力が働いているのかが分かるわけですよね。
じゃあその次は原因を鑑別していく必要があるんですね。
ここからがいざ解釈のポイントです。
🎯 5ステップで分かること
- アシデミアかアルカレミアか(ステップ1)
- 呼吸性か代謝性か(ステップ2)
- アニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスがあるか(ステップ3)
- 代謝性アルカローシスやアニオンギャップ非開大性アシドーシスが隠れていないか(ステップ4)
- 代償反応は適切か、別の病態が合併していないか(ステップ5)
ここまではね、それぞれの数字をどうしても覚えないといけないところもあるんですね。
なので、あんまり考えすぎて、「これが24である理由」とか「12である理由」っていうところは正直ね、なかなか考えても難しいところもあると思います。
ただ、これらの数字を一つ一つ覚えて、一歩一歩進めることで、最終的にこの解釈のところに行けると。
ここからの解釈が、頭の使いどころになってくるので、ここまではなんとか型で覚えて、まずは基本を学んでいってもらえたらなと思いますね。
覚えるべき数字は、たった3つ
5ステップ、難しそうに見えますよね。
でも、実は覚えるべき数字は、たった3つなんです。
🔢 覚えるべき3つの数字
40、24、12
- 40:PaCO₂の基準値
- 24:HCO₃⁻の基準値、補正HCO₃⁻の基準値
- 12:アニオンギャップの基準値
この3つさえ覚えておけば、5ステップは自動的に進められるんです。
あとは、何度も繰り返し練習して、体で覚えること。
最初は「え、どのステップだっけ?」って迷うかもしれません。
でも、何度でも復習してもらって、何回も見ると、この血液ガス分析っていうものを流れで自分で解釈できるようになるかなと思います。
次回予告:病態ごとの解釈と介入
次回は、いよいよ「破」の段階です。
5ステップで力を見つけたら、その力の原因となる病態を鑑別し、介入していく。
具体的には:
- アニオンギャップ開大性の代謝性アシドーシスの原因鑑別(乳酸アシドーシス、ケトアシドーシス、腎不全、中毒)
- アニオンギャップ非開大性の代謝性アシドーシスの原因鑑別(下痢、RTA、腎不全初期)
- 呼吸性アシドーシスの原因鑑別と介入
- 呼吸性アルカローシスの原因鑑別と介入
- 代謝性アルカローシスの原因鑑別と介入
これらを具体的な症例を交えて学んでいきます。
お楽しみに!
まとめ
✨ この記事のポイント
- 5ステップは型
- 型を覚えれば、自動的に計算できる
- 解釈は5ステップの後で考える
- 覚えるべき数字は3つだけ
- 40(PaCO₂)、24(HCO₃⁻)、12(AG)
- ステップ1:pH → アシデミアかアルカレミアか
- ステップ2:PaCO₂とHCO₃⁻ → 呼吸性か代謝性か
- ステップ3:アニオンギャップ → やばい病態を見逃さない
- ステップ4:補正HCO₃⁻ → 隠れた病態を見つける
- ステップ5:代償反応 → 体の対応は適切か
- 何度でも復習する
- 体で覚えるまで繰り返す
わかりにくいと思うんで、何度でも繰り返し見てみてください。
また質問とかもお待ちしてます。
どうですか?あなたの感想を聞かせてください。
5ステップ、難しそうに見えたかもしれません。
でも、一歩一歩進めば、必ずマスターできます。
武器となる知識を1つずつ増やしながら進めば、気づけば次の難敵にも自然と立ち向かえる力が身についています。
一緒に学び、一緒に悩み、そして一緒に成長していきましょう。
その瞬間、私たちは同じ道をたどる旅の同行者になれるはずです。





