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Bの異常を見抜こう!【Qラボセミナー 2025年12月 その2】

院内急変を見抜こう:B=呼吸の異常をどう評価するか

「酸素が下がっています」「呼吸していません」

院内急変のコール、こういう内容かなり多いですよね。

今回は12月のテーマ「院内急変を見抜こう」の中でも、B=呼吸の異常をどう評価するかに絞ってお話しします。

酸素投与だけでは改善しない呼吸不全では、「なぜ呼吸不全になっているのか」というメカニズムから介入を考えると、より良い対応ができることが多いです。

症例ベースで、呼吸不全のメカニズムを整理しながら、明日から使える評価のポイントを一緒に学んでいきましょう。


📹 セミナー動画

 


症例から考える呼吸の異常

0:00~0:36

院内急変の肝の一つが呼吸の評価ですよね。今日は、この呼吸の異常をどう評価するかを症例ベースで考えてみましょう。

院内急変でコールがかかったのは、80歳の男性。神経内科病棟で、脳梗塞の既往があり、リハビリも順調に進んでいた患者さんです。

ところが今朝、嘔吐後に酸素化不良

0:36~1:10

ところが今朝、ご飯を食べたあとに嘔吐。その後、発熱と酸素化不良が出て、院内急変の連絡が来ました。あなたは、この患者さんの担当看護師、あるいは担当医だと思ってください。

同僚からは「救急科には連絡しましたが、今は三次救急のホットライン対応中で、到着が少し遅れそうです」と。バイタルを見てみると、酸素10L投与してもサチュレーション84%。かなりまずい状況ですよね。

「助けが来るまでに、自分たちで何ができるか?」――これを考えるのが今日のテーマです。

  • 酸素10L投与でもSpO₂ 84%という酸素化不良
  • 嘔吐後の発熱と呼吸不全から誤嚥性肺炎を疑う
  • 救急科到着まで、自分たちで何ができるかを考える

呼吸不全のメカニズムを理解する

1:10~1:44

酸素投与だけでは改善しない呼吸不全では、「なぜ呼吸不全になっているのか」というメカニズムから介入を考えると、より良い対応ができることが多いです。

具体的には、

  1. 脳から呼吸の指令が出て
  2. 呼吸筋が動き
  3. 肺が膨らんだり閉じたりして
  4. 肺胞でガス交換が行われる

この一連のサイクルのどこでトラブルが起きているかで、呼吸不全の原因を整理していきます。

「見て・聞いて・感じて」評価する

1:44~2:16

プライマリーサーベイでは「見て・聞いて・感じて評価しましょう」とよく言われますが、正直、全部きちんとやろうとすると怖いし大変に感じますよね。

大まかに分けると、

「見て」:

  • 胸の動き・呼吸パターン
  • 呼吸補助筋を使っていないか
  • 唇のチアノーゼ
  • 外傷の有無(打撲痕など)
  • 頸静脈の怒張

「聞いて」「感じて」の評価項目

2:16~2:49

「聞いて」:

  • 話したときの息切れの様子
  • 聴診での呼吸音

「感じて」:

  • 胸の打診
  • 胸骨の動揺
  • 皮下気腫の有無(外傷のときに重要)

こうして解剖学的に評価していきますが、結局それぞれが何を見ているかというと、

  1. 酸素化(O₂の取り込み)
  2. 換気(CO₂の出し入れ)
  3. 呼吸仕事量(どれだけ頑張って呼吸しているか)

この3つを、別々の角度から見ていると整理できます。

  • 呼吸の評価は「見て・聞いて・感じて」
  • 評価の3つの軸:酸素化・換気・呼吸仕事量
  • 解剖学的な評価項目をこの3つに整理する

呼吸仕事量の評価が重要

2:49~3:24

酸素化は、サチュレーションや血液ガスのPaO₂。換気は、血液ガスのPaCO₂やETCO₂で把握できます。

一方で呼吸仕事量は、数値では出てこないので、身体所見から「しんどそうかどうか」を読み取る必要があります。呼吸仕事量は「30です」とか数値で出ませんよね。だからこそ、呼吸補助筋の使用を観察することが重要になります。

横隔膜の動きと呼吸補助筋

3:24~4:59

呼吸は、横隔膜の動きも大きく関わります。腹筋や腹部にもぐっと力が入るような、「大きく全身であえいでいる呼吸」をしていないか。こうした所見から、「この人はどれだけエネルギーを使って呼吸しているか」を=呼吸仕事量として見積もります。

呼吸補助筋を総動員しないと維持できない呼吸は、いずれ呼吸筋の疲労 → 呼吸破綻に向かいます。そうなると酸素が下がり、場合によっては心停止・院内急変につながります。

だからこそ、「呼吸仕事量が高そうだ」と感じたら、その時点で何かしらのサポート(酸素投与、NIV、気管挿管など)を考え始める必要があるわけです

  • 呼吸仕事量は数値で出ないため、身体所見から「しんどそうか」を読み取る
  • 呼吸補助筋の使用を観察することが重要
  • 呼吸筋疲労 → 呼吸破綻 → 心停止という経路を意識する
  • 呼吸仕事量が高いと感じたら、早めにサポートを検討

呼吸不全の定義:1型と2型

4:59~5:32

ここからは、呼吸不全のメカニズムを整理していきます。呼吸不全の定義は、PaO₂が60 mmHg以下になっている状態

そのうえで、PaCO₂が45 mmHgより高いか低いかで、

  • 1型呼吸不全
  • 2型呼吸不全

に分けられます。

1型・2型の整理

5:32~6:07

1型・2型って、国家試験でもごちゃつきがちですよね。ざっくり言うと、2型呼吸不全はCO₂が高い

そしてメカニズムで見ると、

  • 2型呼吸不全:肺胞低換気のみ
  • 1型呼吸不全:それ以外の3つのメカニズム(V/Qミスマッチ・シャント・拡散障害)

と整理できます。ここからは、一つ一つを掘り下げていきます。

  • 呼吸不全の定義:PaO₂ ≤ 60 mmHg
  • 2型呼吸不全:CO₂が高い(PaCO₂ > 45 mmHg)
  • 2型は肺胞低換気のみ、1型はそれ以外の3つ

1型呼吸不全:換気血流比(V/Q比)

6:07~7:09

まず、1型呼吸不全では肺胞レベルのガス交換に注目します。肺胞では、吸い込んだO₂と、血液中のCO₂が交換されています。ここで重要なのが、

  • 換気量(どれだけ空気が届いているか:V)
  • 血流量(どれだけ血液が来ているか:Q)

つまり換気血流比(V/Q比)です。

肺胞の壁が肥厚していたり、壊れていたりすると、このガス交換の効率が落ちてしまいます。1型呼吸不全では、まず「VとQのバランスが崩れていないか」を考えるのがポイントです。

メカニズム①:V/Qミスマッチ

7:09~7:42

一つ目のメカニズムがV/Qミスマッチです。

  • 心原性肺水腫
  • 肺胞出血

などで肺胞内に水や浸出液がたまると、その部分は換気量(V)が減るので、ガス交換がしづらくなります。

逆に、空気はしっかり入っているのに、肺塞栓のように肺胞周囲の毛細血管まで血流が届かないと、今度は血流(Q)がないのでガス交換ができません。

どちらも「VとQのバランスが崩れている」という意味で、V/Qミスマッチによる呼吸不全になります。

  • V/Q比 = 換気量と血流量のバランス
  • 肺水腫・肺胞出血 → Vが減る
  • 肺塞栓 → Qが減る
  • どちらもV/Qミスマッチ

メカニズム②:シャント

7:42~8:49

このうち、換気量が極端に落ちた状態が進行するとシャントというメカニズムになります。

  • 重症の心原性肺水腫
  • ARDS
  • 無気肺(気道閉塞で空気が入らない)

などでは、その部位には全く換気が入らない。Vがほぼゼロの状態ですね。

シャントの特徴は、酸素投与だけでは改善が乏しいこと。これが、単なる低V/Qとの大きな違いです。

シャントでは酸素をかけても頭打ちになる

8:49~9:50

イメージとしては、

  • 換気が保たれている肺胞では、PaO₂は80〜90 mmHg
  • 虚脱した肺胞を素通りしてきた静脈血では、PaO₂は60 mmHg以下

この2つが混ざるので、どれだけ高流量で酸素をかけても、「素通り組」が一定数いる限り、酸素化が頭打ちになるわけです。

だから、シャントでは「酸素を盛る」だけではなく、虚脱している肺胞をどう増やすか・開かせるかの介入が必要になります。

  • シャント:Vがほぼゼロの状態(重症肺水腫、ARDS、無気肺など)
  • 酸素投与だけでは改善が乏しい
  • 虚脱した肺胞を開かせる介入が必要

ベッドサイドでできる介入:体位変換

9:50~11:18

ベッドサイドで簡単にできる介入として、体位変換があります。

例えば、肺炎が左肺だけ強い場合、患側(悪い側)を上、健側(良い側)を下にすると、

  • 血流は重力で下側(健側)に集まる
  • 上側(患側)はもともと換気が悪い

結果として、換気がよく入る側に、より多くの血流を流すことができ、V/Q比のバランスが改善して、ガス交換の効率が上がります。

実際、右無気肺の患者さんで体位変換しただけで、サチュレーションがグッと改善することもあります。「呼吸の異常時に体位変換が効くことがある」というのは、ぜひ頭に置いておいてください

  • 体位変換で酸素化が改善することがある
  • 患側を上、健側を下にする
  • 換気が良い側に血流を集めてV/Q比を改善
  • 右無気肺で体位変換だけでSpO₂改善した例もある

メカニズム③:拡散障害

11:18~12:14

1型呼吸不全のもう一つのメカニズムが拡散障害です。細菌性肺炎や間質性肺炎では、肺胞隔壁が肥厚したり損傷したりします。そうなると、特にO₂の拡散効率が落ちて低酸素になります。

一方で、CO₂は拡散しやすいので、意外とPaCO₂は保たれる(=CO₂は「はける」)ことが多い、という特徴も覚えておいてください。

  • 拡散障害:肺胞隔壁の肥厚・損傷(細菌性肺炎、間質性肺炎など)
  • O₂の拡散効率が落ちて低酸素になる
  • CO₂は拡散しやすいため、PaCO₂は保たれることが多い

メカニズム④:肺胞低換気(2型呼吸不全)

12:14~13:04

最後に2型呼吸不全、キーワードは肺胞低換気です。ここでは、肺そのものだけでなく、

  • 呼吸筋力の低下
  • 胸郭の問題(変形・拘束など)
  • 気道抵抗の増加
  • 中枢神経からの呼吸指令の障害

といった肺外の要因にも注目する必要があります。

肺がきれいでも、呼吸筋が動かなければ換気はできません。その結果、CO₂がたまり、2型呼吸不全になります。こういうときは、人工呼吸器やマスク換気で「呼吸そのものを手伝う」ことがポイントになります。

1型呼吸不全でも、先ほどの呼吸筋疲労が進行すると、最終的には肺胞低換気=2型呼吸不全を合併することもあります。

  • 2型呼吸不全のメカニズム:肺胞低換気
  • 肺外の要因に注目(呼吸筋力低下、胸郭の問題、気道抵抗増加、中枢性の呼吸指令障害)
  • 人工呼吸器やマスク換気で「呼吸を手伝う」
  • 1型呼吸不全でも呼吸筋疲労が進行すると2型を合併する

一番大事なのは呼吸仕事量

13:04~13:58

なので、メカニズムは4つ説明しましたが、1型と2型が混ざっているケースも多いということは、覚えておいてください。

ここで一番大事なのは、やっぱり呼吸仕事量です。サチュレーションやPaCO₂に目が行きがちですが、ベッドサイドで必ず見てほしいのは、

  • 呼吸補助筋を使っているか
  • あえぎ呼吸になっていないか

といった、「どれだけ頑張って呼吸しているか」です。

  • 1型と2型が混在するケースも多い
  • サチュレーションやPaCO₂だけでなく、呼吸仕事量を必ず評価
  • 呼吸補助筋の使用、あえぎ呼吸の有無を観察

まとめ

13:58~終了

今日のセミナーでは、院内急変のABCDアプローチの中でも、B=呼吸の異常をどう評価するかについて解説しました。

重要なポイントを振り返りましょう。

  1. 呼吸の評価は「見て・聞いて・感じて」、そして酸素化・換気・呼吸仕事量の3つの軸で整理する
  2. 呼吸仕事量は数値で出ないため、呼吸補助筋の使用やあえぎ呼吸を観察することが重要
  3. 呼吸不全のメカニズムは4つ:V/Qミスマッチ・シャント・拡散障害・肺胞低換気
  4. シャントでは酸素投与だけでは改善が乏しく、虚脱した肺胞を開かせる介入が必要
  5. 体位変換で酸素化が改善することがある(患側を上、健側を下)
  6. 2型呼吸不全では呼吸そのものを手伝う(人工呼吸器、マスク換気)

このあたりを、月末のセミナーでさらに深掘りしていきますので、ぜひ一緒に整理していきましょう。

院内急変の初期対応で、呼吸の異常を見抜き、適切に介入できるよう、これらのポイントを日々の診療に活かしていきましょう!


動画で難しかったところ、質問はオープンチャットへ!

今回のセミナー内容で難しかった部分や、もっと詳しく知りたいことはありませんでしたか?

わからないことがあれば、お気軽にオープンチャットで質問してください!

呼吸不全のメカニズムや、具体的な介入方法について、一緒に学んでいきましょう。


📼 アーカイブ配信もあるので安心!

「当日参加できない…」という方もご安心ください。

オンラインセミナーはアーカイブ配信を行いますので、後日ご都合の良い時間にゆっくりご視聴いただけます。

院内急変の初期対応、ABCDアプローチをしっかり身につけて、明日からの臨床に活かしていきましょう!